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第5部 ここで生きていく 晴れた日は海を見て編

17 何気ない日常にて

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いつもと変わらぬ朝、大河とチグリスは遅く起きてナイルが用意してくれた朝食を食べ、店に行き手伝いを行う。
本日も大盛況であっと言う間に商品が売れていく、常連というのも出来顔なじみの客も増え口コミでまた客が増える。
「ブルラド商会のポップコーンはダメだ美味しくない」
「量も少ないし、味もしない」
「値段も高いし、並んでもこっちの方が良いわ」
わいわいと声が聞こえてくる、模倣してもこちらの味には叶わないだろう勝手にやっていればいいと大河思いつつ店仕舞いを行う。
「お疲れさまー今日はこの後孤児院の歓迎会よね!楽しみ!」
パティの営業が終わり片付けを初めたナティやナット達が、向かいの個人へ視線を向ける。
キッキ達もとても楽しみしているようではしゃいでいる、みんなに食べて貰おうとパンや焼き菓子も別に用意している。
「ズィーガーさん達の所へ行って土地の申請なんかは俺と率君で行って来る!」
「俺と綴さんは院長に話しをしてからだな」
「俺は店の片づけと準備するよ」
詠斗、率でズィーガー商会へ、晴海はベルンやカイネ達と店の片づけへ、大河と綴は孤児院へと入った。

「院長先生…強制ではありません、院長先生が受け入れないと決めればこの話は…」
2階の院長や職員の執務室で職員と先生を呼び、大河と綴がラキの件とまたラージュの頼みの内容を伝えた。
子供達は朝食を食べた後は新しい部屋や家が嬉しいようで、探検や図書室で本を読んだりと賑やかに過ごしている、扉の向こうからは子供達のはしゃぐ声が聞こえて綴の顔も綻んだ。
「王子…そうですか《ロメンスギル》の…」
院長も《ロメンスギル》の歴代の王たちの行く末を知っているのだろう、孤児院があった《コウトル》は《ロメンスギル》の隣国の町、孤児院の院長としてどうするのか悩みそして答えを出す。
「わかりました、受け入れましょう。特別扱いはせず此処で皆と一緒に1人の子供として過ごして貰おうと思います。2人も良いですね?」
「は、はい」
「わかりました」
「院長先生、他の先生もありがとうございます」
「この迎えに行ってくる」
「分かりました、お待ちしています」
大河お綴も院長の英断に感謝し頭を下げて孤児院を後にする、外に出れば2人の目の前には神々からの依頼が現れた…。

「ズィーガーさん!」
「詠斗さん、率さんお持ちしていましたぞ!さ、こちらへ」
商業ギルドで大きな腹を揺らしズィーガーが駆けてくる、いつもの応接室に通され茶をご馳走になった。
「詠斗さん、率さん。ありがとうございます」
どかっと座ったズィーガーが深々頭を下げる、詠斗と率がお互いに顔を見合わせ首を傾げた。
「《エットナ》のエッジの件です、沢山買い取りを出して頂いたのとあちらでもなっぷさっくという物の作り方を提案して頂いて…あの街は名産もなく衰退していて…良い起爆剤になってくれれば…エッジも大変喜んでいました」
「なら良かった」
「はい、出来上がるのを楽しみしています」
「良い物をお渡しできるよう、ウール殿や他の裁縫師にも声を掛けて取り組んでいます。孤児院の件もお任せ下さい。この村で暮らせるように手配済みです、土地あの建物も書類は準備しています。こちらを確認して頂きサインをお願いします」
「分かりました」
「そうだ、ツンドーラの買い取りもお願いします。20本出します」
「おお、それはありがたい。書類完了後、倉庫の方へ行きましょう。詠斗さん達のお陰で我が《ズィーガー商会》は一躍有名商会です。各支店でも取引が増え雇用も増えていますよ」
「良かったです」
「ショルダーバッグもエコバッグも店に出せば即完売です」
詠斗が書類を読みサインを行う、倉庫に移動しツンドーラの売却をした所で2人の前に神々の依頼の画面が飛び込んだ。

「パティってこう作るのよ」
「へえー」
「ハルミくん上手ね」
「そう?」
店の2階で明日のパティの仕込みの手伝いを晴海がしている、となりでナティが付いて晴海の手際を褒める、晴海はテキパキと皮に具を載せて包んでいく。
「この粉混ぜる魔法具のお陰で短い時間で沢山作れるようになってありがたいな」
ナットが粉と水と塩を魔法具に入れて混ぜる作業を行う、カイネとバルタルはパンの生地作りを手伝いそれが終われば一度晴海は孤児院に向かおうかと外に出た所で、眼の前に神々の依頼が出現した。

神々からの依頼:《ロメンスギル国》王太子 カーライル·デイル·アストリガーの救出 

期限:王太子の生存中 受理にて善行500pt 達成にて1,000pt  受理しますか? 受理しませんか? ※但し受理の場合は千眼魔王の同行必須とする

畑に詠斗、大河、率、綴、晴海、チグリス、ナイル、ジラ、千眼が集合しこの件に関しての確認を行う。
「命の危機に瀕しているという事ですか…」
「ラージュは何も言ってなかったが…」
「神様達にラインしたら行けば分かるって…千眼さんを連れて行けって」
「千眼さん来ますか?蝶々の姿でも…」
率が心配そうに千眼の方を見る、魔王が城に行く…あまり良いとは言い難いだろう因縁がありそうな国だが千眼は表情を変えずに頷く。
「行こう…神が同行をと言うならば主達私を連れて行け…」
「分かった、ではこの依頼を受けよう」
『はい』
「皆さん…私も行ければ良いのですが…」
「気にしないでナイルさん、あ、今日孤児院の子供達にまたクッキーをあげたいから作っといてくれる?」
詠斗が申し訳なさそうに俯くナイルの手を取るナイルははいと微笑む、大河は今すぐに向かうとラージュにラインをするとすぐに返信が離宮の側で待つと返ってくる、ナイルから離れ転移を行い離宮に向かった…。
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