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第012部 空の旅は安心安全にみんなで会いにいこう

終戦のナギep.2

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「最前線は此処です…が魔人によりほぼ壊滅です」
「どれだけこちら側が残っているかは不明」
「この場所に魔人と互角以上、退けた少年がいると思われます」
「ああ、行こう」
広げられた地図、騎士や宰相達からの報告を聞きジラが確認しもう良いと謂わんばかりに出発しようとした所で謁見の間がけ破られる。
「どうしたんだ!?その姿!」
「何があった?」
「皆さん…」
「…アンタが王か…違うな王はもう既に殺されている」
フォンとチェカが血まみれの…自分た血では無い、返り血に染まり入ってくれば崇幸、ギーギス、トゥナーが驚く、チェカ達3名は地図を熱心に見ている王を眺め死んでいると告げ、周囲がシンと鎮まり返った。
「そうか、セバドンナ、俺達とお前と王以外全員外に出せ」
「分かりました…」
ジラの命令にセバドンナが頷き戸惑う兵士と宰相達をを全て出す、セバドンナは咳を零しながらもチェカ達が先に言うのを待った。

時は遡る…フォン達が丁度良いと締め上げた3人から話を聞く事にする、どうやら戦場で一旗揚げようと乗り込んでみた物の悲惨な状況と魔人の投入を知り最前線手前で逃げ出して来たらしい。
「ふうん、で、魔人と互角にやりあった子供の特徴とか知っていれば吐け」
「戦場は圧倒的に《ノゼバ国》は劣勢か?《ガンネ国》の兵はどうだ?」
「正直に答えた方が良い」
「ま、魔人のやつとやりあったガキの事はしらねぇ!本当だ!そいつは最前線にいるからな!魔人の顔を剣で斬りつけたって、それで向こうが退いたんだ」
「の《ノゼバ》は酷い!補給もまともにない!逃げ出した傭兵なんかもいる冒険者も撤退している、残っているのは奴隷やこの国の兵士と最前線にいるやつら位だ!何人残っているかも分からない!」
「《ガンネ》は余裕だ!物資も補給も潤沢で兵士も多い、魔人を入れなくても向こうが勝ってたって話しだ、それと……」
「待て、こいつらおかしいぞ!」
「これは!?不味い!フォン下がれ!
「転移を…間に合わないか…迂闊だった」
話している内に3人の様子が変わって行く、白目が飛び出すように口が大きく開き泡が零れ、気づいたフォンが後ずさり、チェカがマユラを抱き締め背に庇い、マユラは指を伸ばしてこの後の展開を憂いた…。

「とういう訳だ、悪趣味が過ぎる…」
「おもちゃで遊ぶには度が過ぎてやがる」
「フォンとチェカが砕けて飛び散った肉片を拾い燃やしたな、これが彼らの身体に埋め込まれていた」
事の顛末は爆破でバラバラになった3人の身体に札…呪符のような何かを描き込まれていた…それをマユラが外神に渡す、札はもう何も描かれていない発動と同時に消える仕組みなのだろう、血も付いていない。
「んで、この王様はお人形って事ね」
「セバドンナ、お前が王を殺したのか?」
「………はい」
「そうか…」
動きを止めた国王は人その物にしか見えない、懐記が国王を指しジラが冷えた声で問い分かり切った答えが返って来る、場に厭な静けさが広がった。
「セバドンナ君、国を守る為に殺したんですね?高潔でこの国を愛し王の盾、忠臣の貴方がそこまでに至る何かがあったのでしょう」
「トゥナー様、ええ、そうです、そうでした……ですが…王を害するなど…いえ…こうするしかなかった…その爆破魔法が組み込まれた物はとある魔法具屋がこの国に持ち込んだ物……陛下は甚くそれを気に入りました…安く、弱い民でも最高の兵器になると…」
トゥナーがセバドンナに語り掛ければ老いたセバドンナが項垂れ椅子に座り口を開く、顔色は悪く血を吐くような嗚咽を上げ、けれども話す口は止まらない。
「ほら、飲んでじーさん」
「ああ、私は…民や奴隷にそれを埋め込もうとした陛下を止めた、既に札を埋め込まれた者達もいる…魔法具屋がやり方を見せる為に、その札を埋め込まれた者には酷い事を…札を埋め込まれた者は最前線かその手前に行っている。報告によれば…上手く敵を巻き込んでいたと…逃げた者達の中にも札が埋められた者もいるだろう…そう、その札を発動させ一気に形勢はこちらが有利だった…魔人が投入されるまで《ガンネ国》を手に入れると王は喜んでいた…」
「起爆条件は?どれだけの人間に埋め込んだんだ?この人形はどうやって?」
「それは王と魔法具屋しかわからない、数も……王を殺したのは5日前だ…その人形はアンスローポモフィク…《無形》というシリーズです」
「身体に埋め込まれた魔石に姿を写したい奴の身体の一部を溶け込ませるとその姿思考になるという代物だ」
項垂れるセバドンナ、チェカがマジマジと《無形》を眺める、質感も皮膚の状態や瞳など至る所人のようにしか見えない。
「王が死にそれがアンスローポモフィクというのは分かっています…セバドンナさんがこの国を守りたいのも、爆破魔法を反対したのも…その魔法具屋は何処にいますか?このアンスローポモフィクの入手先は?」
「魔法具屋は不明だ、姿を消した。男か女かもどんな容姿かも覚えてはいない、その人形は随分前に……思い出せない」
「隠蔽魔法で覚えていないようです、フォンさん、マユラさん、チェカさん、この札を埋め込まれた人の鑑定や爆破にいつ気づきました?」
外神が質問し朧げな記憶に頭を振るセバドンナ、その辺の記憶を思い出そうとするとぼやけてしまう。
「爆破する直前、魔力の流れの異常だ」
「俺も、爆破前に首辺りに魔力が集まるのが分かった……それと…」
「何かを話そうとして発動したな」
「情報を漏洩しようとすると発動する仕組み…いや、違う…」
3人の話に何がきっかけで発動するのか思考する外神、色々と発動条件があるのかもしれない。
「このアンスローポモフィクの魔石を調べます……いや、駄目だ…神々と連絡を…」
「繋がらない、風早っちとナビっちにも」
「……ナビさん?妨害が…近くにいます、魔法具屋……」
「んじゃ、捕まえて爆破魔法の呪符埋め込んだ人聞くかー」
「素直に吐くとは思えんが」
「フォンちゃん達風呂入る?」
『入る』
「この後どうするか、さすがにこの状態で線所には行けないな」
「ゆき…この国おかしい…」
「千眼さん?」
神々とも風早ともナビとも連絡が付かない、懐記が家を出しシャワーに行くよう勧め、崇幸が手をこまねいていると左胸に止まっていた千眼が人型に戻る。
「千ちゃん、ずっと静かだったけどこの国の様子を見ていたの?」
「それもあるが…重い…動きが鈍く感じられる…」
「魔王が重く…?」
「千眼さん、爆破魔法が掛けられた人たちって分るか?」
「……発動寸前でしか分からない………まさか…」
『魔王?』
千眼と外神が気づく、魔王の動きを鈍くさせるようなそんな魔法、スキルを保有出来る存在は限られている神々の通信、外神達との固有スキルを遮断出来るそんな相手は同じ魔王しかしない。
「ひ、ぐ…」
「セバドンナ!?」
「ど、どうか…いく…さを…」
「結界を!」
そのタイミング、まるで状況を何処からか視ているかのようなそんな間合いでセバドンナの目が白目を向き、口から泡を吹きながらもジラに手を伸ばし戦を止めてくれと懇願した。
外神が結界を張り全員を護るが……、セバドンナは爆破され血肉を散らし吹き飛んでしまった。

「あー気づかれちゃったねーじゃこの国おしまいおしまい」
宙に浮び《ノゼバ国》を全体的に見下ろし無邪気に嗤う少年、パチパチと手を叩き空間を裂く。
「また後でねー兄様ー」
少年は心底楽しそうに手を城に向かって振り、空間の裂け目に消えて行った…。

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