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第8部 晴れた空の下手を繋いで…

STAGE.3-4 新たなる傭兵王

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「皆さん、おはようございます」
『おはようございます!』
ホテルと屋台の設置が終わり、祭りで働いてくれる希望者を住民達から募り大河とジラがホテル前に転移させた。
ズィーガー達が《エンディミー商会》と連携を取り、まとめて入街料を支払って貰っているので大腕を振って《ホウラク》を闊歩出来る。
「じゃ、ホテルのスタッフと屋台のスタッフに分かれてもらう、ホテルのスタッフは《ガルディア》のカジノタワーのスタッフに仕事を教わってもらう、システムは向こうと同じだからな」
「っても旦那ーあっちはほとんど使われてないじゃないですかー」
「ま、そう言わないでくれ。こっちはおりがみの子達もいるし!なんといってもメインはクラークラック達協力の回復温泉だ!忙しいって」
「ま、稼げればいんすよーで、1日いくらすか?」
「ロックス、君の宿は幾らだ?」
「素泊まりで2,500ログですよ」
「じゃ、それで」
『やすい!!』
「あー風呂もあるから3,000ログで」
「はあ、旦那が良ければいいすよー」
《ガルディア》の住民達が呆れながらガハハと笑い、さっそく住民達も連れて中に入った。
詠斗と率と仕入れを終わらせ綴と合流し、屋台の割り当てを行っていく、10日間あるのでローテーションで皆が色々な場所をこなせる様にメモ帳とボールペンを渡し説明を行う。
「わたあめの道具…使ってみて欲しい…」
「わ!すごい!」
「早くやりましょうよ!砂糖はカルメ焼き用にも沢山仕入れました!」
「そうだよーみんなこれ面白いから!」
ワイワイと円形の魔法具を眺める、中央の筒に砂糖を入れて円形の側面の魔石に魔力を込めれば砂糖が綿菓子状になっていくのを詠斗が割り箸でくるくる巻いていく。
『わあ!』
次第に大きく纏まっていく様に老若男女問わず目をキラキラさせて興奮していく、千眼が造った10台全部出して皆わいわいと楽しんでいた。

「カドルミー…」
「ああ…終わったな」
カドルミーと呼ばれた顔に傷がある男が戦場で勝利者が決まる瞬間を見届ける、少年が自分の背丈と変わらないぼろぼろの大剣を振りかざし敵の将軍の首を撥ね飛ばし一瞬の静寂の下、戦場は狂乱と歓喜と狂気に包まれ直ぐ様敗戦した方が撤退と言うなの散り散りになっていく。
「歴史は新しい英雄わ求めた結果か…行くぞ、長居は無用だ。ガキどもとアイツの所に帰りたいんでね。…アイツも連れて行くか…」
カドルミーは遠い眼をして将軍の首を落とした少年の静かな姿を見つめ、かつては傭兵現在は一介の冒険者として戦場を後にした…。

「お疲れ様でした、報酬の支払いと冒険者B級カドルミーさん伝言がありますので、こちらでお待ち下さい」
「伝言?分かった」
戦場から引き上げたカルドミー達が冒険者ギルドで報酬を受けようと受付によれば、事務的な口調の女性職員に待つよう言われ、連れて来た大剣の少年と顔馴染み達とこの後に一杯やろうかとぼろぼろのテーブルで座って待っていると、顔のかなり整った身なりは良いが愛想が全くない男がやってきた。
「あんたがカルドミーか俺は大河という、トーカンに頼まれ迎えに来た。今すぐここをたてるか?」
「ん?アイツらに何かあったのか?」
「来れば分かるが、そっちは連れか?」
「ああ」
「飯と酒と風呂位は出せる、アンタの仲間も連れて行けば良いか」
「何処にだ?」
「海」
『は?』
カルドミー達の周辺の景色が歪む、瞬きする程の速さで見慣れぬ場所にカルドミー一行を運んだ。
「カルドミー!」
「トーカン!お前達も」
「おじさん!」
「おじちゃん!」
「お、おいカルドミー!外!」
「外?はぁ!なんだこりゃ!」
馴染みの親友トーカンと孤児院の子供達が駆け寄ってくるのを受け止め、連れの冒険者が外をを指して見ればそこは海、カルドミー達は海にいた…そりゃ叫ぶしかないとばかりに叫んで驚いた。
「海と言ったがな」
「大河っちらしいわ」
懐記が厨房で悲鳴を聞いて笑う、ゴーレムの修復している住民達も心底カルドミーの悲鳴を聞いて同情したが、大剣を背負った少年だけは熱心にゴーレムを直すグローリーの方を見ていた…

「はー、成る程コイツら治療してくれてありがとうな」
「ああ、納得したなら風呂でも入って来たらいい」
「飯と酒の準備も出来てるし」
「案内は私が」
「私もー」
「俺もー」
「そ、そうか。シアの顔も見たいが風呂だな!イザラお前もこい」
「……あれなに?」
「なんだ?あれって」
イザラと呼ばれた少年が、ヒヨコやおりがみの子達に囲まれゴーレムを修繕しているグローリーを指す。
「人を指すな、あれというな。何って片目が金色の顔の綺麗な兄ちゃんだろ?話したかったら後にしな」
イザラの濃い赤黒い髪を撫でて促すが、グローリーの側にふらりと向かう。
「……?こんにちは」
「お前何?」
「…グローリー」
「………」
「………」
「なんだこいつら」
グローリーの黄昏の瞳と黄金の瞳がマジマジと、イザラの黎明色の複雑な色をした瞳を見つめた。
『ぐううぅー』
「お腹減ってる?」
「………」
「グリ、風呂一瞬に行って洗ってこい」
「いく?」
『ぐううぅー』
「身体綺麗にしてからご飯にした方がいい…?」
『ぐううぅー』
お腹の音で返事をするイザラにグローリーがひたすら首を傾げる、カルドミーが仕方ないとグローリーにも来て貰うよう頼む。
「それと、これを」
「これは?」
「収納ショルダーバッグ、時間停止機能付きだ。色は手元にこれしかないが」
大河から人数分ショルダーバッグを渡され戸惑いをみせる、イザナは受け取らないのでグローリーに渡しグローリーから受け取った。
「行こ…?」
『ぐううぅー』
「先に飯食わすか、懐記くん。グリ後で連れて来い」
「うん…」
「ほら、グリ飯の準備したから一緒に来い」
「うん…ご飯いこ」
『ぐううぅー』
懐記がホットドックとミルクを運んでくれたので、席に着かせるが食べないでお腹を鳴らしながら見ているだけだった。
「ん、神様ズからちょっと待って、んーどうかしたー?へーほーほーん。オッケ、グリそいつはグリと同じ魔人でソードブレイカーだって、どうやらグリを親認定したらしいわ、神様ズから育ててくれって」
「…………………………………………産んでない」
「崇幸っちとシアっちみたいなもんじゃん、親認定したら親の言う事しか聞かないってー。本当は別に親いなくても育つらしいけど」
「………………………………………親?おとうさん…………?」
グローリーには親の記憶なんかない、親と言われても分からないが今イザラに言うべき事は分かる。
「食べて…いただきますって言って…懐記のご飯美味しいから…」
「いただきます」
ものすごい勢いでホットドックを食べミルクをを飲む、追加を懐記が用意するがそれも瞬く間になくなりおにぎりとミルクを追加してやる。
「この身体のどこに入るんだか、ま、戦場にいたらしいし録な物食べてないだろうし」
懐記が気が済むまで食べさせてやろうと、食事を出してやった。

「凄まじい食欲だな」
「親を見つけて安心して存分に食ってるって所だな」
小休憩がてら風呂に行っていた、ニジェルガ達と共に大河と
カルドミー達も戻り、旺盛に食べ続けるイザラに流石のドラゴン達も唖然としている。
「で、めでたくグリパパが誕生したと」
「……………………」
「グローリーさん、お手伝いしますから」
「ああ、グローリーの子なら皇国の子だ。ゴーシュ殿も喜ぶ」
「なんと言ったら言いか分からないが頑張ってくれ」
まだ食べているイザラを見ながら、ライガルとニジェルガは嬉しそうだが、ラージュは同情的な視線を送った。
「食ったようだな」
「アイスだそか」
大河が食事を終えたイザラを見つめ懐記がアイスを出した所で、ジラやチグリス、晴海が帰って来た。
「ただいまー」
「あー疲れた風呂いくぞ晴海」
「肉…」
イザラがジラを見てニヤリと嗤う、舌舐めずりをし音もなく大剣のグリップに手を掛け、グローリーとティスの隙をついて現傭兵王に襲い掛かった…。
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