44 / 163
第6章 新天地と冒険者
初ノ依頼
しおりを挟む
角部屋にて…
「…ふぅ…騒がしい夫婦だな」
そう思いながらも見ていて微笑ましくなった。
「さて…寝る時間だが全く眠くねぇな。そういやギルドは何時でも空いてたな。適当に依頼でもしてみるか」
部屋の窓から物音を一切立てずに飛び降りてギルドへ向かう。
「こんな夜更けに依頼ですか?」
受付に行くと登録した時とは違う受付嬢がいた。
「寝付けなくて」
「そうですか。ではステータスプレートをお渡しください……咲良さんは今回が初めての依頼のようですね」
「えぇ…どんな依頼がありますか?」
「この時間でのG級依頼は薬草採取しかないのですが、夜は魔物に会う確率が高くなるので少し危険でして」
「ではそれで」
「本当に宜しいのですか?」
受付嬢は咲良の実力を知らない。
駆け出しの冒険者が運悪く魔物と遭遇して命を落とす事は珍しくないため、受付嬢はしつこく忠告する。
「構いません」
「……承知いたしました…では受注金として銅貨1枚頂きます」
咲良はサラに炎界を譲って得た金貨で支払う。
「確かに…ではくれぐれも魔物にはお気を付け下さい」
ギルドを出るまで受付嬢の心配そうな視線をひしひしと感じた。
「おう兄ちゃん、依頼かい?」
門に着くと咲良の身元審査をした門番が声をかけてきた。
「えぇ、薬草採取です」
「そうかい…気をつけてな」
「ありがとうございます」
やっぱり良い奴だと思ったが口には出さない。
しばらく歩いて薬草を探すために森に入る。
実際の所、強者の墓場、つまり世界樹周辺の森で薬草はたんまりと採取しているため探す必要はない。しかし、世界樹周辺の森にある薬草はかなり効果が高いため、ただの薬草採取の依頼で消費するのはもったいない。
「少し奥まで行ってみるか」
魔物の気配は全くない。
依頼を受けている感が全くなく、面白味に欠ける。
途中薬草を見つけたので依頼分を採取する。
さらに奥まで行くとようやく魔物と遭遇した。
ゴブリンが5体だ。
ゴブリンは咲良を見つけると奇声をあげながら一斉に襲いかかってきた。
難なく避けると一番前のゴブリンに向かって魔力の塊を放つ。
ドゴッ
それだけでゴブリンは吹き飛び絶命する。
「弱いな。いや、あの森にいたゴブリンが強過ぎるだけか…」
世界樹の森のゴブリンはヘルゴブリンという名称でC級だ。そもそもアスガルドに来たばかりの咲良が倒せた方が異常である。
その後同じ方法で残りのゴブリンも討伐した。
「さて…討伐証明部位は耳だったな」
ゴブリンの死体の耳をナイフで切り取る。
討伐証明部位とは魔物を倒した証であり、ギルドが買い取ってくれたり、報酬の上乗せがあったりする。
もちろんそれ以外の部位も素材屋と呼ばれる専門店で買い取ってもらえるが咲良は鍛治師なので基本的に売ることはない。
ゴブリンの耳が討伐証明部位だと知っているのは、王都に向かう馬車でカゼルが持っていた魔物図鑑を読み、そこに記載されていた魔物の討伐証明部位を全て覚えていたからだ。
結局魔物と遭遇したのはあの一度きりで、咲良にはかなり物足りなかった。
魔物との遭遇率が低いからこそG級の依頼なのだろうが。
「帰るか…」
薬草もあるし、あとは帰れば依頼達成だ。
「早かったな」
王都に戻るとあの門番が話しかけてきた。
「簡単な依頼でしたから」
「そうか。ま、無事で何よりだ」
「所で…あなたの名前を聞いてもいいですか?何となくですが仲良くなれそうな気がして」
「奇遇だな、俺もだ」
地球にいた頃の咲良は、自分から名前を聞く事はほとんどなかった。アスガルドに来て、良くも悪くも変わってきているという事だろうか…
「トマスだ。よろしくな…後、敬語はいらんぞ」
「分かったトマス。俺は咲良だ」
「もう知ってるよ。覚えていたからな。今度酒でも飲もうや。いつも夜はギルド近くの店で飲んでるからよ…あいにく今日は夜勤だがな」
「わかった。また顔出すよ」
「あぁ、待ってるぜ」
トマスと別れギルドへと戻る。
「あら咲良さん、どうかなさいましたか?」
「依頼達成です」
「もうですか!?」
驚く受付嬢を受け流し、薬草を渡すついでにゴブリン5体分の耳も渡す。
「!!!……遭遇するかもしれないとは思いましたがまさか倒すとは…しかも5体も…」
「ん?何かおかしいですか?」
「え…あ…いや、基本的にG級ではゴブリンを倒すことは難しいんですが…」
「魔物を倒すのは初めてじゃないので」
「初めてじゃない?…それにしてもこの速さ、本当に倒したんですか?」
受付嬢は信じられないのか疑いの目を向ける。
「疑いたきゃ勝手にしろ」
少し不快に思った咲良は敬語をやめて、めんどくさそうにする。
「あ…いえ…失礼しました……ではこちらが今回の報酬とゴブリン5体分の追加報酬になります」
受付嬢から銅貨8枚を受け取ると帰路に着いた。
「…ふぅ…騒がしい夫婦だな」
そう思いながらも見ていて微笑ましくなった。
「さて…寝る時間だが全く眠くねぇな。そういやギルドは何時でも空いてたな。適当に依頼でもしてみるか」
部屋の窓から物音を一切立てずに飛び降りてギルドへ向かう。
「こんな夜更けに依頼ですか?」
受付に行くと登録した時とは違う受付嬢がいた。
「寝付けなくて」
「そうですか。ではステータスプレートをお渡しください……咲良さんは今回が初めての依頼のようですね」
「えぇ…どんな依頼がありますか?」
「この時間でのG級依頼は薬草採取しかないのですが、夜は魔物に会う確率が高くなるので少し危険でして」
「ではそれで」
「本当に宜しいのですか?」
受付嬢は咲良の実力を知らない。
駆け出しの冒険者が運悪く魔物と遭遇して命を落とす事は珍しくないため、受付嬢はしつこく忠告する。
「構いません」
「……承知いたしました…では受注金として銅貨1枚頂きます」
咲良はサラに炎界を譲って得た金貨で支払う。
「確かに…ではくれぐれも魔物にはお気を付け下さい」
ギルドを出るまで受付嬢の心配そうな視線をひしひしと感じた。
「おう兄ちゃん、依頼かい?」
門に着くと咲良の身元審査をした門番が声をかけてきた。
「えぇ、薬草採取です」
「そうかい…気をつけてな」
「ありがとうございます」
やっぱり良い奴だと思ったが口には出さない。
しばらく歩いて薬草を探すために森に入る。
実際の所、強者の墓場、つまり世界樹周辺の森で薬草はたんまりと採取しているため探す必要はない。しかし、世界樹周辺の森にある薬草はかなり効果が高いため、ただの薬草採取の依頼で消費するのはもったいない。
「少し奥まで行ってみるか」
魔物の気配は全くない。
依頼を受けている感が全くなく、面白味に欠ける。
途中薬草を見つけたので依頼分を採取する。
さらに奥まで行くとようやく魔物と遭遇した。
ゴブリンが5体だ。
ゴブリンは咲良を見つけると奇声をあげながら一斉に襲いかかってきた。
難なく避けると一番前のゴブリンに向かって魔力の塊を放つ。
ドゴッ
それだけでゴブリンは吹き飛び絶命する。
「弱いな。いや、あの森にいたゴブリンが強過ぎるだけか…」
世界樹の森のゴブリンはヘルゴブリンという名称でC級だ。そもそもアスガルドに来たばかりの咲良が倒せた方が異常である。
その後同じ方法で残りのゴブリンも討伐した。
「さて…討伐証明部位は耳だったな」
ゴブリンの死体の耳をナイフで切り取る。
討伐証明部位とは魔物を倒した証であり、ギルドが買い取ってくれたり、報酬の上乗せがあったりする。
もちろんそれ以外の部位も素材屋と呼ばれる専門店で買い取ってもらえるが咲良は鍛治師なので基本的に売ることはない。
ゴブリンの耳が討伐証明部位だと知っているのは、王都に向かう馬車でカゼルが持っていた魔物図鑑を読み、そこに記載されていた魔物の討伐証明部位を全て覚えていたからだ。
結局魔物と遭遇したのはあの一度きりで、咲良にはかなり物足りなかった。
魔物との遭遇率が低いからこそG級の依頼なのだろうが。
「帰るか…」
薬草もあるし、あとは帰れば依頼達成だ。
「早かったな」
王都に戻るとあの門番が話しかけてきた。
「簡単な依頼でしたから」
「そうか。ま、無事で何よりだ」
「所で…あなたの名前を聞いてもいいですか?何となくですが仲良くなれそうな気がして」
「奇遇だな、俺もだ」
地球にいた頃の咲良は、自分から名前を聞く事はほとんどなかった。アスガルドに来て、良くも悪くも変わってきているという事だろうか…
「トマスだ。よろしくな…後、敬語はいらんぞ」
「分かったトマス。俺は咲良だ」
「もう知ってるよ。覚えていたからな。今度酒でも飲もうや。いつも夜はギルド近くの店で飲んでるからよ…あいにく今日は夜勤だがな」
「わかった。また顔出すよ」
「あぁ、待ってるぜ」
トマスと別れギルドへと戻る。
「あら咲良さん、どうかなさいましたか?」
「依頼達成です」
「もうですか!?」
驚く受付嬢を受け流し、薬草を渡すついでにゴブリン5体分の耳も渡す。
「!!!……遭遇するかもしれないとは思いましたがまさか倒すとは…しかも5体も…」
「ん?何かおかしいですか?」
「え…あ…いや、基本的にG級ではゴブリンを倒すことは難しいんですが…」
「魔物を倒すのは初めてじゃないので」
「初めてじゃない?…それにしてもこの速さ、本当に倒したんですか?」
受付嬢は信じられないのか疑いの目を向ける。
「疑いたきゃ勝手にしろ」
少し不快に思った咲良は敬語をやめて、めんどくさそうにする。
「あ…いえ…失礼しました……ではこちらが今回の報酬とゴブリン5体分の追加報酬になります」
受付嬢から銅貨8枚を受け取ると帰路に着いた。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。
【あらすじ】
異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。
それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。
家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。
十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。
だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。
最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。
この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。
そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。
そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。
旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。
☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。
☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。
さようなら竜生、こんにちは人生
永島ひろあき
ファンタジー
最強最古の竜が、あまりにも長く生き過ぎた為に生きる事に飽き、自分を討伐しに来た勇者たちに討たれて死んだ。
竜はそのまま冥府で永劫の眠りにつくはずであったが、気づいた時、人間の赤子へと生まれ変わっていた。
竜から人間に生まれ変わり、生きる事への活力を取り戻した竜は、人間として生きてゆくことを選ぶ。
辺境の農民の子供として生を受けた竜は、魂の有する莫大な力を隠して生きてきたが、のちにラミアの少女、黒薔薇の妖精との出会いを経て魔法の力を見いだされて魔法学院へと入学する。
かつて竜であったその人間は、魔法学院で過ごす日々の中、美しく強い学友達やかつての友である大地母神や吸血鬼の女王、龍の女皇達との出会いを経て生きる事の喜びと幸福を知ってゆく。
※お陰様をもちまして2015年3月に書籍化いたしました。書籍化該当箇所はダイジェストと差し替えております。
このダイジェスト化は書籍の出版をしてくださっているアルファポリスさんとの契約に基づくものです。ご容赦のほど、よろしくお願い申し上げます。
※2016年9月より、ハーメルン様でも合わせて投稿させていただいております。
※2019年10月28日、完結いたしました。ありがとうございました!
クラスまるごと異世界転移
八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。
ソレは突然訪れた。
『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』
そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。
…そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。
どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。
…大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても…
そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる