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第五話 気になる木
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『レベルが3に上がりました』
抑揚のない声が頭の中に響く。
『〈武器生成〉が〈武器生成+1〉になりました。スキル〈食糧生成〉を獲得しました』
新しいスキルキターーーっ!
って、なぜ食糧!?
何に使うんだよ?
ダンジョンである俺は当然、何かを食べる必要はないし、それはゴブリンたちも同様だ。
まぁとりあえず試しに使ってみるか。
木が生えてきました。
いやマジで。
ダンジョンの中に木が生えてきちゃったんだよ。
と言っても魔物のように簡単に生成できたわけではなく、高さが二メートルくらいになるまでに三日はかかった。
それでも普通の木の成長速度と比べると異常だ。
そしてしばらくすると実がなった。
赤々とした、林檎みたいな実だ。
ちょっと美味しそうだ。
ダンジョンになってから食べるという行為が必要なくなった――というよりそもそもできない――俺だが、思わず齧り付きたくなる。できないが。
ゴブリンたちが我先にと争い、林檎を木からもぎ取った。
あ、こいつら喰うのか。
だが全員分はない。
実を付けさせるのにも魔力が必要なようで、残念だが一度にそんなにたくさん作ることはできないのだ。せいぜい、三つか四つ。
しかも生成までに丸一日は必要だ。
結果、ゴブリン同士でも実力に差があるらしく、中でも力の強い一匹だけが独占することとなってしまった。
もっと仲間と分け合えよ! と思っていたのだが、それが後に意外な現象を引き起こすことになるのだった。
基本的に毎日やることもなくて暇なので、俺はせっせと迷宮の拡張に励んでいた。
現在、ダンジョンの入り口から、核のある最深部までおよそ二十五メートル。
最初はほぼ直線だが、十五メートル付近で大きく右にカーブしていた。
言うまでもなく、それは俺がこちらの世界に来てから新たに掘り進めた部分である。十日ほどかけて、十メートルくらい。
そのカーブが始まった直後辺りで、もう一本、左方向にも道が伸びている。
こちらはまだ五メートルほどで行き止まりとなっていた。
現状のダンジョンの構造はこんなところ。
理想としては何階層もあるダンジョンにしたいのだが、まだまだ先は長そうである。
『〈迷宮拡張+1〉が〈迷宮拡張+2〉になりました』
俺がせっせとダンジョンを広げていると、唐突にそんな声が頭に響いた。
スキルの+値が増えるのは、どうやらレベルアップのときだけではないらしい。
へぇ。単純に何度も繰り返し使っていれば、段階が上がって行くのか。
〈迷宮拡張+2〉になったことで、拡張ペースが大きく上がった。
前回の横道を掘れるようになったというような新能力は手に入らなかったが、お陰で随分と拡張作業が捗るようになった。
ちなみにこのスキルを応用することで、簡単なトラップを作ってみた。
落とし穴である。
二メートルくらい掘ったので、落ちたら出て来るのにそこそこ難儀するだろう。
まぁ単に地面に穴を掘っただけで、見れば簡単にバレちゃうんだけどね。
それでも知能の低い魔物なら引っ掛かるかもしれない。
と思っていたんだが、牙熊にはあっさり回避されてしまった。
ですよねー。
さすがに魔物でもそこまで馬鹿じゃないか。
と思っていたんだが、ある日、その穴にゴブリンの一匹が落ちてしまった。
お前が引っ掛かるのかよ!
仲間に引っ張り出されたそのゴブリンは、それ以来、穴が怖くなったのか、傍を通るときは必ず大きく迂回するようになった。
一度掘った穴、埋めることはできないんだよなぁ……。
抑揚のない声が頭の中に響く。
『〈武器生成〉が〈武器生成+1〉になりました。スキル〈食糧生成〉を獲得しました』
新しいスキルキターーーっ!
って、なぜ食糧!?
何に使うんだよ?
ダンジョンである俺は当然、何かを食べる必要はないし、それはゴブリンたちも同様だ。
まぁとりあえず試しに使ってみるか。
木が生えてきました。
いやマジで。
ダンジョンの中に木が生えてきちゃったんだよ。
と言っても魔物のように簡単に生成できたわけではなく、高さが二メートルくらいになるまでに三日はかかった。
それでも普通の木の成長速度と比べると異常だ。
そしてしばらくすると実がなった。
赤々とした、林檎みたいな実だ。
ちょっと美味しそうだ。
ダンジョンになってから食べるという行為が必要なくなった――というよりそもそもできない――俺だが、思わず齧り付きたくなる。できないが。
ゴブリンたちが我先にと争い、林檎を木からもぎ取った。
あ、こいつら喰うのか。
だが全員分はない。
実を付けさせるのにも魔力が必要なようで、残念だが一度にそんなにたくさん作ることはできないのだ。せいぜい、三つか四つ。
しかも生成までに丸一日は必要だ。
結果、ゴブリン同士でも実力に差があるらしく、中でも力の強い一匹だけが独占することとなってしまった。
もっと仲間と分け合えよ! と思っていたのだが、それが後に意外な現象を引き起こすことになるのだった。
基本的に毎日やることもなくて暇なので、俺はせっせと迷宮の拡張に励んでいた。
現在、ダンジョンの入り口から、核のある最深部までおよそ二十五メートル。
最初はほぼ直線だが、十五メートル付近で大きく右にカーブしていた。
言うまでもなく、それは俺がこちらの世界に来てから新たに掘り進めた部分である。十日ほどかけて、十メートルくらい。
そのカーブが始まった直後辺りで、もう一本、左方向にも道が伸びている。
こちらはまだ五メートルほどで行き止まりとなっていた。
現状のダンジョンの構造はこんなところ。
理想としては何階層もあるダンジョンにしたいのだが、まだまだ先は長そうである。
『〈迷宮拡張+1〉が〈迷宮拡張+2〉になりました』
俺がせっせとダンジョンを広げていると、唐突にそんな声が頭に響いた。
スキルの+値が増えるのは、どうやらレベルアップのときだけではないらしい。
へぇ。単純に何度も繰り返し使っていれば、段階が上がって行くのか。
〈迷宮拡張+2〉になったことで、拡張ペースが大きく上がった。
前回の横道を掘れるようになったというような新能力は手に入らなかったが、お陰で随分と拡張作業が捗るようになった。
ちなみにこのスキルを応用することで、簡単なトラップを作ってみた。
落とし穴である。
二メートルくらい掘ったので、落ちたら出て来るのにそこそこ難儀するだろう。
まぁ単に地面に穴を掘っただけで、見れば簡単にバレちゃうんだけどね。
それでも知能の低い魔物なら引っ掛かるかもしれない。
と思っていたんだが、牙熊にはあっさり回避されてしまった。
ですよねー。
さすがに魔物でもそこまで馬鹿じゃないか。
と思っていたんだが、ある日、その穴にゴブリンの一匹が落ちてしまった。
お前が引っ掛かるのかよ!
仲間に引っ張り出されたそのゴブリンは、それ以来、穴が怖くなったのか、傍を通るときは必ず大きく迂回するようになった。
一度掘った穴、埋めることはできないんだよなぁ……。
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