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第2部 スタートはゴール地点から 本が読みたければ稼がねば編
10 小麦粉と油と砂糖
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「あら、いらっしゃい」
「こんにちは」
香辛料の露店に向かうと店主の女性が、柔らかな笑みで出迎えてくれる。
「今日は辛めな香辛料が欲しくて」
「そうなの、いつくかあるわ。お茶だすから座って待っててね」
一度奥に入り、大つ河はその間辺りを興味深く眺めている。
「……」
「何か気になります?」
「ああ」
「詠斗…これ食べたい」
チグリスが指したのは、黒い木の実の固まりのような物だった。
「これ何かな」
「それは、プルーという果物を乾燥させたものよ」
「へえ、買おうか」
奥から店主がお茶を運んでくる、お茶を飲みながら商品説明をしてくれる。
「お肉ならこ
の赤い物を振りかけて食べるとピリッとしていて美味しいわ。魚だといくつかの果物の皮を乾燥させたものを混ぜたこちら、野菜なら寝かせた香辛料に風味のある木の実や乾燥させた香りの良い葉を細かくしたものがいいかしら」
「あ、どれも辛いだけじゃなく香りや味があって美味しい。大河さんも味見て下さい」
「どれ……もっと辛いのはあるのか?」
「なら、これはどうかしら。トルーという野菜を乾燥させた物なんだけど、小さく刻んで料理に載せるのよ。でもとても辛いから小さな子供に食べさせないようにね」
「わかった、これも10本程貰おう。後聞きたい事があるんだが聞いても?」
「私で答えられるなら」
乾燥させた赤い実、匂いは唐辛子によく似ている。
「ここに砂糖はないのか?加工されているものも含めて」
「…ええ、砂糖は商会が完全に独占販売しているわ」
「小麦粉も?」
「その通り」
「他には?」
「そうねぇ…色々あるけど…一部のお酒と油かしら」
「最近値上がりは?」
「小麦粉と油と砂糖ね、小さいお店は支払い出来なくて店をたたんじゃう所もあるわ」
「そうか、これは情報料だ。また何か教えてくれ」
懐から5,000ログコインを店主に渡す、店主は受け取り静かに微笑み頷いた。
「ええ、また来てね」
「ああ、また来る」
「大河さん、何を探ってるんですか?」
「気づいたか?」
「はい」
「商業ギルドに行けば分かるさ」
「分かりました」
店主に見送られた後、何かに気づいた詠斗が尋ねるが大河は薄く笑っているだけだった。
「よお、兄ちゃん。来てくれたのか…」
「こんにちは、元気ないですね」
「いや、何。あ、今日も干し芋持ってきたからほら、後他の野菜も収穫したから良かったらどうだ?丸ごと焼いたり、粒を煮たりすると美味いぞ!」
「詠斗、干し芋食いたい」
「ほら、チグリス。これってもしかして…」
「とうもろこしか、お兄さんこの野菜全て売って欲しい」
「兄ちゃんの友達か、あんまり持って来てないけどほら」
元気がなさそうに見えるが、笑顔で店主が見せてくれたのは、トウモロコシに良く似た作物だった、何か思い付いたのか大河が全て購入した。
「どうかしたんですか?」
「いや、実は家族がやってる店をたたむことになってな、まあ作物も育ててこうして売ってるから生活は少し苦しくなる位だが、じいさんばあさんの代からやっててな…」
「それは、小麦粉とか使う飯屋か?」
「ああ、この辺りの名物料理のパティってやつさ」
「店はどの辺りに?」
「路地の先の小さい店だが…」
話していくうちにどんどん気落ちしていく、頭をかいて深いため息を付いた。
「食べにいきますよ!」
「お、本当かい!…あ、いや小麦粉や油も値上げしてな。今日はやってない。実質もう閉めてるのと一緒か…」
詠斗の言葉に顔が一瞬明るくなるが、小麦粉や油が高くて手に入らない為店はもう閉めているのと一瞬だった。
「食わせたかったな…兄ちゃん達にうちの家族が作るパティ本当に美味いから食わせたかった…」
「なら、ここの芋全て貰おう。そうしたら明日は小麦粉や油は買えるだろう?明日食いにいくから」
「え!いいのかい?それなら明日店を開けられる」
「これで足りるか?」
「いや、おおす…ありがとうな!全部持ってってくれ!おれは小麦粉を仕入れて店にいくから!明日待ってるぞ」
「明日は家族の分も持ち帰りたいから、沢山用意して欲しい」
大河が出したのは10,000ログコインを5枚50,000ログコイン、この店の商品全て購入したとしても10,000ログコイン程なので店主は驚いたが大河の気持ちを受け取り、商品全てを渡して空の台車を引いてあっという間にいなくなってしまった。
「大河さんはすごいですね。僅かな情報で色々な事が分かって…」
「それは、本を沢山読んだからな。推理小説なんかは推理しながら読むと思考力がついてくる」
「俺にも本貸して下さい!」
「ああ、いいよ。次は商業ギルドか…」
「詠斗さん昨日はすみませんでした」
「いえ、ゴーテンさんが買い取り金額だしてくれでので、気にしないで下さい」
「詠斗さんのおかげで嬉しい悲鳴というものですな、こちらの方は?」
「大河という、詠斗くんの同郷だ」
「彼も商人登録を」
「おお、歓迎致しますぞ。さあ、部屋でゆっくり話しを」
「どうも」
にこやかなけれども、寝ていない疲労が隠せないズィーガーが応接室へ3人を案内する。
「ゴーテンに服の直しを頼んだそうで、張り切っておりますよ。もう少しお時間をと言うことですので…」
「はい、構いませんそれと追加で直しをお願いしたくて、服はこちらに」
「おお、お任せ下さい。お預かりしましょう」
「サイズは同じでいいので、それとまたショルダーバッグを欲しいんですが」
「素晴らしい作りですな、肌触りも大変よい質の服。是非わが商会でも売りたいものですな。ショルダーバッグも今お持ちしましょう、茶も持って来ますので暫しお待ちを」
大事そうに詠斗から預かった服を抱え、応接室を後にする。
「うん、良い人だ」
「ですよね!色々して貰って感謝しています」
それは向こうに利益になるからだろうと内心大河は思うが、慈善家でもあるのは確かだ、この後の話しがスムーズに行えそうだった。
「お待たせしました、お茶とこちらの在庫今このギルドにこの色の物しかないのですが…」
カートに茶器と薄い黒色のショルダーバッグを載せた、ズィーガーが戻ってくる。
「いいな、この色気に入った。頂こう」
「どうぞ、詠斗さんのご友人の方でしたらどうぞ差し上げますので、意見などありましたら是非」
「ん、このショルダーバッグはロゴはないのか?」
「ロゴと申しますと?」
「この商品はここが作ったという証のような物だな、こういう製品は1度作られてしまえば模倣がし易い、そこでこのブランドが作ったという証を付けて他との差別化を図る」
「な、なるほど」
「刺繍などでロゴを施したり、富裕層には別に料金をとりバックの希望する部分に名前の刺繍など施していいかもな」
「そうしますと時間がかかりますな…」
「それはそうだろう、自分だけの特別な物だ時間は掛かる。そこはしっかり説明し、納得させればいい。名前の刺繍入りの物だ盗まれたり、言い掛かりを付けられてもどうとでもなる。階級が高い冒険者にも需要があるかもな」
「…特別感、いい響きですな。因みにどのようなロゴが良いか何か案等はございますか?」
紙とペンを渡され少し考えて書いた物をズィーガーに渡す、紙に書いたのはアルファベットのZuだった。
「この形は一体…」
「俺の故郷の文字だな、ズを現している」
「この形は刺繍もしやすい、見た事もない形!これは素晴らしい!是非我が商会で!」
紙を握りしめ興奮しているズィーガーに満足げに大河が頷く、詠斗もチグリスも成り行きを静かに見守っていたというか、話しの流れの早さについていけなかった。
「採用して貰えてよかった、お宅とは長く付き合っていけそうだな」
「モチロンですとも!」
「それで、お願いと聞きたい事がある」
「私でお答え出来る事ならば、何でも!」
「小麦粉、砂糖や油について」
「…そう来ましたか、…茶のお代わりを注ぎましょう…」
「その辺りの品はブルラド商会というわが商会のあまりこう言いたくはないのですが、一応ライバルですな…」
「というと、あまり印象のよくない所という訳か…」
「裏で汚い手を使って弱者から搾取し、高利貸や奴隷売買など……すみません私的感情を…」
「いや、小麦粉等を独占しているのは…」
「ここ、トタラナでは彼方の商会の方が歴史が古く口を挟めないのです」
「ズィーガー商会でもその辺りの仕入れも出来ないのか?」
「はい、この国では全てブルラド商会が牛耳っています。個人での買い付けもブルラド商会から購入する他ありません」
「この国ね…ならズィーガーさん、この国以外で小麦粉や砂糖、油を売ってくれる店を教えて欲しい」
「ならば、わが商会の支店から買うことが可能ですが、片道一週間以上馬車でかかりますよ」
「かまわない、紹介状を書いて貰えるか?」
「わ、分かりました」
「それと、宴会をするから食材が欲しい、ズィーガーさんの所で手に入る食材のリストが見たい」
「こちらにありますよ、大量注文も可能です。今紹介状用意します!」
「ほら、詠斗くん必要な物を注文すると良い」
「ありがとうございます、色々ある!ほら、チグリスも見て」
「ん、これとか…」
詠斗はチグリスと用紙を見つめ、欲しい物を選び大河はここでの最後の仕事をこなす。
「あと、ズィーガーさん。そちらで所有している物件があれば飲食店が出来そうな建物を購入したい、値段場所建物の古さは問わない、後商会というか小さな店を作る際はどうすればいい教えて欲しい」
「その話し、うちも1枚噛ませて貰えるなら手続きなどの面倒な事は全てやらせてもらいましょう、如何ですか?」
すっかり商人の顔に戻ったズィーガーの顔を見て大河が頷く、紹介状を受け取り懐にしまった。
「《クイナト》という街がここから西に一週間程馬車で掛かる距離にあります。そこは《ロメンスギル》という国の王都で、土壌が小麦粉や砂糖の小麦粉の栽培に適していて盛んに取り引きが行われています、そこの商業ギルドのギルドマスターがうちの支店長です、彼宛に紹介状を書きましたので渡して下さい」
「どうも」
「ズィーガーさん、このリストの食材全て10kgずつと、お酒全種類3樽ずつお願いします!」
「はい、承知しました。その量なら明日準備出来ますから、物件も明日ご案内しますのでいらして下さい」
「分かりました!料金は俺の口座から支払います、足りなければ言って下さい」
「はは、足りますよ」
「俺も口座を作るか」
「用意しておきます」
「そろそらドワーフの所へ行こうか」
「かなり良いもの出来たそうですよ」
「よし、じゃあズィーガーさんまた明日」
「はい、お待ちしております」
出口まで丁重に見送り、3人の姿が見えなくなりズィーガーが大きな嵐が来るなと呟いた。
「詠斗くん、勝手に先走ってすまない」
「いえ、俺もお手伝いさせて下さい!」
「俺も…」
「ありがとう、よし今日は景気付けに焼き肉にしよう」
「はい、次は肉屋に行きましょう!」
「肉、肉、肉…」
早速3人で肉屋へ足を運ぶ、これが歴史的大改革の始まりだと3人は知る由もなかった…
「こんにちは」
香辛料の露店に向かうと店主の女性が、柔らかな笑みで出迎えてくれる。
「今日は辛めな香辛料が欲しくて」
「そうなの、いつくかあるわ。お茶だすから座って待っててね」
一度奥に入り、大つ河はその間辺りを興味深く眺めている。
「……」
「何か気になります?」
「ああ」
「詠斗…これ食べたい」
チグリスが指したのは、黒い木の実の固まりのような物だった。
「これ何かな」
「それは、プルーという果物を乾燥させたものよ」
「へえ、買おうか」
奥から店主がお茶を運んでくる、お茶を飲みながら商品説明をしてくれる。
「お肉ならこ
の赤い物を振りかけて食べるとピリッとしていて美味しいわ。魚だといくつかの果物の皮を乾燥させたものを混ぜたこちら、野菜なら寝かせた香辛料に風味のある木の実や乾燥させた香りの良い葉を細かくしたものがいいかしら」
「あ、どれも辛いだけじゃなく香りや味があって美味しい。大河さんも味見て下さい」
「どれ……もっと辛いのはあるのか?」
「なら、これはどうかしら。トルーという野菜を乾燥させた物なんだけど、小さく刻んで料理に載せるのよ。でもとても辛いから小さな子供に食べさせないようにね」
「わかった、これも10本程貰おう。後聞きたい事があるんだが聞いても?」
「私で答えられるなら」
乾燥させた赤い実、匂いは唐辛子によく似ている。
「ここに砂糖はないのか?加工されているものも含めて」
「…ええ、砂糖は商会が完全に独占販売しているわ」
「小麦粉も?」
「その通り」
「他には?」
「そうねぇ…色々あるけど…一部のお酒と油かしら」
「最近値上がりは?」
「小麦粉と油と砂糖ね、小さいお店は支払い出来なくて店をたたんじゃう所もあるわ」
「そうか、これは情報料だ。また何か教えてくれ」
懐から5,000ログコインを店主に渡す、店主は受け取り静かに微笑み頷いた。
「ええ、また来てね」
「ああ、また来る」
「大河さん、何を探ってるんですか?」
「気づいたか?」
「はい」
「商業ギルドに行けば分かるさ」
「分かりました」
店主に見送られた後、何かに気づいた詠斗が尋ねるが大河は薄く笑っているだけだった。
「よお、兄ちゃん。来てくれたのか…」
「こんにちは、元気ないですね」
「いや、何。あ、今日も干し芋持ってきたからほら、後他の野菜も収穫したから良かったらどうだ?丸ごと焼いたり、粒を煮たりすると美味いぞ!」
「詠斗、干し芋食いたい」
「ほら、チグリス。これってもしかして…」
「とうもろこしか、お兄さんこの野菜全て売って欲しい」
「兄ちゃんの友達か、あんまり持って来てないけどほら」
元気がなさそうに見えるが、笑顔で店主が見せてくれたのは、トウモロコシに良く似た作物だった、何か思い付いたのか大河が全て購入した。
「どうかしたんですか?」
「いや、実は家族がやってる店をたたむことになってな、まあ作物も育ててこうして売ってるから生活は少し苦しくなる位だが、じいさんばあさんの代からやっててな…」
「それは、小麦粉とか使う飯屋か?」
「ああ、この辺りの名物料理のパティってやつさ」
「店はどの辺りに?」
「路地の先の小さい店だが…」
話していくうちにどんどん気落ちしていく、頭をかいて深いため息を付いた。
「食べにいきますよ!」
「お、本当かい!…あ、いや小麦粉や油も値上げしてな。今日はやってない。実質もう閉めてるのと一緒か…」
詠斗の言葉に顔が一瞬明るくなるが、小麦粉や油が高くて手に入らない為店はもう閉めているのと一瞬だった。
「食わせたかったな…兄ちゃん達にうちの家族が作るパティ本当に美味いから食わせたかった…」
「なら、ここの芋全て貰おう。そうしたら明日は小麦粉や油は買えるだろう?明日食いにいくから」
「え!いいのかい?それなら明日店を開けられる」
「これで足りるか?」
「いや、おおす…ありがとうな!全部持ってってくれ!おれは小麦粉を仕入れて店にいくから!明日待ってるぞ」
「明日は家族の分も持ち帰りたいから、沢山用意して欲しい」
大河が出したのは10,000ログコインを5枚50,000ログコイン、この店の商品全て購入したとしても10,000ログコイン程なので店主は驚いたが大河の気持ちを受け取り、商品全てを渡して空の台車を引いてあっという間にいなくなってしまった。
「大河さんはすごいですね。僅かな情報で色々な事が分かって…」
「それは、本を沢山読んだからな。推理小説なんかは推理しながら読むと思考力がついてくる」
「俺にも本貸して下さい!」
「ああ、いいよ。次は商業ギルドか…」
「詠斗さん昨日はすみませんでした」
「いえ、ゴーテンさんが買い取り金額だしてくれでので、気にしないで下さい」
「詠斗さんのおかげで嬉しい悲鳴というものですな、こちらの方は?」
「大河という、詠斗くんの同郷だ」
「彼も商人登録を」
「おお、歓迎致しますぞ。さあ、部屋でゆっくり話しを」
「どうも」
にこやかなけれども、寝ていない疲労が隠せないズィーガーが応接室へ3人を案内する。
「ゴーテンに服の直しを頼んだそうで、張り切っておりますよ。もう少しお時間をと言うことですので…」
「はい、構いませんそれと追加で直しをお願いしたくて、服はこちらに」
「おお、お任せ下さい。お預かりしましょう」
「サイズは同じでいいので、それとまたショルダーバッグを欲しいんですが」
「素晴らしい作りですな、肌触りも大変よい質の服。是非わが商会でも売りたいものですな。ショルダーバッグも今お持ちしましょう、茶も持って来ますので暫しお待ちを」
大事そうに詠斗から預かった服を抱え、応接室を後にする。
「うん、良い人だ」
「ですよね!色々して貰って感謝しています」
それは向こうに利益になるからだろうと内心大河は思うが、慈善家でもあるのは確かだ、この後の話しがスムーズに行えそうだった。
「お待たせしました、お茶とこちらの在庫今このギルドにこの色の物しかないのですが…」
カートに茶器と薄い黒色のショルダーバッグを載せた、ズィーガーが戻ってくる。
「いいな、この色気に入った。頂こう」
「どうぞ、詠斗さんのご友人の方でしたらどうぞ差し上げますので、意見などありましたら是非」
「ん、このショルダーバッグはロゴはないのか?」
「ロゴと申しますと?」
「この商品はここが作ったという証のような物だな、こういう製品は1度作られてしまえば模倣がし易い、そこでこのブランドが作ったという証を付けて他との差別化を図る」
「な、なるほど」
「刺繍などでロゴを施したり、富裕層には別に料金をとりバックの希望する部分に名前の刺繍など施していいかもな」
「そうしますと時間がかかりますな…」
「それはそうだろう、自分だけの特別な物だ時間は掛かる。そこはしっかり説明し、納得させればいい。名前の刺繍入りの物だ盗まれたり、言い掛かりを付けられてもどうとでもなる。階級が高い冒険者にも需要があるかもな」
「…特別感、いい響きですな。因みにどのようなロゴが良いか何か案等はございますか?」
紙とペンを渡され少し考えて書いた物をズィーガーに渡す、紙に書いたのはアルファベットのZuだった。
「この形は一体…」
「俺の故郷の文字だな、ズを現している」
「この形は刺繍もしやすい、見た事もない形!これは素晴らしい!是非我が商会で!」
紙を握りしめ興奮しているズィーガーに満足げに大河が頷く、詠斗もチグリスも成り行きを静かに見守っていたというか、話しの流れの早さについていけなかった。
「採用して貰えてよかった、お宅とは長く付き合っていけそうだな」
「モチロンですとも!」
「それで、お願いと聞きたい事がある」
「私でお答え出来る事ならば、何でも!」
「小麦粉、砂糖や油について」
「…そう来ましたか、…茶のお代わりを注ぎましょう…」
「その辺りの品はブルラド商会というわが商会のあまりこう言いたくはないのですが、一応ライバルですな…」
「というと、あまり印象のよくない所という訳か…」
「裏で汚い手を使って弱者から搾取し、高利貸や奴隷売買など……すみません私的感情を…」
「いや、小麦粉等を独占しているのは…」
「ここ、トタラナでは彼方の商会の方が歴史が古く口を挟めないのです」
「ズィーガー商会でもその辺りの仕入れも出来ないのか?」
「はい、この国では全てブルラド商会が牛耳っています。個人での買い付けもブルラド商会から購入する他ありません」
「この国ね…ならズィーガーさん、この国以外で小麦粉や砂糖、油を売ってくれる店を教えて欲しい」
「ならば、わが商会の支店から買うことが可能ですが、片道一週間以上馬車でかかりますよ」
「かまわない、紹介状を書いて貰えるか?」
「わ、分かりました」
「それと、宴会をするから食材が欲しい、ズィーガーさんの所で手に入る食材のリストが見たい」
「こちらにありますよ、大量注文も可能です。今紹介状用意します!」
「ほら、詠斗くん必要な物を注文すると良い」
「ありがとうございます、色々ある!ほら、チグリスも見て」
「ん、これとか…」
詠斗はチグリスと用紙を見つめ、欲しい物を選び大河はここでの最後の仕事をこなす。
「あと、ズィーガーさん。そちらで所有している物件があれば飲食店が出来そうな建物を購入したい、値段場所建物の古さは問わない、後商会というか小さな店を作る際はどうすればいい教えて欲しい」
「その話し、うちも1枚噛ませて貰えるなら手続きなどの面倒な事は全てやらせてもらいましょう、如何ですか?」
すっかり商人の顔に戻ったズィーガーの顔を見て大河が頷く、紹介状を受け取り懐にしまった。
「《クイナト》という街がここから西に一週間程馬車で掛かる距離にあります。そこは《ロメンスギル》という国の王都で、土壌が小麦粉や砂糖の小麦粉の栽培に適していて盛んに取り引きが行われています、そこの商業ギルドのギルドマスターがうちの支店長です、彼宛に紹介状を書きましたので渡して下さい」
「どうも」
「ズィーガーさん、このリストの食材全て10kgずつと、お酒全種類3樽ずつお願いします!」
「はい、承知しました。その量なら明日準備出来ますから、物件も明日ご案内しますのでいらして下さい」
「分かりました!料金は俺の口座から支払います、足りなければ言って下さい」
「はは、足りますよ」
「俺も口座を作るか」
「用意しておきます」
「そろそらドワーフの所へ行こうか」
「かなり良いもの出来たそうですよ」
「よし、じゃあズィーガーさんまた明日」
「はい、お待ちしております」
出口まで丁重に見送り、3人の姿が見えなくなりズィーガーが大きな嵐が来るなと呟いた。
「詠斗くん、勝手に先走ってすまない」
「いえ、俺もお手伝いさせて下さい!」
「俺も…」
「ありがとう、よし今日は景気付けに焼き肉にしよう」
「はい、次は肉屋に行きましょう!」
「肉、肉、肉…」
早速3人で肉屋へ足を運ぶ、これが歴史的大改革の始まりだと3人は知る由もなかった…
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