神の盤上〜異世界漫遊〜

バン

文字の大きさ
72 / 163
第7章 弟子と神器回収

信頼ノ値

しおりを挟む
コーチンまで後1日の所まで来た一同は最後の野営をとっている。


「おいルーグ…少し話がある」
「咲良?…分かった」

夕食を済まし談笑している秀樹たちから距離を取り、声が聞こえない所まで来る。

「どうしたんだ?」
「商売の事で提案がある。俺は鍛治師の流桜として武具や魔道具マジックアイテムを作ってる」
「そりゃすげぇ。でもそれが何なんだ?」
「さらに言えば俺は魔法医師でもあるから薬も作れる。つまりだ…武具は無理だが魔道具マジックアイテムと薬を流桜製としてルーグの店に卸してやってもいい」
「いいのか!?」

急な提案にルーグは驚いて大声を上げる。

「うるさい…あまり聞かれたくないからここで話をしてるんだ」
「す…済まない…でもどうして?」
「ここから話すのはお前が信用に値すると判断したからだ。カゼルとも打ち解けたようだしな。だからこれから話す事は他言無用だ…無理ならこの話は無しだ」
「……わかった…」

ルーグはぐっと身体に力を入れることで意思表示する。

「まず俺は異世界人だ」
「そうだったのか!?」
「黙って聞けっての」
「す…すまん」

咲良はそういうが驚くなと言うのは無理がある。

「でだ…ルーグは神器を知ってるか?」
「じんぎ?知らねぇな。何だそれは?」
「簡単に言うととんでも性能の武具だ」
「とんでも性能…ん?それって古代遺物アーティファクトじゃないのか?」

ルーグが咲良の知らない単語を口にする。

古代遺物アーティファクト?近い言葉なら聞いたことあるな」

王都アムルの〈明けの明星〉ギルドマスターであるマリアにマラ荒野での事を報告した時に、邪神魔像の事を古代の遺物と言っていた。もしかすると同じなのだろうか。
邪神魔像も邪神にアダマンタイトで作られた武器とも言えなくはない。

「それをどこで知ったんだ?」
「俺の村の亡くなった村長だよ。昔は考古学者だったらしくてな。遺跡で稀に発見する魔武器マジックウェポン魔道具マジックアイテムの中で突出した能力を持つものを総じて古代遺物アーティファクトと呼んだらしい」
「なるほど。俺の言う神器とは魔武器マジックウェポン古代遺物アーティファクトの事かもしれないな。なら見たことはあるのか?」
「いやそれはない。話に聞いただけだ」

流石にルーグも神器は見た事はないらしい。そう簡単にお目にかかれるほど数もないから当然と言えば当然だ。
しかし、思わぬ収穫を得れたのは確かだ。神器という名称ではなく、古代遺物アーティファクトという名称で後世に伝えられているのかもしれない。知らなければ見落としていた可能性もある。

「そうか。結論から先に言うと俺は神器を集めてる」
「なんでだ?コレクターか?」
「いや違う。神器は正しく扱わないと暴走してしまうんだ。だから俺は神器を集め、正しく使える者に与える使命がある」
「使命?」
「あぁ…俺の師匠は神器と由縁のある人でな。その師匠から使命を託されたんだ」

ルーグは御伽噺でも聞いてるかのような表情を浮かべながら咲良の話に耳を傾けている。

「話を続ける。さっきも言った通り神器を集めてるわけだが…ただ旅をするだけでは中々難しい…そこで流桜の名を売れば少なからず神器と触れ合う機会が増えるんじゃねぇかと思ってな」
「確かに…名が売れれば神器を持っている者と会う可能性も増えるし、王宮にだって入る機会が出来る」
「そうだ。王宮になら国宝として神器があるかもしれない。そのためには協力者がいる」
「それが俺か」

ルーグは理解が早くて助かる。現状を把握する能力が高いのだろう。

「そうなるな。魔道具マジックアイテムと薬を売って、製作者が鍛治師の流桜だと周りに認知させて欲しい」
「だが鍛治師なら武具の依頼も来るだろ?それはどうするんだ?」
「それは客と直接話して作るかどうかを決める」
「てことは…コーチンに留まるのか?」

ルーグが当然の質問を投げかける。

「いや…旅は続ける」
「なら店を開いても依頼も納品も出来ないじゃねえか」
「それは心配ない」

咲良は拡張袋から転移風呂敷2枚と念話水晶を1つ取り出し、転移風呂敷の効果をルーグに説明してからどちらもルーグに手渡す。

「なるほど。この布があれば納品はできるし、何個ほしいとか、武具精製を依頼した客がどんな奴かも念話水晶で確認できると言うわけか」
「話が早くて助かる。後、カゼルと話せる念話水晶はルーグにやるから持っていて構わない」

ルーグはすでにカゼルと話せる念話水晶を咲良から手渡されている。今手渡したのは咲良と話せる念話水晶だ。

「え?いいのか?…咲良がカゼルと話せなくなるぞ?」
「複製したから問題ない。で、どうだ?悪い話じゃないだろ」
「そうだが…俺なんかで良いのか?」
「もちろんだ。会って日も浅いがルーグは信用出来る。勘だがな」

ここ数日だけでもルーグの人となりは好ましいと感じたし、気も合う。何より咲良の勘が信用出来ると告げている。

「ふっ…えらい信用されてるな…よし!その話乗った!」
「なら契約成立だ。よろしく頼む」
「こちらこそだ咲良」

2人は固く握手を交わした。

「店の経営などは任せる」
「楽しくなってきた…早くコーチンに着きたいな」
「そうだな」



そして次の日、ようやくコーチンが見えてきた。
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

処理中です...