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第7章 弟子と神器回収
禁止書物
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「悪いな魔狼…そろそろ終わらせてもらう」
咲良は氷剋を発動し、自身と邪神魔狼を閉じ込める形でドーム状に氷を発生させる。
それによって遠くで見ていた陸は中の様子が分からなくなった。
咲良は純度の高い透明な氷も作り出せるが、あえて不純物が混じった氷にした。
「俺とお前の特別ステージだ」
その中は氷のドームによって全面に影が落ちた。一見邪神魔狼に有利に思えるが咲良には考えがあった。
「いくぞ魔狼。飛翔 乱撃!」
邪神魔狼に無数の飛ぶ斬撃が迫り、影に潜ろうとするが何故か潜れない。仕方なく避けることに切り替えるが避けた所に肆ノ型 鬼哭が身体を貫いていった。
その後邪神魔狼は何度も影に潜ろうとしたり、影で攻撃しようとするが何も起こらない。
「不思議か?」
咲良が邪神魔狼に向けてニヤリと笑みを浮かべる。
「お前はもう影を操ることは出来ない。もうここは俺の…いや…村正のテリトリーだ」
言葉を理解しているかは定かではないが、咲良は邪神魔狼がイライラしているように感じ取った。
なぜ影を操ることが出来なくなったのか……それはこの氷のドーム内の全ての影を村正が支配したからだ。もうすでに邪神魔狼自身の影も咲良は操作することが出来る。
「影の支配権はもうお前にはない。終わりだ」
咲良は称号の導き手を発動する。
その瞬間、氷のドームは恐ろしい程の圧迫感に満たされた。
お忘れだろうが、導き手はステータスプレートによると次の黒竜を導く者で、王だけが持つ覇気を纏い、黒竜の如き威圧を放つ。
邪神魔狼は体験したことのない恐怖で混乱し動けなくなる。流石に災害級でも、浅くない傷を負い、能力も奪われた状態では咲良の威圧に抵抗する事は叶わなかった。
「お前のおかげで俺は更に強くなれた。礼を言う」
咲良はその場で村正を鞘に仕舞い、抜刀の構えを取る。
そして目を閉じて深く集中する。
「これは俺の十八番だ。眠れ………暁流抜刀術 破常」
ドシャッ
空間をも断ち切る無慈悲の斬撃によって邪神魔狼は真っ二つとなり地に落ちた。
それと同時に氷のドームが音もなく砕け散った。
「終わったか…」
咲良は邪神魔狼の死骸を細かく分けて拡張袋に入れると陸の元へ向かう。
「終わったのか?」
陸が戻って来た咲良に問う。
「あぁ、なんとかな」
「さっきの氷みたいなのはなんなんだ?」
「俺の魔法だ。ついさっき覚醒してな」
「覚醒したのか!?」
「運が良かったってことだな」
「いいなー。俺も早く覚醒しねーかな」
「そりゃ運だろ」
「だな。取り敢えずお疲れさん」
「おう。早く休みたいな…流石に疲れたわ」
2人はシュレイ山を下山するが道中ほとんど魔物と出会わなかった。群のボスである邪神魔狼を倒した咲良に襲いかかる度胸のある魔物はいないらしい。
「無事終えたようだな」
コーチンに戻り〈妖精の羽〉のギルドマスター、フィリスに依頼達成の報告をすると労いの言葉をもらった。
「まぁな、だがフェンリルじゃなかったぞ」
「ん?どういうことだ?」
「フィリスは古代の遺物を知ってるか?マリアは知っているみたいだが」
「まさか……確かに俺は知っているが…もしかして」
「あぁ…その魔物の名は邪神魔狼。かつて世界を混沌に陥れた邪神の置き土産と言うところか」
「やはりか…」
フィリスもどうやら邪神について多少知識はあるらしい。
「フィリス、なぜ邪神について知っている?」
邪神を滅したのはクロノスの前の黒竜だ。咲良はその黒竜から知識を受け継いだ張本人から直接話しを聞いたため知っている。
しかし現代では邪神の情報は得るのは極めて難しい。なぜなら邪神が暴れたのは何千年も前の話なので文献には残っていないだろう。あるとすれば閲覧禁止書物くらいだ。
「マリアとは昔一緒に冒険者として活動していたのは前に言ったな?」
「あぁ」
「その道中の話だ。俺たちは功績を認められ王城にある閲覧禁止書物を見る機会があってな。そこで邪神や古代の遺物について知ったんだ」
「眉唾物だとは思わなかったのか?」
閲覧禁止書物に載っているからといって何千年も前の歴史を本当であると信じることは難しい。
「俺たちは身を持って体験していたのさ。西のガロン大陸で活動していた時期に俺たちは見たこともない恐ろしい魔物に遭遇してな。逃げる事しかできなかった」
「その魔物が邪神系統の魔物だったという事か」
「そうだ。俺たちはあの頃調子に乗っていて自分たちの力を信じて疑わなかった。その伸びた鼻を木っ端みじんに折られたわけだ」
「あの、なんでその魔物が邪神系統だと分かったんですか?」
陸がもっともな疑問をフィリスに投げかける。
「初めは知らなかったさ。だが俺たちはどうしてもその正体を突き止めたかった。だから色々調べたが一切情報は得られなかった。そして最後の手段として功績を上げれば見られる閲覧禁止書物に手を出した」
「なるほどな」
「その本によると俺たちが遭遇したのは邪神魔蛇。階級でいえば災害級の上位だろうな。その蛇の実力を目の当たりにした俺たちは邪神がいたという歴史が真実であると確信した」
「まぁ遭遇していたのなら信じるしかないな」
「そうだな。もしあのような化け物がまだ他にいたとすれば人類は滅びる。そう考えた俺たちはギルドマスターとなって教育に力を入れることにした。個では勝てなくても数ならなんとかなるという淡い希望にすがってな」
マリアやフィリスがギルドマスターとなった経緯は思っていた以上に壮大な計画の様だった。
「なら次は俺からの質問だ。なぜ咲良は邪神について知っている?閲覧禁止書物は見られないはずだ」
フィリスがこちらの表情の変化を見逃さないとばかりに厳しい視線を咲良に向ける。
「フィリスは邪神がどうやって滅んだか知っているか?」
「少しなら。古の竜が多種族を導き邪を滅すという文章が本に載っていたからな」
「そうか…なら少しだけ教えておこう。俺はその多種族を導いたと言う竜を知っている」
「なに!?」
フィリスは咲良の言葉に人生で一番ではないかと言えるほど衝撃を受けた。
「あり得ない!何千年も前だぞ!」
「その竜はまだ生きている。直接会ったからな」
「まさか……ほ、本当なのか?」
「信じるかどうかは好きにすればいい」
「ど、どこに…」
フィリスはしきりに場所を聞いてくる。会いにでも行きたいのだろうか。とはいっても今は咲良の中で眠っているので会おうにも会えないのだが…
「これ以上教えるつもりはない…今はな」
「なぜ、なぜ俺に話した?」
「別に深い理由はない。閲覧禁止書物の内容は他言していい代物じゃないはずだ。それをあんたは話してくれた。そのお礼とでも思ってくれ」
「いや、俺の方こそ礼を言う。いくら冒険者の数を増やしても圧倒的な力には対抗できない。その竜がいるなら一先ず安心できる。貴重な情報だ…感謝する」
フェリスはそう言いながら咲良に頭を下げる。余程邪神魔蛇に対する恐怖心があったようで、クロノスが居たという情報は喉から手が出るほど欲しい情報だったのだろう。
「それで、話を戻すが依頼は達成で良いのか?イレギュラーだが」
「それは達成で問題ない。だがその邪神魔狼の素材があるなら少し提供してくれ。こちらでも調べたい」
「それは構わない」
咲良は拡張袋から邪神魔狼の肉や毛を少しずつ出してフィリスに手渡す。
「これが……持つだけで生気を吸い取られるような感じがする」
「俺は見た瞬間ちびりそうになりましたよ」
陸が苦笑いを浮かべて呟く。
「そういや陸。お前はしっかり働けたのか?」
「まぁなんとか、咲良にかなり鍛えられましたから」
「陸はよくやってくれた。奴に一撃食らわせていたしな」
「おいおい、まじか」
「いきなり爪で切り裂かれたときは流石に生きた心地がしませんでしたけど」
「お前……よく生きてたな」
フィリスが憐みのような視線を陸に向ける。
「今の陸ならすぐにA級に上がれるだろう」
咲良は陸に足りないのは経験だけで、単純な実力ではA級はあると踏んでいる。
「ほぅ…そんなに強くなったのか」
「どうなんですかね…咲良の戦いを見ると自分なんてちっぽけな存在だと思い知らされましたから」
「こいつは例外にしとけ。邪神系統の魔物を一人で倒しちまう奴だ。どっちが化け物か分からねぇな」
「人を化け物扱いするな。俺はれっきとした人間だ」
「どんな修行すればそこまで強くなれるんだ?」
フィリスは興味本位で咲良に尋ねる。
「とにかく頑張った。まぁ強いて言うなら俺が習得している暁流という流派のお陰ともいえるな」
「俺もそれ今教わってるところなんですよ」
「暁流?似た名前なら聞いたことあるな」
なんとフィリスは暁流に関する情報を持っていた。その情報網は流石ギルドマスターというべきだろう。
暁流の正当な継承者はクロノスと咲良だけだ。他にいるとすれば継承者になれなかった者が弟子を取り、受け継がれていった偽物の暁流だ。咲良はもしその流派が居るならばぜひ会いたいと思っていた。
「どこで聞いた?」
「どこだっけな…そうだ!南の国のどこかに暁月流という流派の道場があったはずだ」
「暁月流か…確かに無関連ではなさそうだ。南の国に行く楽しみが増えたな」
「俺の記憶が正しければだがな」
「別に間違っていても構わないさ。それも旅の醍醐味だろ?」
「間違いねぇな」
咲良とフィリスは共にフッと口角を上げる。
「ところで…これからどうするんだ?すぐに南の国にいくのか?」
フィリスが咲良の今後の予定を尋ねる。
「いや、まだ少しコーチンに滞在するつもりだ。やりたいことがあるからな」
「そうか、お前との会話は面白い。いつでも来るといい」
「時間があったらな」
咲良と陸はフィリスと別れギルドを後にする。
咲良は氷剋を発動し、自身と邪神魔狼を閉じ込める形でドーム状に氷を発生させる。
それによって遠くで見ていた陸は中の様子が分からなくなった。
咲良は純度の高い透明な氷も作り出せるが、あえて不純物が混じった氷にした。
「俺とお前の特別ステージだ」
その中は氷のドームによって全面に影が落ちた。一見邪神魔狼に有利に思えるが咲良には考えがあった。
「いくぞ魔狼。飛翔 乱撃!」
邪神魔狼に無数の飛ぶ斬撃が迫り、影に潜ろうとするが何故か潜れない。仕方なく避けることに切り替えるが避けた所に肆ノ型 鬼哭が身体を貫いていった。
その後邪神魔狼は何度も影に潜ろうとしたり、影で攻撃しようとするが何も起こらない。
「不思議か?」
咲良が邪神魔狼に向けてニヤリと笑みを浮かべる。
「お前はもう影を操ることは出来ない。もうここは俺の…いや…村正のテリトリーだ」
言葉を理解しているかは定かではないが、咲良は邪神魔狼がイライラしているように感じ取った。
なぜ影を操ることが出来なくなったのか……それはこの氷のドーム内の全ての影を村正が支配したからだ。もうすでに邪神魔狼自身の影も咲良は操作することが出来る。
「影の支配権はもうお前にはない。終わりだ」
咲良は称号の導き手を発動する。
その瞬間、氷のドームは恐ろしい程の圧迫感に満たされた。
お忘れだろうが、導き手はステータスプレートによると次の黒竜を導く者で、王だけが持つ覇気を纏い、黒竜の如き威圧を放つ。
邪神魔狼は体験したことのない恐怖で混乱し動けなくなる。流石に災害級でも、浅くない傷を負い、能力も奪われた状態では咲良の威圧に抵抗する事は叶わなかった。
「お前のおかげで俺は更に強くなれた。礼を言う」
咲良はその場で村正を鞘に仕舞い、抜刀の構えを取る。
そして目を閉じて深く集中する。
「これは俺の十八番だ。眠れ………暁流抜刀術 破常」
ドシャッ
空間をも断ち切る無慈悲の斬撃によって邪神魔狼は真っ二つとなり地に落ちた。
それと同時に氷のドームが音もなく砕け散った。
「終わったか…」
咲良は邪神魔狼の死骸を細かく分けて拡張袋に入れると陸の元へ向かう。
「終わったのか?」
陸が戻って来た咲良に問う。
「あぁ、なんとかな」
「さっきの氷みたいなのはなんなんだ?」
「俺の魔法だ。ついさっき覚醒してな」
「覚醒したのか!?」
「運が良かったってことだな」
「いいなー。俺も早く覚醒しねーかな」
「そりゃ運だろ」
「だな。取り敢えずお疲れさん」
「おう。早く休みたいな…流石に疲れたわ」
2人はシュレイ山を下山するが道中ほとんど魔物と出会わなかった。群のボスである邪神魔狼を倒した咲良に襲いかかる度胸のある魔物はいないらしい。
「無事終えたようだな」
コーチンに戻り〈妖精の羽〉のギルドマスター、フィリスに依頼達成の報告をすると労いの言葉をもらった。
「まぁな、だがフェンリルじゃなかったぞ」
「ん?どういうことだ?」
「フィリスは古代の遺物を知ってるか?マリアは知っているみたいだが」
「まさか……確かに俺は知っているが…もしかして」
「あぁ…その魔物の名は邪神魔狼。かつて世界を混沌に陥れた邪神の置き土産と言うところか」
「やはりか…」
フィリスもどうやら邪神について多少知識はあるらしい。
「フィリス、なぜ邪神について知っている?」
邪神を滅したのはクロノスの前の黒竜だ。咲良はその黒竜から知識を受け継いだ張本人から直接話しを聞いたため知っている。
しかし現代では邪神の情報は得るのは極めて難しい。なぜなら邪神が暴れたのは何千年も前の話なので文献には残っていないだろう。あるとすれば閲覧禁止書物くらいだ。
「マリアとは昔一緒に冒険者として活動していたのは前に言ったな?」
「あぁ」
「その道中の話だ。俺たちは功績を認められ王城にある閲覧禁止書物を見る機会があってな。そこで邪神や古代の遺物について知ったんだ」
「眉唾物だとは思わなかったのか?」
閲覧禁止書物に載っているからといって何千年も前の歴史を本当であると信じることは難しい。
「俺たちは身を持って体験していたのさ。西のガロン大陸で活動していた時期に俺たちは見たこともない恐ろしい魔物に遭遇してな。逃げる事しかできなかった」
「その魔物が邪神系統の魔物だったという事か」
「そうだ。俺たちはあの頃調子に乗っていて自分たちの力を信じて疑わなかった。その伸びた鼻を木っ端みじんに折られたわけだ」
「あの、なんでその魔物が邪神系統だと分かったんですか?」
陸がもっともな疑問をフィリスに投げかける。
「初めは知らなかったさ。だが俺たちはどうしてもその正体を突き止めたかった。だから色々調べたが一切情報は得られなかった。そして最後の手段として功績を上げれば見られる閲覧禁止書物に手を出した」
「なるほどな」
「その本によると俺たちが遭遇したのは邪神魔蛇。階級でいえば災害級の上位だろうな。その蛇の実力を目の当たりにした俺たちは邪神がいたという歴史が真実であると確信した」
「まぁ遭遇していたのなら信じるしかないな」
「そうだな。もしあのような化け物がまだ他にいたとすれば人類は滅びる。そう考えた俺たちはギルドマスターとなって教育に力を入れることにした。個では勝てなくても数ならなんとかなるという淡い希望にすがってな」
マリアやフィリスがギルドマスターとなった経緯は思っていた以上に壮大な計画の様だった。
「なら次は俺からの質問だ。なぜ咲良は邪神について知っている?閲覧禁止書物は見られないはずだ」
フィリスがこちらの表情の変化を見逃さないとばかりに厳しい視線を咲良に向ける。
「フィリスは邪神がどうやって滅んだか知っているか?」
「少しなら。古の竜が多種族を導き邪を滅すという文章が本に載っていたからな」
「そうか…なら少しだけ教えておこう。俺はその多種族を導いたと言う竜を知っている」
「なに!?」
フィリスは咲良の言葉に人生で一番ではないかと言えるほど衝撃を受けた。
「あり得ない!何千年も前だぞ!」
「その竜はまだ生きている。直接会ったからな」
「まさか……ほ、本当なのか?」
「信じるかどうかは好きにすればいい」
「ど、どこに…」
フィリスはしきりに場所を聞いてくる。会いにでも行きたいのだろうか。とはいっても今は咲良の中で眠っているので会おうにも会えないのだが…
「これ以上教えるつもりはない…今はな」
「なぜ、なぜ俺に話した?」
「別に深い理由はない。閲覧禁止書物の内容は他言していい代物じゃないはずだ。それをあんたは話してくれた。そのお礼とでも思ってくれ」
「いや、俺の方こそ礼を言う。いくら冒険者の数を増やしても圧倒的な力には対抗できない。その竜がいるなら一先ず安心できる。貴重な情報だ…感謝する」
フェリスはそう言いながら咲良に頭を下げる。余程邪神魔蛇に対する恐怖心があったようで、クロノスが居たという情報は喉から手が出るほど欲しい情報だったのだろう。
「それで、話を戻すが依頼は達成で良いのか?イレギュラーだが」
「それは達成で問題ない。だがその邪神魔狼の素材があるなら少し提供してくれ。こちらでも調べたい」
「それは構わない」
咲良は拡張袋から邪神魔狼の肉や毛を少しずつ出してフィリスに手渡す。
「これが……持つだけで生気を吸い取られるような感じがする」
「俺は見た瞬間ちびりそうになりましたよ」
陸が苦笑いを浮かべて呟く。
「そういや陸。お前はしっかり働けたのか?」
「まぁなんとか、咲良にかなり鍛えられましたから」
「陸はよくやってくれた。奴に一撃食らわせていたしな」
「おいおい、まじか」
「いきなり爪で切り裂かれたときは流石に生きた心地がしませんでしたけど」
「お前……よく生きてたな」
フィリスが憐みのような視線を陸に向ける。
「今の陸ならすぐにA級に上がれるだろう」
咲良は陸に足りないのは経験だけで、単純な実力ではA級はあると踏んでいる。
「ほぅ…そんなに強くなったのか」
「どうなんですかね…咲良の戦いを見ると自分なんてちっぽけな存在だと思い知らされましたから」
「こいつは例外にしとけ。邪神系統の魔物を一人で倒しちまう奴だ。どっちが化け物か分からねぇな」
「人を化け物扱いするな。俺はれっきとした人間だ」
「どんな修行すればそこまで強くなれるんだ?」
フィリスは興味本位で咲良に尋ねる。
「とにかく頑張った。まぁ強いて言うなら俺が習得している暁流という流派のお陰ともいえるな」
「俺もそれ今教わってるところなんですよ」
「暁流?似た名前なら聞いたことあるな」
なんとフィリスは暁流に関する情報を持っていた。その情報網は流石ギルドマスターというべきだろう。
暁流の正当な継承者はクロノスと咲良だけだ。他にいるとすれば継承者になれなかった者が弟子を取り、受け継がれていった偽物の暁流だ。咲良はもしその流派が居るならばぜひ会いたいと思っていた。
「どこで聞いた?」
「どこだっけな…そうだ!南の国のどこかに暁月流という流派の道場があったはずだ」
「暁月流か…確かに無関連ではなさそうだ。南の国に行く楽しみが増えたな」
「俺の記憶が正しければだがな」
「別に間違っていても構わないさ。それも旅の醍醐味だろ?」
「間違いねぇな」
咲良とフィリスは共にフッと口角を上げる。
「ところで…これからどうするんだ?すぐに南の国にいくのか?」
フィリスが咲良の今後の予定を尋ねる。
「いや、まだ少しコーチンに滞在するつもりだ。やりたいことがあるからな」
「そうか、お前との会話は面白い。いつでも来るといい」
「時間があったらな」
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