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2.戦場に咲いた二つの希望
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戦場についてからの二神は、それぞれの役割を果たす為に別れた。
数日も経つと、カティーナ帝国の兵から
「闘神と同じ名の『ニケル』という男が、快進撃を続けているらしい」
という噂が流れ始めた。
更に数日後には、
「ニケルのいる部隊は負け知らず」
と囁かれる。
そしてニケルという人物が戦争に出現して2週間後。
とうとうその名を知らぬ者は居なくなり、人に擬態したニケルは「英雄ニケル」とカティーナ帝国の兵士から呼ばれるようになったのである。
一方死神マナトスは、ニケルと別れてすぐ戦場近くの治癒院に向かっていた。
治癒院には、治療の施しようもなく、痛み止めなどの処置もされず、ただ痛みに呻きながら寝ている患者が多数いた。
ベッドは多くの患者で埋まっている為、治る見込みの無い者たちは、狭い部屋に一纏めに集められていた。
先ずマナトスは、痛みに耐えられず「死にたい」と訴える兵士の足下に立つ。
死の間際の者にはマナトスの姿を捉えることができた。真っ黒のローブを被り、三日月状の形をした鎌を持つ死神の姿は皆に知られている。
だからこそ、その兵士はマナトスを見ただけで、死神が迎えに来たことを瞬時に悟っていた。
「ああ、俺にとうとうお迎えが来たようだ。ライラ、クルト、シンディ。お前たちの幸せをずっと祈っているからな……」
彼はマナトスの顔を見て涙を流し、家族の名前を挙げて何度も何度も幸せを祈り、覚悟を決めたように目を閉じた。
「あなたの家族とあなたの来世が幸せでありますように。神のご加護を」
マナトスはただそれだけを願いながら、大きな鎌を男の一振りし、身体と魂を引き離す。
こうして、彼は静かに息をひきとった。
二人目は、怪我により感染症を引き起こしていたが、未だ死に抗い続けていた者だった。
彼の命を長引かせることは、苦痛の時間を長引かせるだけではない。
他の健康な者へ感染を拡げる可能性があった。
だからこそ、例え生きようと懸命に戦う者であろうとも、マナトスはその者の命を摘み取らねばならなかった。
彼は、熱にうなされながらも死神の顔をみた途端、激昂し、身体を起こしてマナトスに掴みかかろうとした。
けれど、その手はマナトスを掴むことはできず、空を切った。
彼は直接死神に触れられないことが分かると、マナトスをきつく睨み付けた。
どこにその力があったのだろうと思うほどの大声を堕し、死神を罵り出す。
「なぜ、俺のところへ死神が来るのだ! 俺はまだ死なない! 恋人が郷で待っているのだ! お前など消えてなくなれ!」
それでもマナトスが変わらずその場に立っていると、罵る言葉はいつまでも続いた。
男がひとしきり騒ぎ、やがて声がかすれてきた頃、今度は懇願してくる。
「お願いだ。見逃してくれ。俺は死ねないんだ。帰ったら結婚し、幸せにすると約束したんだ。こんなところで俺は終われない。頼む……頼む……」
死神に訴えながら、涙を流す。
涙も枯れ、それは叶わぬ願いと悟ったのだろう。
今度は祈りにも似た願いを口にしだした。
「やはり無理なのか……そうか……では、恋人に俺の分の幸せを授けてくれ。俺は自分の手で恋人を幸せにしたかったが……せめて……」
一人祈る彼の思いが、彼女にも届きますようにとタナトスは願う。タナトスが鎌を一振りすると、彼は最期に愛する者の名前を叫び、息を引き取った。
こうしてタナトスは、助かる見込みのない者たちの命を次々と摘み取る。
そして、二週間後。
全ての役割を終え、救護院を出る頃には、「この戦場で死神を見たものは、皆殺される」と兵士に噂される。
元々嫌われ者の死神マナトスではあったが、益々忌み嫌われていったのだった。
ある日マナトスは、どちらの陣営からも多くの負傷者を出す戦場へと赴いていた。
そこは血なまぐさい匂いが漂い、人々の顔は疲れや恐怖といったもので彩られていた。
身体は健康であるはずの者でさえ、生気が削られているようだった。
そこにもし、英雄ニケルがいたなら圧倒的力でカティーナ帝国がサンドル王国に圧勝し、この様な酷い有様にはなっていなかっただろう。
この戦場では、互いの実力が拮抗しているからこそ、両国共に多大な被害が出ていたのだ。
数で負けている筈のサンドル王国が、まだカティーナ帝国に対抗していることにマナトスは驚く。
この戦を率いているのは誰であろうかと気になったマナトスは、王国陣の中心に向かった。
そこにはサンドル王国の本陣であるにも関わらず、カティーナ帝国の兵士たちが少しずつ侵入し、敵味方入り乱れての混戦となり始めていた。これはもうすぐ勝敗が決まることは歴然であった。
その戦の脇で敵にやられて死に瀕している者がいた。
彼が身につけた鎧は、明らかに他の者の装飾とは異なり、所々金があしらわれており、肩の鎧には繊細な紋章が刻まれている。
彼が王国の隊を率いていた司令塔だろう。
そして、司令塔が倒れたことにより、サンドル王国側は混乱し始めていたのだとマナトスは気付いた。
司令塔の傍らにいた少年が、「オルガス王子!」と叫んでいる。その名を呼ばれたオルガス王子は、傍らにいた少年に耳打ちをする。
少年は泣き出すのを堪えるような険しい顔で頷き、ラッパを吹いてサンドル王国側に撤退の合図を出した。それを聞いたサンドル王国の兵は、皆散り散りになって逃げ出す。
それをカティーナ帝国側は追いかけて、オルガス王子の周囲は静かになった。
オルガス王子は、それを見てほっと息を吐き、目を閉じる。傍らにいた少年は吹いていたラッパを投げ捨ててオルガス王子を抱きしめ、とうとう泣き叫んだ。
「誰か、誰でも良い、この方を助けてください! この方は王国にとっても帝国にとっても必要な存在だ。こんなところで死なせて良い方ではない!」
死神マナトスはふと闘神ニケルに言われたことを思い出す。
オルガス王子はサンドル王国の王族の中で唯一戦争に反対していた存在だと。いずれは彼を中心とした話し合いで戦の早めの終結を狙うつもりだとも言っていた。
つまり、オルガス王子はカティーナ帝国にとってもここで死なれてはいけない存在だ。
だからこそ、この状況で王子にとどめを刺す帝国の兵士がいなかったのだろう。
今回の傷も、オルガス王子と分からずに誤って傷つけたものかもしれない。
だが、オルガス王子の命の炎は燃え尽きようとしていた。
そうなってしまっては、死神のマナトスに助ける手段など何も無い。
マナトスは、神であるにも関わらず、オルガス王子の命を刈り取るしかできないのだ。
眉間にしわを寄せたマナトスは、オルガス王子にゆっくりと近づいた。
死に近い王子は死神のマナトスの姿をはっきりと捉える。
「やあ。貴方が死神なのかな。もう私の命が尽きるという事だね」
死を覚悟した王子の顔は、この戦場の場に似つかわしくないほと穏やかであった。
それからオルガス王子は、そばにいる従者の頭に手を置いた。
その手は震え、動かすことがやっとだということは、マナトスにも分かった。
それでも、王子は笑みを浮かべていた。
「シメオンよ、私を慕って付いてきてくれた君を残して去ることは無念だが、ここでお別れだ。君は、国に帰って幸せになるんだよ」
シメオンと呼ばれた少年は、死神というオルガス王子の言葉にハッとして顔を上げ、あたりを見わたした。
そして、本来見えるはずのない死神マナトスを捉え、シメオンはマナトスを睨みつけてきた。
「少年よ、死神の私が見えるのかい? 君は創造神ザウラス様の光を受け取って生まれてきた選ばれし者なんだな。そうか」
マナトスの言葉に、シメオンは怪訝そうな顔をする。
マナトスはそれを気にせず、話を続けた。
「それならば、私でも王子を助けることはできるな。代償は君の命だ。君の命と王子の命を交換してやろう。さあ、王子の命が尽きる前にその命を差し出すのか否か早く決めるんだ」
少年シメオンは、覚悟を決めた力強い目で死神マナトスを見据え、ゆっくりと頷く。
「迷う必要などありません。私はオルガス王子に命を助けられた身。自分の命など殿下に捧げる覚悟をしてお傍に侍らせていただいております。殿下を助けるためならば、どんな事でも受け入れます」
それに対してオルガス王子は慌てる。
「何を言っている、君が私の犠牲になることはない! 死神、さあ早く私を連れて行ってくれ」
そう叫ぶオルガスは、吐血する。
シメオンは、その血を自分の袖で必死に拭う。
「死神、いえ、死神様。早く、私の命をどうぞお使い下さい! お願いします。殿下を助けて……」
焦りの色を浮かべたシメオンは、必死でマナトスに訴えてきた。
二人のやり取りに、ああ何と美しいのかと死神マナトスはぼんやりと思う。
人は醜く愚かであると他の神は言うが、互いを思いやり、互いの為に命を張る二人は、決して醜く愚かなどではなかった。この二人ならば、これからの両国の架け橋としてもずっと必要な存在となるであろう。
彼らが助けられる命は、これからもたくさんあるはずだ。
そして、マナトスも闘神ニケルのように、時には人の命を救ってみたいと思った。
人の命を刈ることしかできない自分が、身の程知らずにもそう願ってしまったのだ。
それなら、自分の全てをかけて二人を守る事にしようとマナトスは決める。
「わかった。今回だけは二人の命を助けよう」
その途端、オルガス王子と少年シメオンの二人は黒い靄に包まれる。
黒い靄が消える頃、そこに死神の姿はなかった。
怪我の治ったオルガス王子とシメオンだけが残されていたのだ。
二人はお互いの無事を喜び、神に感謝した。
そしてこの助けられた命は、国と民に捧げることを誓い、そのままサンドル王国へと秘かに戻って行ったのだった。
数日も経つと、カティーナ帝国の兵から
「闘神と同じ名の『ニケル』という男が、快進撃を続けているらしい」
という噂が流れ始めた。
更に数日後には、
「ニケルのいる部隊は負け知らず」
と囁かれる。
そしてニケルという人物が戦争に出現して2週間後。
とうとうその名を知らぬ者は居なくなり、人に擬態したニケルは「英雄ニケル」とカティーナ帝国の兵士から呼ばれるようになったのである。
一方死神マナトスは、ニケルと別れてすぐ戦場近くの治癒院に向かっていた。
治癒院には、治療の施しようもなく、痛み止めなどの処置もされず、ただ痛みに呻きながら寝ている患者が多数いた。
ベッドは多くの患者で埋まっている為、治る見込みの無い者たちは、狭い部屋に一纏めに集められていた。
先ずマナトスは、痛みに耐えられず「死にたい」と訴える兵士の足下に立つ。
死の間際の者にはマナトスの姿を捉えることができた。真っ黒のローブを被り、三日月状の形をした鎌を持つ死神の姿は皆に知られている。
だからこそ、その兵士はマナトスを見ただけで、死神が迎えに来たことを瞬時に悟っていた。
「ああ、俺にとうとうお迎えが来たようだ。ライラ、クルト、シンディ。お前たちの幸せをずっと祈っているからな……」
彼はマナトスの顔を見て涙を流し、家族の名前を挙げて何度も何度も幸せを祈り、覚悟を決めたように目を閉じた。
「あなたの家族とあなたの来世が幸せでありますように。神のご加護を」
マナトスはただそれだけを願いながら、大きな鎌を男の一振りし、身体と魂を引き離す。
こうして、彼は静かに息をひきとった。
二人目は、怪我により感染症を引き起こしていたが、未だ死に抗い続けていた者だった。
彼の命を長引かせることは、苦痛の時間を長引かせるだけではない。
他の健康な者へ感染を拡げる可能性があった。
だからこそ、例え生きようと懸命に戦う者であろうとも、マナトスはその者の命を摘み取らねばならなかった。
彼は、熱にうなされながらも死神の顔をみた途端、激昂し、身体を起こしてマナトスに掴みかかろうとした。
けれど、その手はマナトスを掴むことはできず、空を切った。
彼は直接死神に触れられないことが分かると、マナトスをきつく睨み付けた。
どこにその力があったのだろうと思うほどの大声を堕し、死神を罵り出す。
「なぜ、俺のところへ死神が来るのだ! 俺はまだ死なない! 恋人が郷で待っているのだ! お前など消えてなくなれ!」
それでもマナトスが変わらずその場に立っていると、罵る言葉はいつまでも続いた。
男がひとしきり騒ぎ、やがて声がかすれてきた頃、今度は懇願してくる。
「お願いだ。見逃してくれ。俺は死ねないんだ。帰ったら結婚し、幸せにすると約束したんだ。こんなところで俺は終われない。頼む……頼む……」
死神に訴えながら、涙を流す。
涙も枯れ、それは叶わぬ願いと悟ったのだろう。
今度は祈りにも似た願いを口にしだした。
「やはり無理なのか……そうか……では、恋人に俺の分の幸せを授けてくれ。俺は自分の手で恋人を幸せにしたかったが……せめて……」
一人祈る彼の思いが、彼女にも届きますようにとタナトスは願う。タナトスが鎌を一振りすると、彼は最期に愛する者の名前を叫び、息を引き取った。
こうしてタナトスは、助かる見込みのない者たちの命を次々と摘み取る。
そして、二週間後。
全ての役割を終え、救護院を出る頃には、「この戦場で死神を見たものは、皆殺される」と兵士に噂される。
元々嫌われ者の死神マナトスではあったが、益々忌み嫌われていったのだった。
ある日マナトスは、どちらの陣営からも多くの負傷者を出す戦場へと赴いていた。
そこは血なまぐさい匂いが漂い、人々の顔は疲れや恐怖といったもので彩られていた。
身体は健康であるはずの者でさえ、生気が削られているようだった。
そこにもし、英雄ニケルがいたなら圧倒的力でカティーナ帝国がサンドル王国に圧勝し、この様な酷い有様にはなっていなかっただろう。
この戦場では、互いの実力が拮抗しているからこそ、両国共に多大な被害が出ていたのだ。
数で負けている筈のサンドル王国が、まだカティーナ帝国に対抗していることにマナトスは驚く。
この戦を率いているのは誰であろうかと気になったマナトスは、王国陣の中心に向かった。
そこにはサンドル王国の本陣であるにも関わらず、カティーナ帝国の兵士たちが少しずつ侵入し、敵味方入り乱れての混戦となり始めていた。これはもうすぐ勝敗が決まることは歴然であった。
その戦の脇で敵にやられて死に瀕している者がいた。
彼が身につけた鎧は、明らかに他の者の装飾とは異なり、所々金があしらわれており、肩の鎧には繊細な紋章が刻まれている。
彼が王国の隊を率いていた司令塔だろう。
そして、司令塔が倒れたことにより、サンドル王国側は混乱し始めていたのだとマナトスは気付いた。
司令塔の傍らにいた少年が、「オルガス王子!」と叫んでいる。その名を呼ばれたオルガス王子は、傍らにいた少年に耳打ちをする。
少年は泣き出すのを堪えるような険しい顔で頷き、ラッパを吹いてサンドル王国側に撤退の合図を出した。それを聞いたサンドル王国の兵は、皆散り散りになって逃げ出す。
それをカティーナ帝国側は追いかけて、オルガス王子の周囲は静かになった。
オルガス王子は、それを見てほっと息を吐き、目を閉じる。傍らにいた少年は吹いていたラッパを投げ捨ててオルガス王子を抱きしめ、とうとう泣き叫んだ。
「誰か、誰でも良い、この方を助けてください! この方は王国にとっても帝国にとっても必要な存在だ。こんなところで死なせて良い方ではない!」
死神マナトスはふと闘神ニケルに言われたことを思い出す。
オルガス王子はサンドル王国の王族の中で唯一戦争に反対していた存在だと。いずれは彼を中心とした話し合いで戦の早めの終結を狙うつもりだとも言っていた。
つまり、オルガス王子はカティーナ帝国にとってもここで死なれてはいけない存在だ。
だからこそ、この状況で王子にとどめを刺す帝国の兵士がいなかったのだろう。
今回の傷も、オルガス王子と分からずに誤って傷つけたものかもしれない。
だが、オルガス王子の命の炎は燃え尽きようとしていた。
そうなってしまっては、死神のマナトスに助ける手段など何も無い。
マナトスは、神であるにも関わらず、オルガス王子の命を刈り取るしかできないのだ。
眉間にしわを寄せたマナトスは、オルガス王子にゆっくりと近づいた。
死に近い王子は死神のマナトスの姿をはっきりと捉える。
「やあ。貴方が死神なのかな。もう私の命が尽きるという事だね」
死を覚悟した王子の顔は、この戦場の場に似つかわしくないほと穏やかであった。
それからオルガス王子は、そばにいる従者の頭に手を置いた。
その手は震え、動かすことがやっとだということは、マナトスにも分かった。
それでも、王子は笑みを浮かべていた。
「シメオンよ、私を慕って付いてきてくれた君を残して去ることは無念だが、ここでお別れだ。君は、国に帰って幸せになるんだよ」
シメオンと呼ばれた少年は、死神というオルガス王子の言葉にハッとして顔を上げ、あたりを見わたした。
そして、本来見えるはずのない死神マナトスを捉え、シメオンはマナトスを睨みつけてきた。
「少年よ、死神の私が見えるのかい? 君は創造神ザウラス様の光を受け取って生まれてきた選ばれし者なんだな。そうか」
マナトスの言葉に、シメオンは怪訝そうな顔をする。
マナトスはそれを気にせず、話を続けた。
「それならば、私でも王子を助けることはできるな。代償は君の命だ。君の命と王子の命を交換してやろう。さあ、王子の命が尽きる前にその命を差し出すのか否か早く決めるんだ」
少年シメオンは、覚悟を決めた力強い目で死神マナトスを見据え、ゆっくりと頷く。
「迷う必要などありません。私はオルガス王子に命を助けられた身。自分の命など殿下に捧げる覚悟をしてお傍に侍らせていただいております。殿下を助けるためならば、どんな事でも受け入れます」
それに対してオルガス王子は慌てる。
「何を言っている、君が私の犠牲になることはない! 死神、さあ早く私を連れて行ってくれ」
そう叫ぶオルガスは、吐血する。
シメオンは、その血を自分の袖で必死に拭う。
「死神、いえ、死神様。早く、私の命をどうぞお使い下さい! お願いします。殿下を助けて……」
焦りの色を浮かべたシメオンは、必死でマナトスに訴えてきた。
二人のやり取りに、ああ何と美しいのかと死神マナトスはぼんやりと思う。
人は醜く愚かであると他の神は言うが、互いを思いやり、互いの為に命を張る二人は、決して醜く愚かなどではなかった。この二人ならば、これからの両国の架け橋としてもずっと必要な存在となるであろう。
彼らが助けられる命は、これからもたくさんあるはずだ。
そして、マナトスも闘神ニケルのように、時には人の命を救ってみたいと思った。
人の命を刈ることしかできない自分が、身の程知らずにもそう願ってしまったのだ。
それなら、自分の全てをかけて二人を守る事にしようとマナトスは決める。
「わかった。今回だけは二人の命を助けよう」
その途端、オルガス王子と少年シメオンの二人は黒い靄に包まれる。
黒い靄が消える頃、そこに死神の姿はなかった。
怪我の治ったオルガス王子とシメオンだけが残されていたのだ。
二人はお互いの無事を喜び、神に感謝した。
そしてこの助けられた命は、国と民に捧げることを誓い、そのままサンドル王国へと秘かに戻って行ったのだった。
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