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第8部 晴れた空の下手を繋いで…

第3幕 第31話 伝染病

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「ラジカっち来た」
「ラジ…」
「いったいなにが…」
「皆さん、ありがとうございます。話は手短にこの村もそうですが、この近辺の町なども伝染病で住民達が高熱で倒れています。身体の弱い子供や栄養が採れない大人、謂わば大半の住民が罹っています」
転移でやって来た懐記や詠斗達も絶句してしまう、孤児院の狭くて危険な家から子供と先生を出し外で敷物を敷いて寝かせている状態もそうだが、集まって来た村の住民達も皆咳をし顔が赤く、栄養が足りていない顔で地面に座り込んでいる。
「熱と栄養不足ね、詠斗浄化掛けてくれ。ここだと治療は出来ないな…」
「なら、船ではどうですか?島船なら」
「それはいい、ジラここにいる人たちを運ぶぞ」
「ああ、運んでくれ。今ナイルに…ナイル俺だ、悪いがテトラとか連れて薬草ダンジョン潜ってくれ、こまめに島船の方に運んでくれ」
「俺もいく…」
「チグリスは肉ダンジョン行ってくれ、食料が必要になる」
「俺は、島船の厨房で飯の支度するわ」
「俺も先行っとくわ、魚とかもいるな」
「じゃ、俺いくわー」
「私も同行しよう、海はこちらの領域だ」
「そ、好きにすれば~」
ジラが子供を看てすぐに判断する、詠斗達にこの周辺に浄化魔法を掛けて貰い指示を飛ばしていく、懐記とラウラスは島船に戻り《ガルディア》の住民達と食事の準備に取り掛かり、トラングとカトゥーシュカは魚ダンジョンに向かう事に決めてすぐさま行動に移した。
「グリーおりがみの子達とヒヨコ使ってこの辺の住民達全員連れて来てくれ」
『うみ』『うみゅ』『うみゆ』『うにぃ』『うみぅ』
「お前たちも手伝ってくれるのか、ありがとな」
大河と綴が船に今いる村人達に確認を取りを転移させ、他の住民達も熱に魘され意識が朦朧としているせいか大人しくしていた。
「他の村や町はどの辺りにあるんだ?そっちの様子も見に行こう」
「えと、僕案内出来ます!」
「そうか、教えてくれるか?俺は崇幸だ」
「ぼ、僕はシアです!」
「そうか、晴海君、率君、グリ君。来てくれ転移で…」
「なら、分かれていくつかの村を周ろうか。ラジカさんと僕で他の村の住民を船に運ぼう。みんなすぐに連絡を着くようにしておいて。グリ君、おりがみの子とヒヨコちゃん達借りるよ」
「うん…みんな出て」
「ラジカさんこの周辺の村とかは分かる?」
「はい」
「千歳さん、ラジカさん後で合流しよう」
「そうだね」
グリが頷きショルダーバッグからヒヨコとおりがみの子達を残らず出し、ラジカと千歳、崇幸達のチームに分かれ他の村や町の様子も見に行く事にした。

「んー周回したからボスいってまた最初からを数回ね、良い~?」
「ああ、構わない。行こう」
魚ダンジョンに到着し早速トラングとカトゥーシュカで進んでいく、ヒヨコとおりがみの子達も勝手にが付いて来ているのでさっさと周回して早く戻るのが目的だ。
「失礼を承知で尋ねるが」
「なら聞くなよと言いたいとこだけど何?」
「バウンドランドトーカーは水が苦手なのでは?」
「ああ、別に得意ではないけどへーき」
「そうか、万能型か…」
「それ好きじゃないな~」
「すまない…」
「来たってヒヨコちゃん達よろ~」
「凄まじいな…」
「アイテム回収はおりがみちゃんたち頼むわ~」
「……申し訳ないな」
「なら、戻れば転移札あるし。向こうの手伝いすれば?」
「いや、海のダンジョン是非ボスは仕留めさせて欲しい」
「好きにすれば~」
「ああ」
トラングは剣も出さず悠々と進む、カトゥーシュカは剣を構え警戒を怠らず進む。
「ラスボス終わったら1回飯ね」
「それは助かるな」
最初のボス部屋へと入る、カトゥーシュカの一撃で決着が着き、トラングは退屈そうに過ごしていた。

「そうか。9歳か」
「はい!」
「元気いっぱいですね可愛いー」
「村の確認出来たらご飯にしようよ」
「良いんですか!」
「沢山食べるんだぞ」
「懐記のご飯美味しい…」
シアに教えられて向かって転移した隣の村、おりがみの子達とヒヨコと共に向かえば、病に伏してほとんどの村人が弱っていた。
浄化を掛けて村人に話をし船に全員連れて行くといっても本の20名程度となる、何故かシアにヒヨコ達が群がりあちこちに止まって遊んでいる。
「シ、シアちゃん…」
「おばちゃん!大丈夫ですか!?」
「うちの子ともう1人が水を取りに…呼んで来てくれるかい…」
「川でもあるのか?」
「この村の奥に水を多く含んだ葉っぱがあるんです、でも子供たちでいかないようにって…」
「それは急ごう、晴海君と率君はみんなを連れて船へ。グリ君は俺と行こう」
「うん…行く」
「危ないですが気を付けて下さい」
「急いで村の人を連れて早く戻るよ!」
「ゆき…主達…私が行こう」
崇幸の左胸に留まっていた千眼の蝶がふわりと浮き千眼の姿になり、崇幸の傍らに立つ。
「わ、ひ、ひとが…」
「…………」
驚いて後ずさるシアを冷ややかな目で千眼が見つめ、崇幸、グローリー、千眼で子供達を探しに行くことにした。

「一旦こちらが用意した場所で治療を受けて貰えますか?」
「か、金とかは何にもないです」
「渡せる物もありません」
「それは…」
「受けなければ長く苦しむだけですし、これ以上の蔓延を防ぎたいだけだけなので治療を受けて貰えれば助かりますが、判断はお任せします」
村人たちは突然現れた身なりの良い男達と不思議な傀儡を操り、無償で治療を行うと言われれば警戒もするだろう、ラジカがひんやりとした声で淡々と告げていく。
「お、お願いします!子供が小さいので!ずっとずっと熱が下がらくて」
「では、治療を受けて貰えますか?」
「は、はい!」
小さい子供を抱えた母親が千歳の前で頭を下げるそれを皮切りに村人たちが次々と、治療を頼み千歳が詠斗達とティスやゴーシュも呼び船へと転移して貰った。
「次の村に行きましょうか」
「そうだね、で、誰に会いに来たのかな?」
「後で分かりますよ」
「えー気になるな」
「急ぎましょう、助けるんでしょう?」
「まあね」
千歳の転移で次の村へ向かう、何処か不機嫌そうなラジカも可愛いと思う千歳だった。

「おにぎりうま~」
「うまいな」
一方こちらは海ダンジョンのトラングとカトゥーシュカとヒヨコにおりがみの子達、ラスボスを倒し一息着いていた。
「中身はいったい何だ?とても美味だな」
「ん~懐記特製の唐揚げ~、ダンジョン肉に衣を付けてあげたやつ」
「そうか…ん!?こっちはなんだ!?口がすぼむ!?」
「あーそれ~懐記が異世界から持って来た梅干しってやつね~俺は食えるけど。他のと間違えたのかも~」
「そ、そうか…でもこの米という物に合うな」
「こっちの卵焼きも美味い」
「ああ…頂こう」
唐揚げ入りのおにぎりを食べた後にもう1つおにぎりを食べるとカトゥーシュカの口が小さくすぼまりお茶を一気に飲み干し、タッパに入った卵焼きも食べて周回に向かった。
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