僕は頭からっぽのバカだから

たらこ

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3.さくら

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 パン屋さんにはパンを食べるテーブルがあったけど、お兄さんは、お兄さんの家でパンを食べようと言って、僕をお兄さんの家につれていってくれた。

 お兄さんの家はやっぱり僕の家のご近所にあった。
 僕の家から真っすぐ歩いて角を曲がってすぐのところにある二階建てのオンボロアパート。普通のアパートは道路の方に玄関のドアが向いているのに、そのアパートは一軒家と一軒家の間の狭い場所に無理矢理横向きでアパートを押し込んだみたいになっていて、道路のほうからはボロの階段と一番手前側の部屋の窓しか見えない。それぞれの階に部屋がいくつあるのかわからなくなっているアパートで、その一階の四番目の部屋、一番奥にある部屋がお兄さんの家だった。

 部屋の中は僕のうちより狭くて、玄関から入ると左側にトイレとお風呂、まっすぐ進むとすぐキッチン付きの部屋が一個あるだけのお部屋だった。
 お兄さんの部屋はテレビもなかった。ベッドが一個と小さいテーブルが一個、お兄さんのお腹までくらいの高さしかない冷蔵庫が一個と、床に服やタオルが散らかっているだけだった。

 お兄さんは部屋に入るとすぐに上だけ裸になってお水を飲んで、それからベッドに寝転がって携帯をいじり始めた。

「お兄さんは食べないの?」
「いらね。全部お前用に買ったから好きなだけ食えよ。余ったら持ち帰ってもいいし捨ててもいいぞ」

 お兄さんはずっと携帯を見ていて僕のほうは見なかった。僕はジャムパンを食べた。

 パン屋さんのジャムパンはスーパーのジャムパンとは全然違った。持っただけでぐにゃっとなっちゃいそうなくらい柔らかくて、大きなイチゴがそのまんまジャムの中に何個も入っていた。すごくおいしかった。
 ジャムパンはあっという間に食べ終わっちゃったから、次はお兄さんが買っていたソーセージのパンを食べた。ソーセージが見たことないくらい大きくてすごくおいしかった。

 ソーセージのパンを食べながら僕はお兄さんのことを考えた。
 どうしてお兄さんはパンを食べないんだろう。僕はジャムパンだけでよかったのに、かごにどんどんソーセージのパンやチーズのパンを入れてお金を払っていたのはお兄さんだった。

 うーんと考えているうちに僕は思い出した。
 そうだ。お兄さんは人を食べるんだった。

 僕は半分くらい食べていたソーセージのパンをあわててテーブルに置いた。
 お兄さんはパンを食べない。なのに僕にパンをいっぱい買って食べさせてくれた。それってつまり、パンを食べておなかいっぱいになった僕を食べようとしてるんじゃないのかな。

 どうしようどうしよう、と焦っていたら、お兄さんが携帯を置いてゴロン、と僕の方を向いた。

「どうした。食わねえのか?」
「……お、兄さん……が……」
「ンだよ? ごにょごにょ言ってねえではっきり言えよ」

 お兄さんはゴン、と壁を蹴った。僕はビクッとしちゃって、体が石になっちゃった。

「――つーかお前」

 お兄さんはぎゅーっと眉毛の間に皺を作って、嫌そうな顔をして起き上がった。

「どんだけ食い方汚ぇんだ? ふざけんなよ。床汚してねえだろうな?」

 お兄さんはティッシュの箱から何枚もティッシュを引っ張り出して、それで、僕の口の周りや鼻の先っちょを拭いてくれた。

「……?」
「ほら。シャツもズボンもひでぇぞ、マジで」

 お兄さんはティッシュで僕のシャツも拭いてくれた。それで気がついた。僕の服やズボンにはいっぱい赤いジャムがくっついていた。

 ティッシュで拭いても赤いしみは取れなくて、お兄さんははーっとため息をついて床に落ちていたタオルを濡らしにいった。その隙に僕がズボンを脱いでついていたジャムを舐めていると、戻ってきたお兄さんはますます嫌そうな顔をした。

「汚ぇことしてんじゃねえよ。ほら貸せ」

 ズボンをお兄さんに渡すと、お兄さんはズボンをごしごしと拭いてくれた。僕はぼーっとそれを眺めていた。

「お前さ、九歳だっけ? なんで学校行ってねえんだ? 誰かにいじめられたか?」

 僕は首を横に振った。そのときだけちらっと僕を見て、お兄さんはまたズボンの別のところのジャムの跡をふいてくれた。

「じゃあ母ちゃんかあの若い男がいかせてくれねえのか?」

 僕はまた首を横に振った。お兄さんはタオルをテーブルに置いて、僕にズボンを投げてきた。

「履けよ」

 頷いて、ズボンを履いた。お兄さんは僕がズボンを履くのをじーっと見ていた。
 僕がズボンを履き終わって座ると、お兄さんはまた聞いてきた。

「アイツお前の母親の彼氏だろ? 昨日、あの後アイツとどこで何してた?」

 昨日――ユウくんとお出かけしようとしていた僕にお兄さんが話しかけて来たときのことだとわかった。

「遊園地」僕は答えた。お兄さんはすぐに怖い顔をして、「どこの?」と聞いてきた。

 お兄さんの目は怖い。ユウくんもお母さんも僕のことなんて全然見ないのに、お兄さんは怖い目で、まっすぐジーっと僕の目を見てくる。僕はその目が怖くて、服のしたのところをぎゅうぎゅう引っ張っている自分の手を見て答えた。

「……遠くの?」
「遠くってどこだ? 車で何時間かかった?」
「に、二時間……?」
「そしたら遊園地につくの夕方だろ。何乗った?」
「……お馬さんがまわるやつ、と、あと……大きい丸いのがまわるの。高いとこ……」
「わざわざ遊園地に行ったのにそれだけか? お前嘘ついてんだろ?」

 嘘――そう言われて、僕は思わず大きな声を出してしまった。

「嘘じゃない!」

 お兄さんはびっくりした顔をした。でもすぐにまた怖い目をした。

「へえ。嘘じゃなくて、本気で昼過ぎから二時間かけて遊園地行って、そんで観覧車とメリーゴーランドだけ乗って帰ってきたのか? 母親の彼氏と二人で?」

 うん、と僕は頷いた。

 ほんとうだ。嘘じゃない。
 ユウくんは優しいから、僕がいい子にしていると、いつも僕を遊園地に連れて行ってくれる。ユウくんと遊園地にいくといつも楽しい。

 それにユウくんはお母さんの彼氏じゃなくて、今度本当に僕のお父さんになるんだ。まだ小さいけど今お母さんのお腹には僕の弟か妹がいて、その弟か妹が生まれたらユウくんはお母さんと結婚して、僕のお父さんになってくれる。お母さんがそう言ってた。

 頭の中ではたくさんお兄さんへの説明が出てきたけど、口で言おうとするとなぜかうまく言えそうにない。
 いっぱいいっぱい言葉で言おうとして、だけど僕が言えたのは、ほんのちょっとだけだった。

「ユウくん……は……お父さんになるの……。こんど……」
「へえ」

 お兄さんの声は少し冷たかった。

「ま、そっちはどうでもいいわ。お前がどこのおっさん相手に体売ってようと俺には関係ねえし。――それよりさ、お前、前に俺と神社で会ったときのこと誰かに言ったか?」
「言ってない」

 これは本当だ。だけどお兄さんは信じてくれなかった。

「どうだかな。お前ガキのくせに嘘つきだし」
「……嘘じゃない」

 だって、もし僕が誰かにお兄さんのことを話したら、お兄さんはその誰かのこともクチフウジするはずだ。僕が話すとしたらお母さんかユウくんしかいないから、僕はお母さんやユウくんをがお兄さんに酷いことをされないように黙っていなくちゃいけないと思ったんだ。

 僕は服の下のほうをぎゅっと掴んで引っ張った。お兄さんは怖いけど、これだけはわかってもらわなくちゃいけない。

「……お母さんもユウくんも知らないよ。ほんとだよ」

 僕が言ったら、お兄さんの口元がちょっとだけニヤッと笑ったように見えた。

「お前どう思った? 俺のこと神社で見たとき」
「どう……?」
「俺が女を食ってると思ったろ? ションベンちびりそうな顔してたもんな」

 食べてたんじゃなかったの?
 僕は首を傾げる。お兄さんは意地悪な顔で笑って、長い髪を結んでいたゴムを引っ張ってほどいてから言った。

「俺さ、実は悪い奴らと戦う正義のヒーローなんだよ。誰にも内緒だけどな」
「ヒーロー……?」

 知ってる。テレビでいっぱい見ている。
 だけどテレビでやってるヒーローの話は全部作りもので、本当はヒーローなんていない。それに、あのときお兄さんが女の人を食べていたのは間違いない。あのときのくちゃくちゃ言う音も、あの変なにおいだって、絶対に本当だった。僕は見たんだ。

「……ヒーローは、敵を食べないよ?」
「それはテレビに出てくるヒーローだろ。俺は食うんだよ。敵を食って強くなれんの」
「敵は人じゃないの?」
「ああ。だから食ってんだろ」 
「じゃあ女の人はお兄さんが倒した敵なの?」
「ああ。人間のふりした妖怪ケッコンサギオンナだ」 

 妖怪……確かに悪そうだけど、本当なのかな? なんだかお兄さんのほうが悪者っぽく見えるけど。

 でも確かに、人は人を食べない。食べたらおまわりさんに捕まっちゃうし、お兄さんみたいに焼かないでお肉を食べたっておいしくないし、絶対お腹が痛くなっちゃう。……ってことは、お兄さんは本当にヒーローなのかな?
 僕はだんだんお兄さんの言うことが本当な気がしてきた。

 ――ううん。気がしただけじゃない。お兄さんは本当のヒーローなんだ!

「カッコいい……!!」
「だろ? でも敵に命を狙われてっから、俺の正体は誰にも話すなよ」
「秘密? お兄さんと僕だけ?」
「――まあそうだな。俺とお前だけみたいなもんだ」 

 お兄さんと僕だけの秘密……なんだかすごく嬉しくて、「うわぁ」と声が出ちゃった。
 嬉しい。すごくドキドキする。僕はえへへと笑っちゃって、あわてて口を押さえた。
 怒られるかな、と思ってお兄さんを見たら、やっぱりお兄さんは眉毛をギュッとしてすごく怖い顔で僕を見ていた。
 嬉しかった気持ちはあっというまにしぼんてしまった。

「……ごめんなさい」
「俺はヒーローだからさ……」

 突然お兄さんが言った。お兄さんは痛くしちゃったのか首の後ろを押さえて、なんだか言いづらそうな顔をしていた。

「お前に悪いことするヤツ全員……消してやってもいいぞ」
「悪いこと?」
「……わかんだろ」

 わからない。ただ少し怖くなって、僕は服の下のほうを引っ張りながら首を横に振った。

「いるだろ。お前に悪いことしてるヤツら。そいつら消してやるっつってんだよ」
「……しらない」
「知らないじゃねえだろ!」

 お兄さんはだんだんイライラしてきたみたいだ。言い方が強くなって、僕はますます怖くなった。
 首を横に振りながら、こっそりちょっとだけ後ろにさがった。

「じゃあ誰でもいい! お前が消してほしいヤツ一人消してやるよ! これならいいだろ!? お前にやりたくないことさせてくるやつとか、それを見て見ぬふりしてるやつとかさ! そいつら消しちまえば、もう嫌なことしなくていいんだぞ!?」
「…………」

 僕は首をいっぱい横に振った。ぶんぶん振りすぎて頭が痛くなるくらい振った。だけどお兄さんはもっとイライラして、ガンっとテーブルを蹴っ飛ばして勢いよく立ち上がった。

「わっ……!!」
「嘘ついてんじゃねえ! あの男だろ!? 何がユウくんだ! バカな女風俗で働かせて、そのガキにまで体売らせやがって! 胸糞悪ぃ!! 俺がぶっ殺してやる!!」
「……ち、がう……。ちがう、の……」
「なにが違うってんだよ!? あぁ!?」

 お兄さんの唾が僕のほうに飛んできた。
 お兄さんの顔は真っ赤だった。真っ赤で、真っ赤な目を大きくあけて、これまで見たことがないくらい怖い顔をしていた。
 すごく怖かった。だけど、お兄さんがユウくんにすごく怒っていることは分かった。このままじゃユウくんが殺されちゃうかもしれない。だから僕は、声が震えちゃうけど言った。

「ユウくん、は……やさしいよ。いやなこと、なんもしないよ」
「へえ。そうかよ」

 爆発していたみたいだったお兄さんの声が、急に静かになった。
 僕を見下ろしながら、お兄さんが一歩近づいてくる。僕は座ったまま一歩後ろに下がって、またお兄さんが一歩近づいてきた。

「脱げよ」

 お兄さんは僕の脚をまたぐようにしてしゃがんだ。
 近づいてきて、すぐ目の前にあるお兄さんの目が真っ赤に血走っていて、お兄さんの声がぞっとするほど怖くて、僕は体がこおりついてしまったみたいになった。

「嫌じゃねえんだもんな? 裸になんの。いつもやってるみてえに全部脱いで四つん這いになってケツ穴見せてみろよ」

 やだなんて言えるはずがなかった。
 手が震える。
 ブルブルしながら、僕は上に着ていた服を脱いだ。中に着ていたシャツも脱いで、ズボンとパンツも脱いだ。靴下だけは履いたままだった。

「…………」
「四つん這いになるんだろ? さっさとしろよ」

 なんでそんなことをするんだろう。――お兄さんもビデオを撮るのかな?
 僕はのろのろとお兄さんに背中をむけて、床に手と膝から下をついて犬のポーズをした。お兄さんにおしりを向けたけど、お兄さんは携帯もビデオも出さなかった。

「ガキのくせに……気持ち悪ぃ」

 ハッと笑って、お兄さんは近くに転がっていたペンが入った缶から細いマジックを取った。それで、僕のお尻にそのマジックをぐいっと入れてきた。

「やっ……!」
「嫌じゃねえんだろ? これよりもっと太ぇやついつも入れてんもんなあ?」

 お兄さんは僕のなかでマジックをぐりぐりと動かした。
 お尻の中で何かが動いて、ぐいぐいと中から押される感覚……気持ち悪くて、ほんとうはすごく嫌いだ。でも嫌がったらお兄さんにまた怒られそうだったら、僕はぎゅっと口を閉じて我慢した。

「んっ……!」
「あーそうだ。いいこと思いついた」

 僕のお尻の中をぐりぐりしながら言って、お兄さんは僕の腕を掴んで引っ張った。
 僕は立たせられた。お尻にはまだマジックが入っている。

「どうせ嫌がんねえんだし、俺が使ってもいいよな」
「…………」
「ま、お前が誰を消したいか言えたらやめてやってもいいけど」

 そう言ってお兄さんは僕のお尻からマジックを抜くと、僕をベッドのほうに投げた。僕はベッドの上に転がって、お兄さんがズボンとパンツを脱ぎながら僕を跨ぐようにして膝で立った。

 怖かった。僕だけが裸になるんじゃなくて、お兄さんも裸になったのが、なんだかすごく怖かった。

 それに、お兄さんの裸は変だった。おちんちんのところに変なのがついていて、その先っぽからネバネバした水がぬるーっと出て僕のところまでたれてきている。
 お兄さんのおちんちんに付いている変なのは、おちんちんよりもずっと大きくて、先がぼこっとした形でなんだか気持ち悪かった。しかもおちんちんと違って上のほうを向いている。
 お兄さんはどうしておちんちんの上にあんなのを付けているんだろう? それに、さっきまでどうやってパンツの中に入れていたんだろう。

「さっそくチンコガン見かよ。マジで好きなのか、お前?」

 ちん……こ?
 あれ? お兄さんについているの、変なだけどおちんちんなのかな?

「なにきょとんとしてんだよ? ほら、ケツ穴出せ」

 お兄さんは僕の脚のうらがわを掴んで膝をまげるみたいな恰好をさせた。お尻の穴もたまたまも見られる恰好なのは同じなのに、犬の恰好をするよりも恥ずかしい気がした。それと、なんだかすごく怖い。

 お兄さんは変な形のおちんちんを僕のお尻の穴からたまたまのところにぴったりと置くと、怖い顔で僕を見下ろしながら言った。

「マジでヤるぞ。いいのか?」

 わからない。お兄さんは何をするの?
 どう答えたらいいのかわからなくてお兄さんを見上げていたら、お兄さんはチッと口から音を出した。

「――お前が抵抗しねえからだぞ」

 お兄さんはぐいっと僕の脚を開かせた。そして、ネバネバしたおちんちんの先っぽで僕のお尻の穴のところを押してきた。

 ぐっとなって、急に、ぎゅうっとお尻の穴が広がった気がした。
 ぐぐぐっと、お尻のなかに熱くて硬いものが入ってくる。

「わっ……あ……!」

 びっくりして、僕は思わず脚をパタパタさせてしまった。だけどすぐにお兄さんが僕の脚を掴んでおさえつけて、その熱くて硬いのをもっともっと僕の中に入れようとしてくる。

 ……もちろん、その熱くて硬いのはお兄さんのおちんちんだ。僕にもわかっている。

 お兄さんのおちんちんはおちんちんと思えないくらいに硬くて、さっきお尻に入れられていたマジックよりずっとずっと大きい。ユウくんとユウくんのお友達が僕のお尻に入れる変なボコボコがついた棒よりもっともっと大きくて、お尻の中が引っ張られ過ぎてミチミチピリピリと裂けちゃいそうになった。

「いっ……たいっ……! おしり、いたい、よ……!」

 お兄さんに言ったけど、お兄さんは僕のお尻におちんちんを入れるのをやめてくれなかった。

「普段どんな粗チン相手にしてんだよ。狭すぎんだろ、クソがっ!」

 お兄さんは痛いくらいに僕の体をベッドに押し付けて、僕の中に無理矢理おちんちんをねじこんでくる。

「んうっ……、う……!」

 またお兄さんに怒られるのが怖くて、僕は痛いと叫んじゃいそうなのを一生懸命我慢した。
 お兄さんのおちんちんは少しずつ僕の中に入ってきて、僕のお腹まで届いてそうなくらいになって、やっと僕のお尻とお兄さんの体がぴったりとくっついた。お兄さんも苦しそうにハーハーと息をしていた。

「……全っ然よくねえな。ガキだからってキツ過ぎんだろ。動くからもっとケツ穴緩めろ」

 お兄さんが何かを言ったけど、僕は痛くて苦しくて怖くて、お兄さんが何を言っているのかもわからなかった。

「んっ、くっ……ん……」

 声が出ないように唇をぎゅうっと噛む。
 突然、お兄さんがパンっと僕のほっぺたを手のひらで叩いてきた。

「んんっ……!」
「ケツ穴緩めろって言ってんのが聞こえねえのか? あ?」

 どうやるの? わかんない。
 なんでお兄さんは僕のお尻におちんちんを入れるの?

 痛い。怖い。怖い。苦しい。怖い。

 我慢していたのに、だんだん目に涙が出てきた。
 お兄さんはおちんちんと腰以外は僕から離して、僕を見下ろしてはあはあ言っていたけど、急に嫌そうな顔で目を細くすると、僕に顔や体を近づけてきた。

 また叩かれるかと思って、僕はとっさに目を閉じた。

「なあ、オウジ」

 さっき叩かれたほっぺに熱いのがくっついた。
 お兄さんの声は今まで聞いたことがないくらいに優しくて、びっくりした僕が目を開けると、すぐ目の前にお兄さんの顔があった。まだ僕のほっぺにくっついているのは、お兄さんの大きな手だった。

「――オウジって呼ぶのもなんかアレだからさ、サクラでもいいか? ほら、お前の名前、桜の花の『桜』に『次』って字書くし。……お前はわかんねえだろうけど」

 サクラ……お兄さんの、僕の名前?
 ユウくんはユウくんの『お手伝い』をさせるときに僕のことをヒロトとかヒロト君と呼ぶけど、それとはまた違う僕の名前?

 僕はうん、と言った。声が震えてちっちゃな声しかでなかったけど、お兄さんにはちゃんと聞こえたみたいだった。お兄さんは「じゃ、サクラ」と言って、ほっぺから僕のおでこに熱い手を動かした。

「ゆっくりと……息吸って吐け。じょうずにできてるからさ。ちょっとだけでいいから、体の力抜いてくれ」

 僕のおでこのところでお兄さんの手が動く。……撫でられているんだと気づいた瞬間――よくわからないんだけど、僕は全身がぶわっとなったような気がした。生まれてはじめての、変な感じだ。

「あ……、わ、うっ……」

 変な声が出た。
 心臓がドクンドクンとすごい音を出している。
 急に体が熱くなって、汗が出て……目の前が、涙でぐにゃぐにゃになった。

「大丈夫だ」

 お兄さんの声。
 近づいてきて、そして、僕はお兄さんの腕に抱きしめられていた。

「深呼吸だ、深呼吸。そんで体の力抜けよ」

 お兄さんの裸の胸に僕の顔がぎゅっとあたっている。僕の涙がぐちゃぐちゃついちゃうのに、お兄さんは僕をぎゅうっと抱きしめたままでいてくれた。おちんちんや手だけじゃなく、お兄さんは全身がすごくすごく熱くて、汗でじめじめしていた。

 ドクドク、ドクドク、耳を当てると、お兄さんの心臓もすごい音がしている。僕といっしょだ。おんなじ音がしている。 

 怖かったのが、少しだけなくなっていく。
 苦しいのは変わらない。お兄さんのおちんちんは僕のなかにいっぱいで、息をするのもすっごく苦しい。
 だけど僕がお兄さんの背中にそっとしがみついても、お兄さんは嫌がって叩いたりしなかった。こんなに苦しくてちょっと怖いのに、胸のところがぎゅうっとなった。

「――あー……そうだ。うまいぞ。そんな感じ」

 お兄さんは大きく息を吐いて、僕のお腹の奥までいそうだったおちんちんを少しだけ抜いて、また奥のほうにそうっと入れてきた。

「サクラ。よくなってきた。そのまま力抜いとけよ。あんまケツ締めんな」

 うん、と僕は頭の中だけで返事をした。
 お兄さんは僕のお腹の奥のほうで少しだけ抜いたり入れたりを繰り返した後、僕をぎゅっとする力をゆるめて、そっとおちんちんから上の体を離していった。

「あ……」

 僕はお兄さんに手を伸ばした。眉の間をぎゅっとして僕を見下ろすお兄さんの顔は、真っ赤だった。

「もう少し大きく動かすけど、別に怖いことしようとしてるわけじゃねえからな。今の感じで力抜いとけよ」

 お腹のおくからずずずっとおちんちんが抜けていく。
 今まで息も苦しいくらい広がっていたのに、きゅうっと奥のほうが萎んでいって、お尻の内側をすごく硬くて熱いおちんちんがズルズルこすれてく。
 変な感じがして、僕はぎゅっと目を閉じて両手で顔を隠した。

「うー……」
「痛いか?」

 うん、と僕は頷いた。お兄さんは「我慢しろ」と言って、おちんちんが全部抜けちゃう前にまた僕の奥のほうにおちんちんを深く入れてきた。それから、僕の脚を掴んでいっぱい開かせて、僕のお腹の下あたりを見下ろして「ははっ」と笑った。

「やべえな、コレ。こんなガキに発情する変態の気持ち、少しは分かってきたわ」

 お兄さんの大きな手が僕のお腹の下をぐっと押した。おちんちんがいっぱいで苦しかったのが、外からも押されたせいでぐっと苦しくなった。僕は我慢できなくて脚をぱたぱたと動かした。

「ああ、悪い悪い。待ってろ。すぐ終わらせてやるから」

 そう言うと、お兄さんはふうっと大きく息を吐いて僕の上に覆いかぶさってきた。またぎゅってしてもらえるのかと思ってドキドキしたけど、そうじゃなかった。お兄さんは腰だけを前と後ろに振るみたいにして、僕のお尻の中をおちんちんで擦ってきた。

「んっ……、あうっ……!!」

 さっきまでのゆっくり動いていたのと全然違う。ゴリゴリと硬いおちんちんが僕のお腹の奥のほうを押してくる。

 お兄さんのおちんちんの動きはどんどん早くなっていって、乱暴になっていく。

 僕の体をベッドに叩きつけるみたいに、お兄さんはおちんちんを僕の中でゴンゴン突いてくる。それに合わせてお兄さんの息もはっ、はっと荒くなっていって、僕は何がなんだかわからなくて怖くなった。

 お兄さんの背中にしがみつく。お兄さんの背中は汗でぐっしょりしていた。

「出すぞ、サクラ! お前のケツの中、ナマで精子ぶちまけるぞ!!」

 お兄さんは急に大きな声で僕に怒った。そして、お尻の中でお兄さんのおちんちんがビクビクビクっとなった。

 びっくりして、僕はお兄さんにぎゅーっと抱き着いた。お兄さんも片腕だけで僕を抱きしめてくれた。お兄さんと僕の体がぎゅーっとくっつく。
 お兄さんは、もうこれ以上入らないのに、もっともっとおちんちんをくっつけようとするみたいに腰を僕のお尻にぐうっと押し付けてきた。僕のお尻の中では、まだお兄さんのおちんちんがビクビクしていた。

 お尻の中がどんどんぐちゃぐちゃしていくような気がする。なんか変なのでいっぱいになっていく。

 お兄さんのおちんちんのビクビクが止まって、お兄さんは僕を抱きしめるのをやめた。僕から体を離して、それから、僕の中からおちんちんを引き抜いた。
 ズボッと変な音がした。

「ははっ……」

 疲れた声で笑って、僕を見下ろして、お兄さんは汗で濡れた長い髪をかき上げた。

「おい。わかるか、サクラ。お前ケツの中にたっぷり精子出されたんだぞ? ガキのくせに最低だな」
「…………」
「中出しされたケツ穴見せてみろよ」

 お兄さんは僕の体を転がした。それで僕の腰を掴んで立たせようとするから、僕はおしりをあげて、お兄さんに向かっておしりを突き出すような恰好をした。それなのに、お兄さんは僕のお尻をぺしっと叩いた。

「ケツ穴見せろって言ったろ」

 もう見せているのに。
 僕が顔だけ振り返ってお兄さんを見ると、お兄さんはまた僕のおしりをぺしっと叩いた。

「広げて見せろって言ってんだよ。少しは頭使えよ」

 お尻のあなを広げるの? なんでそんなことするの?
 わかんないけど、言うことを聞かないとお兄さんにも嫌われちゃうかもしれないから、僕は両手でお尻を掴んで引っ張って、お尻のあなが見えるようにした。お兄さんが鼻から深く息を吐く音が聞こえた。

「……よくできたな。今度から俺がお前のケツにチンコ入れた後はそうやって穴広げて見せろよ。んで、『中出ししてくれてありがとうございます』って言えよ。自分から」
「なか……だし?」
「ああ。『中出ししてくれてありがとうございます』だ。言ってみろ」
「なかだし……ありが、と……ござい、ます」
「…………」

 ベッドが揺れて、お兄さんが僕のお尻の後ろで膝で立っていた。お兄さんはおちんちんを手に持っていて、指でごしごしとおちんちんを撫でていた。

「……おにい、さん?」
「悪い。一回じゃ全然おさまんねーわ」
「……うん」

 僕が広げていた場所に、お兄さんはまたおちんちんの先っぽをあててきた。さっきよりも簡単に、お兄さんのおちんちんは僕の中に全部飲み込まれていった。
 後ろから僕のお尻を掴んで、お兄さんは夢中になって僕のお尻のなかにおちんちんをこすり付けていた。

 苦しかった。
 やっぱり痛かったし、気持ち悪かった。
 だけどもうあんまり怖くなかった。

 お兄さんは何度も僕のなかにおちんちんを入れて、何度も僕のなかでおちんちんをビクビクさせた。気づいたら僕のお尻からは白いどろどろしたのが出るようになっていて、お兄さんがおちんちんを抜いたり、僕のなかにおちんちんを押し込んでくるたびにお尻から溢れてくるようになっていた。

 ――たぶんこの白いどろどろは、お兄さんのおちんちんから出ているんだと思う。そしてお兄さんは、僕のお尻の中にあの白いのを出すために、一生懸命僕のお尻におちんちんを入れているんだと思う。

 そのことに僕が気づき始めたころ、お兄さんはようやく僕のお尻におちんちんを入れるのをやめてくれた。ぐったりと倒れている僕の横に寝転がり、お兄さんは僕の頭を撫でてくれた。

「お前さあ、今日から俺のオナホな」
「おなほ……? さくらじゃないの?」
「サクラは名前だろ。オナホは――まあ役職みたいなもんかな。お前は俺のオナホな。意外とよかったし」
「……うん」

 よくわかんないけど、僕はお兄さんの『おなほ』らしい。

 お兄さんといるときの僕は『オウジ』でも『ヒロト』でもない。サクラだ。
 お兄さんの僕はサクラで、お兄さんのおなほ。お兄さんといるときだけの僕だ。

 お兄さんはサクラの頭をずっと撫でていてくれる。
 大きくて熱い手。
 ちょっと硬くて強そうな手。
 ヒーローの手。

 なんだか体が急に軽くなった気がして、ふわふわと空に飛んでいけちゃいそうな気がした。
 お尻にはまだなにか入ってるみたいな感じがするし、ヒリヒリして痛い。だけど僕は我慢できずにベッドの上で脚をパタパタした。

「……どうした? 急に」
「…………」

 僕はそっとお兄さんの顔を見て、そっとお兄さんの胸に触ってみた。僕の胸はつるんとしているけど、同じ男の子なのに、お兄さんの胸はぶくっと大きい。でもお母さんみたいな丸い形じゃなくて、平らにぷくっとなってるし、すごく硬い。
 僕がお兄さんの胸に触っていても、お兄さんは邪魔だなんて言わなかった。それどころか、あいかわらず怖い顔だけど、「なんだよ」と笑ってくれた。

 僕はまたそーっとお兄さんに近づいて、お兄さんにぴっとりくっついてみた。だけどやっぱりお兄さんは嫌がらなくて、思い切って抱き着いてみても、やっぱり嫌がらないで、「面倒くせぇ」と言いながら、お兄さんも息ができないくらい強く僕をぎゅーっとしてくれた。
 僕の世界は、お兄さんでいっぱいになった。

「んっ……」

 僕はお兄さんにぎゅーっとされたまま上を向いて、それで、お兄さんのあごにあるヒゲにおでこをくっつけた。
 おでこをヒゲにこすり付けるとじょりじょりして痛かった。でも楽しくてじょりじょりしていたら、お兄さんのほうからあごのおヒゲをじょりじょりとこすりつけてくれた。

 じょりじょりじょり……じょりじょりじょり……。

 僕は「んふふっ」と笑ってしまった。僕が笑うのも、お兄さんは怒ったりしなかった。
 しばらくすると、お兄さんは急にじょりじょりをやめてしまった。それで、僕のことを今まで一番強くぎゅーっとした。

「……お前、ユウくんともセックスしてんの?」
「せっくす?」
「……さっき俺としたろ。ユウくんのチンコもケツに入れさせてんの?」

 さっきまであんなに優しかったのに、お兄さんの声は急に怒ってるみたいになっていた。
 僕が「んーん」と言っても、お兄さんは「嘘つけ」と怒った声を出した。

「お前脳ミソも股もユルユルだし、アイツにもヤらせてんだろ。どうせ」
「ユウくんは僕のお尻におちんちんいれないよ。ユウくんのおちんちん、僕みたいなおちんちんだもん」
「あ? 短小包茎ってことか? ダッセぇ」
「えっとね……ユウくんは僕が歯磨きしてるときお風呂場でパンツ脱ぐけどね、ユウくんのおちんちんは僕と同じでぐにゃってしてるよ。先っぽもお兄さんみたいにぼこってしてないし。パンツに入るおちんちんだよ」
「…………」

 急にお兄さんは黙ってしまった。
 どうしたんだろう?
 僕は顔をあげてお兄さんを見た。お兄さんはなんだか焦っているみたいな顔をしていた。

「な、なあ。お前さ、今までケツの中に何入れたことある?」
「お兄さんのおちんちん?」
「他にもあんだろ。バイ――ボコボコした玩具みたいなやつとかさ、あとピンクのちっこい丸いやつとか入れてたろ? 俺も動画見たんだから隠しても無駄だぞ。入れてたよな?」

 動画を見たことがある――そう聞いた瞬間、胸のなかのあたたかい感じが一瞬にしてふきとんだ気がした。
 悲しくなって、僕は下を向いて、うんと頷いた。

「サクラ。他には何入れられた? 俺のチンコ以外で」
「……お兄さんがマジックいれた」
「俺じゃないやつにだよ。動画だと白い仮面つけたやつにいたずらされてたろ? そのほかに、動画じゃないところで体触られたりケツにチンコ入れられたりしたことないか?」
「……ない」

 僕は答えた。
 嘘じゃない。ほんとうだ。

「……お兄さんしかおちんちんから白いのでないでしょ? だからお兄さんしか僕のお尻におちんちん入れないよ。ほんとだよ」

 お兄さんは凍りついたみたいに固まってしまった。だけどしばらくして、むくっと起き上がってベッドからおりた。

 お兄さんはティッシュでおちんちんを拭いて服を着始めた。――そういえば、いつの間にかお兄さんのおちんちんの形が変わっていた。僕やユウくんのおちんちんとは違うけど、さっきみたいに上を向いてなくて、パンツに入りそうなぐにゃぐにゃなおちんちんになっている。

 お兄さんは服を全部着ると、部屋のはじっこにころがっていたテーブルを持ってきてベッドの横に置いた。それでテーブルの上に銀色の鍵を置いて、僕に言った。

「帰るときはこの鍵使って玄関の鍵かけて、使い終わったらポストに入れといてくれ。俺はちょっと出かけてくるから。夜までには自分の家に帰れ。いいな?」

 お兄さんは僕のほうを見ない。なんだか急に冷たくなった気がする。
 変だなと思いながら僕が「うん」と答えると、お兄さんは部屋を出て行ってしまった。一度も僕のほうをふりかえらなかった。

 一人になると急に寂しくなったけど、枕の匂いをかいだら、少しだけお兄さんの匂いがした。
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