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四章
保健の先生
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「あかりちゃーん。お腹痛いんでベッド貸して下さーい!」
「コラ、先生と呼びなさい、先生と」
お腹が痛いなんて嘘だとまるわかりの元気な声で言いながら入ってくる生徒に苦笑しながら注意する。
「あら、お友達? 珍しいわね」
「うん、後輩。俺のせいでね、弁当食いはぐっちゃったの。成長期の男子が昼抜きじゃ不健康でしょ? 食べていい?」
「いいけど、ベッドは飲食禁止だからね。こっちで食べなさい」
言いながら、先生は保健室のドアノブにクローズの札をかける。これでしばらく誰も来ない。
「またなんかあったの?」
「んーいや俺が何かされたわけゃないんだけど、俺と仲良くしてるって理由でこいつ絡まれてたからさー」
「またあの子達?」
「そ。俺に手出しができないからね。おもしろくないところへ俺がかわいがってる後輩が現れたもんだから。諒も補欠とはいえ一入部早々レギュラー入りだし。色々おもしろくなかったんじゃないかな」
「あら、すごいじゃない」
「補欠だけどねー」
あまりそこを強調しないでいただきたい。
俺はちょっと不貞腐れながら、作ってもらったお弁当を広げる。
とにかく腹が減った。
拓海の料理はお世辞抜きに美味しい。早くも胃袋を掴まれてるな、俺。
「あ、そうだ。加賀くん、お茶買ってきてくれない? 茶葉切らしちゃってー」
「えー、今じゃなきゃだめ?」
「だ・め。相模くんだって喉乾いちゃうでしょ? 自分の分も買っていいから。あ、私はカフェラテね」
「もー、しょうがないなあ。諒は何がいい?」
「え? あー…じゃあえっと…お茶で」
「了解」
先生からお金を受け取り、保健室を出た拓海の足音が遠ざかっていくのを見計らって、先生がおもむろに口を開いた。
「最近保健室に来ないなあ、と思ってたら。そういうことだったのね」
「え? 何がですか?」
「いえいえ、こっちの話。加賀くんねね、去年までしょっちゅう、というかほぼ毎日保健室来てたのよ。部活内での嫌がらせとかもそうだけど、プライベートでも色々あったみたいで不眠症気味でね。いつもここのベットで寝てたわ。そこのね、奥のベットが加賀くん専用」
「え、そうなんですか!?」
「ええ。それが、最近顔色もいいし、保健室に来る事もほとんどなくなったし。どうしてかなあ、って不思議だったんだけど。君だったのね」
「え?」
「加賀くんが他人に興味持つなんて滅多にないから。いえ、違うわね。人だけじゃなくて、物にも執着を持たないから」
「そうなんですか?」
意外だった。
確かにこだわりとかはなさそうだけど、部屋を見る限り多趣味っぽかったし。
「あなたの前では先輩面して弱さを見せないかもだけど。本当は繊細で傷付きやすい人だから。何かあったら、守ってあげてね?」
言われるまでもない。
なんの取り柄もないし、力もないけど。
俺にできる事だったら、何でもするつもりだ。
俺が力強く頷くと、先生は安心したように微笑んだ。
タイミングを見計らったかのように、ガラガラ、と保健室の扉が開く。
「お待たせー。何? 二人してなんの話?」
「なーいしょっ♪」
「えー、なんだよー。ずるいー!!」
不貞腐れる拓海が可愛くて、思わず吹き出してしまった。
「えーなになにー!? 諒、今の笑うとこ? えーもー何話してたんだよー。教えなさい」
「嫌だ」
「んじゃ、今夜は晩飯抜きな」
「降参します」
「…早いわね」
苦笑する先生に、俺は拓海と顔を見合わせると、自然に笑みがこぼれた。
買ってきてもらったお茶を飲みながら、拓海お手製の美味しい弁当を食べながら、しばらく俺達は話に花を咲かせた。
「コラ、先生と呼びなさい、先生と」
お腹が痛いなんて嘘だとまるわかりの元気な声で言いながら入ってくる生徒に苦笑しながら注意する。
「あら、お友達? 珍しいわね」
「うん、後輩。俺のせいでね、弁当食いはぐっちゃったの。成長期の男子が昼抜きじゃ不健康でしょ? 食べていい?」
「いいけど、ベッドは飲食禁止だからね。こっちで食べなさい」
言いながら、先生は保健室のドアノブにクローズの札をかける。これでしばらく誰も来ない。
「またなんかあったの?」
「んーいや俺が何かされたわけゃないんだけど、俺と仲良くしてるって理由でこいつ絡まれてたからさー」
「またあの子達?」
「そ。俺に手出しができないからね。おもしろくないところへ俺がかわいがってる後輩が現れたもんだから。諒も補欠とはいえ一入部早々レギュラー入りだし。色々おもしろくなかったんじゃないかな」
「あら、すごいじゃない」
「補欠だけどねー」
あまりそこを強調しないでいただきたい。
俺はちょっと不貞腐れながら、作ってもらったお弁当を広げる。
とにかく腹が減った。
拓海の料理はお世辞抜きに美味しい。早くも胃袋を掴まれてるな、俺。
「あ、そうだ。加賀くん、お茶買ってきてくれない? 茶葉切らしちゃってー」
「えー、今じゃなきゃだめ?」
「だ・め。相模くんだって喉乾いちゃうでしょ? 自分の分も買っていいから。あ、私はカフェラテね」
「もー、しょうがないなあ。諒は何がいい?」
「え? あー…じゃあえっと…お茶で」
「了解」
先生からお金を受け取り、保健室を出た拓海の足音が遠ざかっていくのを見計らって、先生がおもむろに口を開いた。
「最近保健室に来ないなあ、と思ってたら。そういうことだったのね」
「え? 何がですか?」
「いえいえ、こっちの話。加賀くんねね、去年までしょっちゅう、というかほぼ毎日保健室来てたのよ。部活内での嫌がらせとかもそうだけど、プライベートでも色々あったみたいで不眠症気味でね。いつもここのベットで寝てたわ。そこのね、奥のベットが加賀くん専用」
「え、そうなんですか!?」
「ええ。それが、最近顔色もいいし、保健室に来る事もほとんどなくなったし。どうしてかなあ、って不思議だったんだけど。君だったのね」
「え?」
「加賀くんが他人に興味持つなんて滅多にないから。いえ、違うわね。人だけじゃなくて、物にも執着を持たないから」
「そうなんですか?」
意外だった。
確かにこだわりとかはなさそうだけど、部屋を見る限り多趣味っぽかったし。
「あなたの前では先輩面して弱さを見せないかもだけど。本当は繊細で傷付きやすい人だから。何かあったら、守ってあげてね?」
言われるまでもない。
なんの取り柄もないし、力もないけど。
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タイミングを見計らったかのように、ガラガラ、と保健室の扉が開く。
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「嫌だ」
「んじゃ、今夜は晩飯抜きな」
「降参します」
「…早いわね」
苦笑する先生に、俺は拓海と顔を見合わせると、自然に笑みがこぼれた。
買ってきてもらったお茶を飲みながら、拓海お手製の美味しい弁当を食べながら、しばらく俺達は話に花を咲かせた。
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