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第13話 百人力っす

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 土の巨腕による横薙ぎの一撃に、盗賊たちが一斉に吹き飛ばされる。

「ちょっ、どういうことっすか!? 【農民】って、黄魔法も使えるんすか!?」

 土や金属などに関する魔法、それが黄魔法だ。
 驚くリオに、ルイスは首を振って、

「いや、魔法っていうか、特技かな? 俺、魔力はゼロみたいだし」
「ということは、魔力の枯渇を心配せず、無限に使えるってことっすか……?」
「魔力の制限は確かにないけど、体力は消耗するぞ」

 魔法には魔力が必要だ。
 一方で特技は体力を必要とする。

 そのためどちらが有利なのかは一概には言えない。
 ……ただ、日々の農作業で鍛えたルイスは、有り余るほどの体力を持っていたりする。

「がはっ……な、な、何だ、今のは……っ?」
「まさか、天職持ちがいやがるのか……っ!?」
「見た感じ、騎士とかじゃなさそうだっ……ってことは、冒険者か!?」
「くそっ、逃げるぞっ!」

 そのまま気を失ってしまった者もいたが、当たり所がよかったのだろう、何人かはどうにか立ち上がると慌てて逃げていく。

 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!

 だがそんな彼らの前に、二本目の巨腕が立ち塞がった。

「「「こっちにも!?」」」

 先端の拳が開いて、彼らの頭上へと振り下ろされる。

「「「ぶぎゃああああああああああっ!?」」」

 蛙のように潰れた盗賊たちは、完全に気絶してしまった。

「す、すごい……。盗賊を、一瞬で……」
「普通に強いじゃないっすか!」

 ルイスの力を目の当たりにして、驚嘆するジークとリオ。

「る、ルイスさんって……美味しい野菜を作れるだけのおじさんじゃ、なかったんですね……」

 辛口なコルットも評価を改めたようだ。

「(あの一瞬で巨大な土の腕を作り出し、しかもあそこまで自在に動かすなんて……これはどう考えても見習いのレベルではありませんわね。本当に戦士としての活動実績がゼロなんですの?)」

 試験官のエリザもまた大いに驚いていた。

「(今のを見ただけでも、合格は間違いなし……ただ、このタイプの特技だと、今回の試験では少し苦戦するかもしれませんわね……)」






 やがて一行が辿り着いたのは、不思議な形状をした岩が密集する岩石地帯だった。
 その中でもひときわ大きな岩の根元に、そのダンジョンの入り口はあった。

「ここが『マーシェルの岩場洞窟』ですの。お伝えした通り、今回あなた方が目指すのは、この地下五階。あたくしも試験官として同行しますが、自分たちの力だけでそこまで到達してくださいまし」

 よほど危険な状況に陥らない限りは、エリザが手を出すことはないという。

 ちなみに多くのダンジョンは、奥に進むほど魔物やトラップが凶悪化する。
 そのため探索の際には、自分たちの実力を見極めながら、少しずつ攻略を進めていくのがセオリーだが、今回は受験者たちの能力をギルド側が把握した上で、地下五階という目的地を設定していた。

「今のあなた方なら、地下五階まで辿り着くのはそう難しいことではないはずですわ」

 ここの地下五階までであれば、見習い冒険者の手に負えない魔物はまず出没しない。
 それに危険度の高いトラップなどもないはずだった。

「この見習い期間、何度かダンジョンには潜ってきたっすけど……試験となると、さすがに緊張するっすね……。まぁでも、今日はルイスがいるっすからね! 百人力っす!」
「……改めて言っておきますけれど、たとえパーティで地下五階に辿り着けたとしても、個人であまりにも活躍できていなければ、不合格になりますわよ?」

 楽観的なリオに、エリザが釘をさす。

「そもそも俺はダンジョンに潜るのは初めてなんだが」

 見習い期間を経ていないルイスにとって、人生初のダンジョンだった。
 なぜか期待されている状況に戸惑いつつ、足を踏み入れる。

「あれ?」
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