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やってきた本番

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その日は朝から気合を入れていた。
なんてたって勇者御一行がくるのだ。

それもいつものように倒すのではない。話し合いと試みないといけないのだ。

いつになく緊張した面持ちのミカエラ。
深紅の長く美しい髪を梳かしていたノアは見慣れない女王の表情を見て言った。

「そんなに緊張されていては逆に警戒されますよ。顔が怖いです」
「え!」

自分の顔に手を当てる。鏡の中の自分を見た。
確かに眉間に皺が寄り、いつにもまして目がつりあがっているように見える。

「で、でも、いつもより可愛らしい服を着ているから大丈夫じゃないかしら」

着ているスカートの袖をひらりとさせた。
いつもの真っ黒なワンピースではなく、今日は純白のワンピースをきている。
色を変えただけだが、魔界の女王としては大きな変化である。

いつも黒なだけに慣れない白い衣装にミカエラはそわそわと落ち着かない。

「ええ。いつにもまして美しいです」
「・・・」
「なんですか?」
「ノアに褒められると、むずむずする」
「なんですかそれは。失礼ですね」
「私はノアみたいな顔に生まれたかったわ。私の顔って気の強さが表面に出たみたいな顔してるんですもの」
「実際にそうなのですから、そこはどうしようもないのでは?」
「ふふ」

笑い始めたミカエラに、ノアが不思議そうな顔をする。

「やっぱりいつものノアが一番ね。
あなたが失礼でないと私も調子が出ないのよ」

そう言ってまた嬉しそうに笑うミカエラ。
ノアは珍しく表情を崩してふっと笑った。

「女王様は本当に変わったお方です」

ミカエラはニコニコ笑いながらノアが綺麗に1つに結ってくれた髪をたなびかせて、「さあ行くわよ」と立ち上がった。



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