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三章
大切な人
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午後6時。
拓海と俺の最寄り駅からちょうど中間に位置する駅で待ち合わせた俺達は、駅前のファーストフード店に入った。休日ということもあってか、カップルの他に家族連れも目立つ。
俺達はあまり人が上がってこない最上階の隅っこに荷物を置いて、下へ降りた。
俺は一番安いセットをLLサイズで、拓海は期間限定のセットを通常サイズで注文し、席へ戻った。
「相変わらずよく食べるよな」
「え?そうかな?」
「帰ったら夕飯、ちゃんと食べるんだろう?」
「うん。コレおやつ」
言い切る俺に拓海は苦笑しながら、俺はコレが夕飯、と呟いた。
なんとなく黙々と食べていた俺達は、ひと心地ついたところでやっと口を開いた。
「拓海の親父さんって…」
「ん?お父さんから聞いてない?日用品から外食産業まで幅広いジャンルで、日本だけじゃなく海外にも手を広げている加賀グループのトップ。もう結構爺さんで、現役からは引退してるんだけどな。小さな小売店から一代で大きくした実業家だから、引退した後も影響力は計り知れない」
「いや、そうじゃなくてさ。俺てっきり写真立てに一緒に写ってた人がご両親だと思ってたからさ」
「あー、あれ?あれは兄夫婦。といっても異母兄弟で俺は愛人に産ませた子なんだけどね」
さらっととんでもない事を言う拓海に、俺は目を見張った。
「別に隠すことでもないんだけどさ」
そう言って浮かべる笑顔に翳りが見える。ふと見ると手が少し震えていた。思わず手を握る。
冷たい。
「諒…?」
「無理しなくていいから。またゆっくり、話し聞かせて?」
「うん…」
それじゃ、と席を立とうとする拓海の腕を、俺は掴んだ。
「諒…?」
驚気に目を見張る拓海を見て、俺はなんだか可笑しくなってきた。いつも余裕で勝てる気がしなかったんだけど。こんな拓海初めてで。きっとこんな拓海を知ってるの、俺だけなんだろうな、と思うと嬉しくなってくる。
もう、自分の気持ちに嘘つくのやめよう。
「せっかく会えたんだし、もう少し一緒にいたい」
「え....?」
「俺、拓海が好きだ。今日、転勤の話が来て、気づいた。家庭の事情はわからないし、拓海は複雑かもしれないけど。俺はこれからも一緒に居られることがなにより嬉しい。俺、頼りないかもだけどさ。拓海のことなら何でも受け入れるから。これからもよろしくお願いします」
ぽろ。
大きく見開かれた拓海の目から大粒の涙が一つ、零れ落ちた。
「え、ちょっ、拓海…!?」
泣けれるようなこと言ったか!?とパニクる俺に、拓海は今まで見せたことのないような溢れるような笑顔を向けてきた。
「ありがとう。嬉しい、凄く」
「いや、どういたしまして」
なんとく照れくさくなって。俺達は椅子に座り直すと、照れくささを振り切るように他愛無い会話をして、店を出た。
挨拶を交わし、別れる。
帰ったら荷造りの続きしなきゃな。
俺は改札に定期を通すと、ホームへと足を向けた。
拓海と俺の最寄り駅からちょうど中間に位置する駅で待ち合わせた俺達は、駅前のファーストフード店に入った。休日ということもあってか、カップルの他に家族連れも目立つ。
俺達はあまり人が上がってこない最上階の隅っこに荷物を置いて、下へ降りた。
俺は一番安いセットをLLサイズで、拓海は期間限定のセットを通常サイズで注文し、席へ戻った。
「相変わらずよく食べるよな」
「え?そうかな?」
「帰ったら夕飯、ちゃんと食べるんだろう?」
「うん。コレおやつ」
言い切る俺に拓海は苦笑しながら、俺はコレが夕飯、と呟いた。
なんとなく黙々と食べていた俺達は、ひと心地ついたところでやっと口を開いた。
「拓海の親父さんって…」
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「いや、そうじゃなくてさ。俺てっきり写真立てに一緒に写ってた人がご両親だと思ってたからさ」
「あー、あれ?あれは兄夫婦。といっても異母兄弟で俺は愛人に産ませた子なんだけどね」
さらっととんでもない事を言う拓海に、俺は目を見張った。
「別に隠すことでもないんだけどさ」
そう言って浮かべる笑顔に翳りが見える。ふと見ると手が少し震えていた。思わず手を握る。
冷たい。
「諒…?」
「無理しなくていいから。またゆっくり、話し聞かせて?」
「うん…」
それじゃ、と席を立とうとする拓海の腕を、俺は掴んだ。
「諒…?」
驚気に目を見張る拓海を見て、俺はなんだか可笑しくなってきた。いつも余裕で勝てる気がしなかったんだけど。こんな拓海初めてで。きっとこんな拓海を知ってるの、俺だけなんだろうな、と思うと嬉しくなってくる。
もう、自分の気持ちに嘘つくのやめよう。
「せっかく会えたんだし、もう少し一緒にいたい」
「え....?」
「俺、拓海が好きだ。今日、転勤の話が来て、気づいた。家庭の事情はわからないし、拓海は複雑かもしれないけど。俺はこれからも一緒に居られることがなにより嬉しい。俺、頼りないかもだけどさ。拓海のことなら何でも受け入れるから。これからもよろしくお願いします」
ぽろ。
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「え、ちょっ、拓海…!?」
泣けれるようなこと言ったか!?とパニクる俺に、拓海は今まで見せたことのないような溢れるような笑顔を向けてきた。
「ありがとう。嬉しい、凄く」
「いや、どういたしまして」
なんとく照れくさくなって。俺達は椅子に座り直すと、照れくささを振り切るように他愛無い会話をして、店を出た。
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