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423番、吉田喜男⑥
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診療所を出たᒍは受刑者の家があるエリアに背を向け歩き出した。
商業施設のあるエリアを抜け、大きな公園の奥にあるゲートに社員証をかざし、中に入る。ゲートと言っても踏切や駐車場にあるようなバーが下りてくる式なので、潜ることは可能である。
セキュリティにやや不安要素があるが、受刑者はこんなところまではなかなか来ない。
ある意味安全と言えるのだろう。
迷い無く真っ直ぐ足を進め、一軒の家の前で歩みを止めた。鞄から鍵を取り出し、扉を開けて中に入ろうとしたところで、背後から思いっきり突き飛ばされた。つんのめってそのまま家の中に倒れ込むと同時に荒々しく扉を閉める音と、鍵が閉まる音がやけに大きく響き渡った。
振り向いた先に立っていたのは……吉田喜男、だった。
「油断し過ぎなんじゃない、ジュリー? 素人の尾行に気付かないなんて。こんな危機管理ができない恋人を一人で置いておくなんて、僕にはできないよ。ジュリーが安心して暮らせるように、僕が守ってあげるからね」
「あらあら。いけない子ね。規則を破ったら一緒にいられなくなる、って言ったでしょ?」
「そんなのバレなきゃいいじゃん。僕らの住居のエリアや商業施設には監視カメラがいっぱいあるけど、コッチ側にはないみたいだし。ジュリーが言わなきゃバレないよ」
「そうはいかないわ。私には仕事があるし、出勤しなかったらいずれバレるわよ」
「ふふ。かわいいね、ジュリー。声が震えてるよ? 怖い? それとも……どМって言ってたから、嬉しくて震えてるのかな?」
「やあね、そんなわけ……」
「大丈夫、優しくするから。ジュリーが僕のモノになってくれたら、ね。いーっぱいかわいがってあげるからね。あ、そうそう。変な気は起こさないのが身の為だよ? ココは受刑者の街じゃないんだから、家の中には刃物や縛るものもあるでしょ? 僕さ、サイコパス、ってやつなんだよね。人の痛みとかわからないんだ。手荒な真似はしたくないけど、僕のモノになってくれないならどうなるかわからないよ」
得意気に話す喜男から少しでも離れようと、後ずさるように部屋の中へと足を踏み入れる。
そんな様子を見ながら勝ち誇ったような笑みを浮かべ、追い詰めるかのように部屋の中に足を踏み入れた喜男は、部屋を見渡して口を開いた。
「へえ。男の独り暮らしにしてはキレイにしてるじゃん。今日から二人の愛の巣になるんだね。ふふ、楽しみだな」
「ねえ、忠告するわ。こんなことしてタダでは済まないわよ? 今ならまだ間に合うわ。早くお家に帰りなさいな」
「やだなあ。そう言われてはい、そうですか、って帰るとでも思った? 甘いなあ。やっぱりちょっと痛い目見ないとわからないかなあ?」
満面の笑みで部屋の隅に追い詰めた喜男は、怯えた表情で小刻みに震えるᒍの顔の方へと手を伸ばした。触れるか触れないか、のところで、ᒍは怯えていた表情をきれいサッパリ消し去り、にっこりと笑顔を向けた。
「あら、そう?」
異変に気づいた時には時すでに遅し。
伸ばした手は宙を切り、何が起きたかもわからないまま、喜男はその場に倒れ込んだ。
商業施設のあるエリアを抜け、大きな公園の奥にあるゲートに社員証をかざし、中に入る。ゲートと言っても踏切や駐車場にあるようなバーが下りてくる式なので、潜ることは可能である。
セキュリティにやや不安要素があるが、受刑者はこんなところまではなかなか来ない。
ある意味安全と言えるのだろう。
迷い無く真っ直ぐ足を進め、一軒の家の前で歩みを止めた。鞄から鍵を取り出し、扉を開けて中に入ろうとしたところで、背後から思いっきり突き飛ばされた。つんのめってそのまま家の中に倒れ込むと同時に荒々しく扉を閉める音と、鍵が閉まる音がやけに大きく響き渡った。
振り向いた先に立っていたのは……吉田喜男、だった。
「油断し過ぎなんじゃない、ジュリー? 素人の尾行に気付かないなんて。こんな危機管理ができない恋人を一人で置いておくなんて、僕にはできないよ。ジュリーが安心して暮らせるように、僕が守ってあげるからね」
「あらあら。いけない子ね。規則を破ったら一緒にいられなくなる、って言ったでしょ?」
「そんなのバレなきゃいいじゃん。僕らの住居のエリアや商業施設には監視カメラがいっぱいあるけど、コッチ側にはないみたいだし。ジュリーが言わなきゃバレないよ」
「そうはいかないわ。私には仕事があるし、出勤しなかったらいずれバレるわよ」
「ふふ。かわいいね、ジュリー。声が震えてるよ? 怖い? それとも……どМって言ってたから、嬉しくて震えてるのかな?」
「やあね、そんなわけ……」
「大丈夫、優しくするから。ジュリーが僕のモノになってくれたら、ね。いーっぱいかわいがってあげるからね。あ、そうそう。変な気は起こさないのが身の為だよ? ココは受刑者の街じゃないんだから、家の中には刃物や縛るものもあるでしょ? 僕さ、サイコパス、ってやつなんだよね。人の痛みとかわからないんだ。手荒な真似はしたくないけど、僕のモノになってくれないならどうなるかわからないよ」
得意気に話す喜男から少しでも離れようと、後ずさるように部屋の中へと足を踏み入れる。
そんな様子を見ながら勝ち誇ったような笑みを浮かべ、追い詰めるかのように部屋の中に足を踏み入れた喜男は、部屋を見渡して口を開いた。
「へえ。男の独り暮らしにしてはキレイにしてるじゃん。今日から二人の愛の巣になるんだね。ふふ、楽しみだな」
「ねえ、忠告するわ。こんなことしてタダでは済まないわよ? 今ならまだ間に合うわ。早くお家に帰りなさいな」
「やだなあ。そう言われてはい、そうですか、って帰るとでも思った? 甘いなあ。やっぱりちょっと痛い目見ないとわからないかなあ?」
満面の笑みで部屋の隅に追い詰めた喜男は、怯えた表情で小刻みに震えるᒍの顔の方へと手を伸ばした。触れるか触れないか、のところで、ᒍは怯えていた表情をきれいサッパリ消し去り、にっこりと笑顔を向けた。
「あら、そう?」
異変に気づいた時には時すでに遅し。
伸ばした手は宙を切り、何が起きたかもわからないまま、喜男はその場に倒れ込んだ。
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