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第1章
第2話 気付かない見合い相手
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──もう朝だ。
レイは疲れ切った身体を起こし、朝陽が降り注ぐ窓を見上げた。
昨日の卒業パーティーではあれから友人達が何人もテラスにやって来て、馬鹿騒ぎに盛り上がった。そして夜も更けてから実家に帰ると開口一番、成長した姉に言われたのだ。
「明日の朝、お父様達が起きる前に私の部屋に来なさい」
拒否権など存在しない命令だ。レイが何かを言う前に姉はもう寝るからとメイド達を従えて自室に帰ってしまった。
小さい頃はこれが常だった。嗚呼、またこの生活が暫く続くのか。レイは頭を抱えて一人狭い自室に戻り、誰の手も借りずに風呂に入り着替えも済ませ、一人きりで眠った。
嗚呼、行きたくない。けれど行かなければ何をされるか。レイは急いで身支度を整えると物音ひとつ立てずに部屋を出て、姉の部屋へと向かった。
姉の部屋はみっつあるが、レイが入室を許されているのは衣装室だけだ。だからとノックをして衣装室に顔を出すと、既に姉とメイド達が待ち構えていた。
「遅い」
「す、すみません」
「レイ、貴方何年経ってもちんちくりんなままね。丁度いいわ」
暴言にしか聞こえないがそれもいつものことだ。身長もあまり伸びずひょろひょろしているのは事実だし、何も言い返せない。言い返すと百以上の言葉で返ってくるから、言い返したくないという方が正しいけれど。
一体何なんだと思っていると、姉のメイド達がレイを取り囲む。否応なしに服を剥かれ始め、レイは思わず悲鳴を上げた。
「ちょっと、何ですか!?」
「静かに。お父様達が起きるわ」
「いや、ちょっと先に説明、待って下着脱げる!」
レイは必死に下着だけは死守しようと抵抗しながら姉に説明をしてほしいと視線で懇願した。
その必死な様子に、仕方がないと姉は深く溜息を吐く。
「今日のお見合い、絶対に行きたくないのよ。私にはもう相手がいるのに、あちらの前当主にあたる方が無理矢理に推し進めたらしくて」
「も、申し込みの時に断ればよかったんじゃ」
「それが、高位貴族がお相手で。手紙で断るのも駄目でしょう? でも私は会ったらきっと選ばれてしまうから、貴方に任せればいいんじゃないかと思って」
「はぁ?」
「レイ、貴方女装してお見合いしてきて頂戴。聡明でない返事を適当にしておけば、あちらから確実に断られるでしょう。それが一番良い案だわ」
いや、何処をどう考えればそれが良いと思えるのか理解ができない。
レイはメイド達によってコルセットを装着され腹が潰れる程にきつく締められ、悲鳴を上げながらその意味がわからない計画に頭を抱える。
ただ会いに行って結婚する相手がいると言えばいいのに、何故弟を女装させてまで行かせようとするんだ。
そこでふと気が付いた。姉の格好が既に出かける用意を済ませたものであることに。
レイの視線に、姉はふふと得意げに微笑む。
「本当は今日からベルナンド様と旅行だったの。お父様にはキャンセルしますと言っておいたのだけれど、やっぱり行きたくて。貴方が帰って来てくれて本当に良かった。帰ってくるまでよろしくね」
この暴君、自分の旅行のためだけに弟を女装させるのか。
なんてこと。なんて暴君。なんて横暴。許してなるものか。
それが言えたら苦労はしないのだ。レイはメイド達の手によってあれよあれよという間にドレスを着せられ、顔中に化粧品を塗りたくられ死んだ目で姉を見上げる。
何故こんなことに。下級官吏として入庁するまで、のんびりゆったりと過ごすはずだったのに。
レイは、コルセットの所為だけではない吐き気を堪え絶望に打ちひしがれた。
お見合いは朝早くに行われる。どうしてこんな時間になったのかと姉に聞けば、なんでもあちらのご子息の時間の都合らしい。
なんでも、騎士になるのだとか。そのために今日の午後には家を出ることになっているからこの時間しか融通が利かなかったようだ。
行きたくないけれど、行かなければ暴君が何をするか。あと両親が何を言うか。
まさかドレスを着せられることになるなんて一度も考えたことすらなかった。重いし苦しいし、もう脱ぎたい。
レイは両親に見つからないようにと姉によって馬車に詰め込まれ、姉は姉で婚約者らしい男が迎えに来た馬車に乗り込み家を出発する。
嗚呼、出たくない。こんな姿をしているところを知り合いに見られてしまったらどうしようか。末代までの恥。いや、婿入りせずに逃げるつもりだから自分が末代なのだけれど。
お見合いは家の近くにある庭園で行われる。小さな馬車を乗り入れると、進行方向の先に白金色の髪をしたひとりの男が立っていた。
……嫌な予感がする。あの後ろ姿、見たことがある。あの髪、昨日も見た気がする。
非情にも馬車は男の前で止まる。
嗚呼、やめてくれ。御者、扉を開けようとしないでくれ。
いくらなんでも親友にこの姿を見せるのは恥ずかしすぎる。
だから昨日、姉の話を聞いたのか。見合いの予定があるのなら言っておいてくれ。
知っていたなら全力で逃げた。何なら今すぐこのヒールを脱いで走って逃げた。
でも相手はあの親友だ。どれだけ逃げようと、あの長い脚ですぐに追いつかれてしまうに決まってる。
レイは覚悟を決め、寂れた小さな馬車から降りると扇子で顔を隠しながら着飾った親友を見上げる。
今日もなんて色男なんだ。朝日で白く輝く髪が眩しい。
エディは、レイには絶対に向けるはずのない外向けの笑みを浮かべてレイに手を差し伸べた。
「ヴァンダム子爵令嬢、お待ちしておりました。こちらへ」
「……ええ」
気付いていないのか?
揶揄っているにしても普段横で見ている女性に対する態度と全く同じ。
東屋へと連れて行かれてもなお口調も態度もかしこまったもののままだ。
気付かない筈ないだろう。ドレスを着せられ化粧をされてはいるけれど、顔立ちはレイそのものだというのに。
椅子を引かれて座り、見上げたエディは向かいに座ることなくレイを見下ろしたままだ。
もういっそ気付いてくれ。この場で気付いてくれたなら笑い話になるかもしれない。
だが、エディはふっと眦を下げほんの少しだけ普段通りの優しい笑みを見せた。
「弟君によく似ていらっしゃる」
似ているも何も本人だ。
「目尻など、本当にそっくりで」
本人だからそっくりに決まっている。
「……弟君は、私の親友でして」
誰よりも知っている。昨日も肩を組んで別れの歌を歌った仲だ。
エディはそこまで言って恥ずかしそうに笑い、レイの向かいの席に腰を下ろした。
「まず話しておきたいのですが、この婚約は祖父がそちらに持ちかけたものではあります。ですが、私には結婚する意志はありません」
「……そうですか」
知っている。聖騎士となるのだから結婚もしないのだと言っていたのは先週のことだ。
「何より、私は貴女を愛することはできない」
「……ということは、この婚約は?」
ここまで話せば気付くか、そう思ってもエディは何やら考え込んでいるようで気付く素振りもない。
気付け。親友の声が目の前の女からしているんだ。今すぐ気付け。
レイがじっと見ていると、エディは意を決したようにレイを見つめ返した。
青い瞳が、真っ直ぐにレイの瞳を射抜く。思わずどきりとしてしまうほどに真剣な表情だ。
そして、エディは告げた。
「私は、貴方の弟君を愛しています」
「……はぁ?」
「親友として共に過ごすうち、いつの頃からか弟君を、レイを愛してしまった。ですので貴女でなくとも結婚はできない。この想いを胸に抱き聖騎士として一生を神に捧げ生きるつもりで」
「ま、まて、お待ちください」
「私はレイのことを、世界で誰よりも愛している。今回の婚約の打診は祖父の独断です。申し訳ありませんが、この話はなかったことにさせていただきたい」
立ち上がり、エディは深く頭を下げる。
レイは今しがた聞いた有り得ない言葉の数々に、混乱しながら頷くとエディにエスコートされるままに馬車に乗り込み自宅へと送り返される。
なんだ、この告白していないのに振られた感じは。エディがご令嬢を振るところは何度も見たけれど、あの彼女達はどんな思いでこの謝罪を受けたのだろう。
それより、何より。
「いや、気付けよあの馬鹿!」
レイの声が出たのは、家に辿り着き両親に見られないよう姉のメイド達に化粧を落とされドレスから普段着に着替えさせられ自室に戻ってから。
目の前にいた親友の女装姿に気付かずあんな熱烈な愛の告白をするなんて、あいつなんて馬鹿なんだ。
愛? いつから? 同性である自分を愛しているとあんな堂々と言うなんて、どうして。
骨格も声もレイそのままだったのに、何故気付かないんだあの馬鹿は。
レイは両親が怒り部屋に怒鳴り込んでくるまでの間、ずっと枕に顔を埋めて羞恥から叫びベッドの上で暴れまわった。
レイは疲れ切った身体を起こし、朝陽が降り注ぐ窓を見上げた。
昨日の卒業パーティーではあれから友人達が何人もテラスにやって来て、馬鹿騒ぎに盛り上がった。そして夜も更けてから実家に帰ると開口一番、成長した姉に言われたのだ。
「明日の朝、お父様達が起きる前に私の部屋に来なさい」
拒否権など存在しない命令だ。レイが何かを言う前に姉はもう寝るからとメイド達を従えて自室に帰ってしまった。
小さい頃はこれが常だった。嗚呼、またこの生活が暫く続くのか。レイは頭を抱えて一人狭い自室に戻り、誰の手も借りずに風呂に入り着替えも済ませ、一人きりで眠った。
嗚呼、行きたくない。けれど行かなければ何をされるか。レイは急いで身支度を整えると物音ひとつ立てずに部屋を出て、姉の部屋へと向かった。
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「遅い」
「す、すみません」
「レイ、貴方何年経ってもちんちくりんなままね。丁度いいわ」
暴言にしか聞こえないがそれもいつものことだ。身長もあまり伸びずひょろひょろしているのは事実だし、何も言い返せない。言い返すと百以上の言葉で返ってくるから、言い返したくないという方が正しいけれど。
一体何なんだと思っていると、姉のメイド達がレイを取り囲む。否応なしに服を剥かれ始め、レイは思わず悲鳴を上げた。
「ちょっと、何ですか!?」
「静かに。お父様達が起きるわ」
「いや、ちょっと先に説明、待って下着脱げる!」
レイは必死に下着だけは死守しようと抵抗しながら姉に説明をしてほしいと視線で懇願した。
その必死な様子に、仕方がないと姉は深く溜息を吐く。
「今日のお見合い、絶対に行きたくないのよ。私にはもう相手がいるのに、あちらの前当主にあたる方が無理矢理に推し進めたらしくて」
「も、申し込みの時に断ればよかったんじゃ」
「それが、高位貴族がお相手で。手紙で断るのも駄目でしょう? でも私は会ったらきっと選ばれてしまうから、貴方に任せればいいんじゃないかと思って」
「はぁ?」
「レイ、貴方女装してお見合いしてきて頂戴。聡明でない返事を適当にしておけば、あちらから確実に断られるでしょう。それが一番良い案だわ」
いや、何処をどう考えればそれが良いと思えるのか理解ができない。
レイはメイド達によってコルセットを装着され腹が潰れる程にきつく締められ、悲鳴を上げながらその意味がわからない計画に頭を抱える。
ただ会いに行って結婚する相手がいると言えばいいのに、何故弟を女装させてまで行かせようとするんだ。
そこでふと気が付いた。姉の格好が既に出かける用意を済ませたものであることに。
レイの視線に、姉はふふと得意げに微笑む。
「本当は今日からベルナンド様と旅行だったの。お父様にはキャンセルしますと言っておいたのだけれど、やっぱり行きたくて。貴方が帰って来てくれて本当に良かった。帰ってくるまでよろしくね」
この暴君、自分の旅行のためだけに弟を女装させるのか。
なんてこと。なんて暴君。なんて横暴。許してなるものか。
それが言えたら苦労はしないのだ。レイはメイド達の手によってあれよあれよという間にドレスを着せられ、顔中に化粧品を塗りたくられ死んだ目で姉を見上げる。
何故こんなことに。下級官吏として入庁するまで、のんびりゆったりと過ごすはずだったのに。
レイは、コルセットの所為だけではない吐き気を堪え絶望に打ちひしがれた。
お見合いは朝早くに行われる。どうしてこんな時間になったのかと姉に聞けば、なんでもあちらのご子息の時間の都合らしい。
なんでも、騎士になるのだとか。そのために今日の午後には家を出ることになっているからこの時間しか融通が利かなかったようだ。
行きたくないけれど、行かなければ暴君が何をするか。あと両親が何を言うか。
まさかドレスを着せられることになるなんて一度も考えたことすらなかった。重いし苦しいし、もう脱ぎたい。
レイは両親に見つからないようにと姉によって馬車に詰め込まれ、姉は姉で婚約者らしい男が迎えに来た馬車に乗り込み家を出発する。
嗚呼、出たくない。こんな姿をしているところを知り合いに見られてしまったらどうしようか。末代までの恥。いや、婿入りせずに逃げるつもりだから自分が末代なのだけれど。
お見合いは家の近くにある庭園で行われる。小さな馬車を乗り入れると、進行方向の先に白金色の髪をしたひとりの男が立っていた。
……嫌な予感がする。あの後ろ姿、見たことがある。あの髪、昨日も見た気がする。
非情にも馬車は男の前で止まる。
嗚呼、やめてくれ。御者、扉を開けようとしないでくれ。
いくらなんでも親友にこの姿を見せるのは恥ずかしすぎる。
だから昨日、姉の話を聞いたのか。見合いの予定があるのなら言っておいてくれ。
知っていたなら全力で逃げた。何なら今すぐこのヒールを脱いで走って逃げた。
でも相手はあの親友だ。どれだけ逃げようと、あの長い脚ですぐに追いつかれてしまうに決まってる。
レイは覚悟を決め、寂れた小さな馬車から降りると扇子で顔を隠しながら着飾った親友を見上げる。
今日もなんて色男なんだ。朝日で白く輝く髪が眩しい。
エディは、レイには絶対に向けるはずのない外向けの笑みを浮かべてレイに手を差し伸べた。
「ヴァンダム子爵令嬢、お待ちしておりました。こちらへ」
「……ええ」
気付いていないのか?
揶揄っているにしても普段横で見ている女性に対する態度と全く同じ。
東屋へと連れて行かれてもなお口調も態度もかしこまったもののままだ。
気付かない筈ないだろう。ドレスを着せられ化粧をされてはいるけれど、顔立ちはレイそのものだというのに。
椅子を引かれて座り、見上げたエディは向かいに座ることなくレイを見下ろしたままだ。
もういっそ気付いてくれ。この場で気付いてくれたなら笑い話になるかもしれない。
だが、エディはふっと眦を下げほんの少しだけ普段通りの優しい笑みを見せた。
「弟君によく似ていらっしゃる」
似ているも何も本人だ。
「目尻など、本当にそっくりで」
本人だからそっくりに決まっている。
「……弟君は、私の親友でして」
誰よりも知っている。昨日も肩を組んで別れの歌を歌った仲だ。
エディはそこまで言って恥ずかしそうに笑い、レイの向かいの席に腰を下ろした。
「まず話しておきたいのですが、この婚約は祖父がそちらに持ちかけたものではあります。ですが、私には結婚する意志はありません」
「……そうですか」
知っている。聖騎士となるのだから結婚もしないのだと言っていたのは先週のことだ。
「何より、私は貴女を愛することはできない」
「……ということは、この婚約は?」
ここまで話せば気付くか、そう思ってもエディは何やら考え込んでいるようで気付く素振りもない。
気付け。親友の声が目の前の女からしているんだ。今すぐ気付け。
レイがじっと見ていると、エディは意を決したようにレイを見つめ返した。
青い瞳が、真っ直ぐにレイの瞳を射抜く。思わずどきりとしてしまうほどに真剣な表情だ。
そして、エディは告げた。
「私は、貴方の弟君を愛しています」
「……はぁ?」
「親友として共に過ごすうち、いつの頃からか弟君を、レイを愛してしまった。ですので貴女でなくとも結婚はできない。この想いを胸に抱き聖騎士として一生を神に捧げ生きるつもりで」
「ま、まて、お待ちください」
「私はレイのことを、世界で誰よりも愛している。今回の婚約の打診は祖父の独断です。申し訳ありませんが、この話はなかったことにさせていただきたい」
立ち上がり、エディは深く頭を下げる。
レイは今しがた聞いた有り得ない言葉の数々に、混乱しながら頷くとエディにエスコートされるままに馬車に乗り込み自宅へと送り返される。
なんだ、この告白していないのに振られた感じは。エディがご令嬢を振るところは何度も見たけれど、あの彼女達はどんな思いでこの謝罪を受けたのだろう。
それより、何より。
「いや、気付けよあの馬鹿!」
レイの声が出たのは、家に辿り着き両親に見られないよう姉のメイド達に化粧を落とされドレスから普段着に着替えさせられ自室に戻ってから。
目の前にいた親友の女装姿に気付かずあんな熱烈な愛の告白をするなんて、あいつなんて馬鹿なんだ。
愛? いつから? 同性である自分を愛しているとあんな堂々と言うなんて、どうして。
骨格も声もレイそのままだったのに、何故気付かないんだあの馬鹿は。
レイは両親が怒り部屋に怒鳴り込んでくるまでの間、ずっと枕に顔を埋めて羞恥から叫びベッドの上で暴れまわった。
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