卵が先か鶏が先か

但馬憂姫

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三章

持つべきものは

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俺は我に返ると自室へ戻り、拓海に電話をかけた。
若干パニクって支離滅裂な俺の説明を黙って根気よく聞いてくれた拓海は、俺が話し終えると俺に任せて、と一言いって電話を切った。
任せてと言われても、と思いながらも他にできることもなく。とりあえず荷物をまとめた。
黙々と作業をしてたら、家の電話が鳴った。どうやら親父が出たらしい。ふと時計を見ると1時間ほど経っていた。早いなあ、としみじみ思いながら作業していると、親父が血相を変えて部屋に飛び込んできた。何なんだ、一体?
怪訝そうに親父を見ると、親父は開口一番こう言った。

「諒お前っ!加賀グループ総帥の息子さんとどういう関係だ!!?」
「は?」

突然言われて何がなんだかわからなかったが。
そういえば拓海の苗字が加賀だったなあ…とぼんやり思い出した。

「ああ。加賀グループ云々はわかんないけど、たぶん部活の先輩」

それがどうした?と問いかける俺に、親父は興奮冷めやらぬまま、勢い良く喋り出した。


時間は数分前に遡る。


『トゥルルルル....』

電話のベルが数回鳴り、たまたま近くにいた親父が受話器を取る。

「はい、相模」
「そちら相模諒君のお宅ですかな?」
「そうですが、どちら様ですか?」
「加賀恭一郎と申す者だが、うちの息子が諒君には大変お世話になっていてね」

相手の名前を聞いた親父は、一瞬怪訝そうな顔をするも、その顔色は徐々に青く染まっていった。

「かっ、加賀総帥っ!!?」
「うむ。そんなことはどうでもいいんだが。息子が諒君ともう少し一緒にバスケがしたいと言うのだよ。恥ずかしながら年を取ってからの子供でね。あまり構ってやる事もできず、あれも頼みごとなんぞした事なかったんだが、初めて頼みごとをしてきてね。親馬鹿と思ってくれて構わないが、初めての息子からの頼みごと、親としては叶えてやりたいと思うのだよ。もちろん、衣食住はこちらで面倒見させていただく。息子が卒業するまで、諒君をお借りできないだろうか?」
「は!あ、あのっ、その…はい、喜んでっ!」

突然の事にパニックになっていた親父は、断ってはダメだという一心からとにかく頷くしかなかった。

「そうか、承諾してくれるか。いやあ、有り難い。息子さんの事は安心して任せてくれたまえ。アメリカ支社での活躍、期待しているぞ」
「はっ、有りがたき幸せっ!ご期待に添えるよう、しっかり勤務してまいりますっ!」

親父が言い終わるか終わらないかのうちに、通話が切られた。ツーツーという音がなる中、親父はしばらくの間受話器を持ったまま動けなかった。

そして。

親父は勢い良く部屋に飛び込んできた。

親父の勤める会社は、加賀グループの傘下で、総帥とは雲の上の存在だ。
その総帥直々に電話があったんだ、取り乱すのもわけないか。

「兎に角だな、お母さんと少し相談してみるから!」

鼻息荒く、親父は来た時と同じように荒々しく出て行った。

見計らったかのように、スマホがピコーン、と音を立てる。今流行りのSNSだ。

『どう?うまくいった?』
『拓海の仕業?』
『そ。大嫌いな父親で今まで弱味なんて見せたことなかったけどさ。背に腹は変えられないからねー。で、どうなった?』
『母さんと相談するって』
『そっか。なあ、今から会えない?』

俺は壁にかかっていた時計をチラリと見た。まだそんなに遅い時間じゃない。
俺は待ち合わせ場所を決めると上着を羽織り、財布をポケットに突っ込むと、途中で止まってしまった荷造りをそのまま放置し、部屋を後にした。
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