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第6部 移動は常にマイホームと共に 渡る世間は家さえあればなんとかなる

23 休憩

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「晴海くん」
「あ、大河さん、どうしたの?」
「紙魔法で紙を出してくれないか?《ガルディア》で絵が上手い子がいたからあげようと思う」
「え?そうたんだ。分かった!」
《ズィーガー商会》の一階の広い場所でゴーテン達が《ガルディア》の住人や、《トイタナ》の所謂主婦層や老人に縫い方を指導していた。
晴海も受けながら皆と作業していると、大河に呼ばれ紙を100枚程大きさ様々な真っ白い紙を生成して渡した。
「ありがとう」
「後で俺にも見せてね」
「ああ、もちろん。後で」
そう言って晴海に見送られ、再び《ガルディア》に戻った。

「お、戻ってきたか」
ランダ達が畑を耕しハル達がせっせと土を混ぜ、苗や種を植えていく、詠斗の肥料や土も混ぜて作る畑はもう昨日植えた種が芽を出しサウが水魔法で水を降らせていく、皆の畑だから皆で作っていこうと言うのが詠斗の考え、土や種や手伝いはするが基本は自分たちで行って貰うように伝えている。
「サウ、アシュー。来てくれ、絵と木彫りの礼だ。使ってくれ」
サウには日本の彫刻刀に小刀、粘土をショルダーバッグに入れて渡してやる。
アシューにも、鉛筆と色鉛筆に鉛筆削り消しゴム、水彩絵の具をショルダーバッグに入れて渡す、画板にスケッチブックと晴海の紙は半分をサウに残りはアシューに手渡した。
「無くなったらまた渡すから自由に使うと良い、水彩絵の具は色を塗りたい絵が完成したら使い方を教える」
「こ、こんな…道具見たこともない…」
「俺も…このナイフすごく小さい…どんな細かい物も彫れそう…」
「お前ら良いもん貰ったな!よし!今日は畑仕事は無しで、それ使ってなんか作れ!」
遣り取りをみていたランダが2人の肩をバンと叩いて豪快な笑みを浮かべる、アシューとサウは互いに顔を見合せ頷き合い元気に返事をして駆けていった。
「じゃ、飯までやるか!」
「ああ…」
大河が2人を見送り他の面子と畑仕事に勤しむ、どんな作品に出会えるか楽しみだった。

「みんな、お疲れ」
「お茶のんでって」
「アンタ達のお陰で作る量も増えたし、売り上げも上がってるありがとうね!」
「はい、《ガルディア》の人達は一休憩済んだら今日の給料受け取って下さい。午後の授業受ける人達はゆっくりしてて下さいね。戻る人は皆さんに給料渡した後で僕が送りますから」
ナットやナティ達が《ガルディア》の住人に礼を言う、皆恥ずかしそうに嬉しそうにしている。
綴から給料を受け取った幾人かは、外にいるベルンに牛乳を売って貰って飲んだりとのんびり過ごしている。
「明日はお店がお休みですから、皆さんもゆっくり休んで下さいね」
「その事なんだが綴さん…皆がパンやナティの作り方教えて欲しいみたいなんだ」
「《ガルディア》でもうりたいんだって!」
「明日休みだから、教えたいんだが構わないか?」
「ええ、もちろん!…そうだ少し待って下さい」
打ち解けて来ているようで喜ばしいと綴は早速大河に連絡して、貴族屋敷の厨房を使えるか確認する。
「あ、大河さん?お店の皆さんが…《ガルディア》の方達にパンやナティの作り方を明日教えたいそうで…はい…貴族屋敷の厨房を使えます?…分かりました、はい。明日希望者の皆さんと貴族屋敷の厨房を使って行いましょう。孤児院の子供達も一緒で構いませんか?」
「おう!もちろん!」
「楽しみね!」
「わーい」
「道具類はこちらで運びますから、明日は貴族屋敷前に集合して下さい」
『はーい』
《ガルディア》の人達も嬉しそうだ益々移動販売車の作成にも力が入る、綴は笑ってそんな光景を眺めた。

「明日は貴族屋敷でパンとナティなんかの教室か、ラウラスに声を掛けておくか、懐記くんにも聞いて…それ以外は明日は休みにするか。孤児院の子供達や先生に声を掛けるように、カイネとバルタルにラインして…グループラインで…」
畑仕事が終わり皆で炊き出しの肉串や魚串にスープ、小麦粉を水とミルクで溶いて干した果物を沢山入れて焼いた物を皆で食べながら大河は色々と明日の連絡を行う、率も炊き出しに加わり忙しく立ち回っていた。
ランダに明日の件を伝え希望者を募り、それ以外は明日は休みと伝えて貰った。
明日の食事は今日の給料で好きに食べるように、もしくはランダに渡した収納袋の食料を食べて貰う事にした。
「面白そうだな!俺もいくぞ!」
「大人数になりそうですね!」
率の言葉に大河は頷き大半は行くことになりそうなので、また歓迎会になりそうだと追加のメッセージを送った。

「なら、またズィーガーさん達も誘ってバーベキューにしませんか?」
詠斗は《エットナ》の工房の外でパンや肉串やら食べながら、晴海とスマホを見ていた。
《ガルディア》の住人達も工房の人達と食事をして打ち解けつつある、給料も支払い後はゆっくりして教室に行く住人と戻る住人に分かれる。
「なら、エッジさん達も誘う?」
「お、いいね!なら買い物してカークとエンフから肉沢山貰おう!」
「うん!」      
食事を終わりにして明日の希望者を募ればなんと全員、詠斗と晴海はこの後《クイナト》で色々買い込む事に決めた。

「明日はパンとナティの教室ね。まだこの世界のちゃんとした飯って食ってないし行くか」
「俺も行きます!」
「千ちゃんとナイルっちは?」
「…私は人が多い所は好まない…」
「私は人が怖いので…その代わりお菓子作ります。ドーナツとクッキー焼きますね」
昼食にカレーを4人で食べ、神々にも先にカレーを備えまだまだグツグツといくつもの大鍋でカレーを煮込む、カレーの匂いが広がり何事かとモギ達も見に来るのでミルクを貰ってカレーに入れている。
「俺も手伝うわ」
カレーはラウラスに任せドーナツの支度に取り掛かる、千眼が小豆で粒あんを作ったのでドーナツに入れてみる事にした。
「小豆…奥が深い…」
「何年も修行して和菓子職人と呼ばれるプロがいる位だからな。あんこの扱いは難しい」
「なるほど…」
「飯沢山炊いとかないとな、ドーナツ作りながらまだまだ炊くー」
『はい』 
さて、明日は何を用意しようかと懐記は考えながら米を研ぐ、研ぎ汁は畑に撒くようきゅうに頼んでドーナツの準備を行った。
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