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5.命運と愛の神
しおりを挟む再び死神マナトス視点に戻ります
もうどのくらいの年月が経ったであろうか。
既にマナトスの心の中は、闘神ニケルで一杯であった。一筋の光を掴むように思い出の中のニケルと彼から貰った指輪に縋り付いていた。その時間は、マナトスにとって穏やかで幸せな時間であった。
だが、突然眩い光に照らされて暗闇が霧散していく。
マナトスは余りの光の強さに目を固く瞑った。周囲から人のざわめきが聴こえる。その中で一際大きな声が聞こえてきた。
「命運の神様が参られました! 早く闘神様とオルガス様にお伝え願います!」
その声は、マナトスにとって聞き覚えがあったが、頭がぼんやりとして、思い出せない。
徐々に目が光に慣れ、薄目を開ける。いつの間にかマナトスは、祭壇の奥にある寝台のような広く柔らかいマットの上に座っていた。
目を開けてこちらを見ているマナトスに気付いた人々が皆跪いて頭を下げていた。なぜか見えない筈のマナトスの姿を皆捉えているようであった。
中心にいる青年の神官は、オルガス王子を助けた時にそばにいた少年シメオンであったとマナトスは気が付いた。
神官となったシメオンが、状況も分からずに戸惑うマナトスの為に説明をしようと口を開いた。
「こちらの神殿は、闘神ニケル様のご要望で自然の多い緑豊かな土地のこちらに建てさせていただきました」
シメオンによると、オルガス王子改めオルガス伯が統治するサンドル領に、闘神ニケルの指示のもとマナトスの為の神殿を建てたそうだ。
「マナトス様には、あの戦でオルガス様を助けていただきました。
サンドル王国は、あのまま戦を続けていれば民を巻き込んでの殺し合いになりかねませんでした。それを終わらせたのが王子であった我が領主、オルガスです。
つまり、主を助けてくださったマナトス様は、この領の民の命をもお救い下さったのです。
この事に感謝し、この領では命運の神としてマナトス様を信仰し、祈りを欠かさず行ってきました。
今、こうして皆がマナトス様のお姿を拝見できるのは我々の祈りが届き、命運の神として創造神ザウラス様に認められたからに違いありません」
シメオン神官の話は、思いもかけないものであった。実状とかけ離れたシメオンの話にマナトスは目眩を覚えて額に手をやる。
それを見たシメオンは祭壇の寝台へ横になるよう促してきたが、マナトスは落ち着かないと祭壇から降り、静かに座れる場所に移動したいと伝えた。
それならばと用意された場所は暖かな日差しが当たり、外の自然がよく見えるテラス席であった。
外には花や草が息吹き、それを目当てに小さな動物たちが動き回るのが見て取れた。その中に、よくニケルが届けてくれたあの白い花もあった。
マナトスはそれを見つけて目元を緩める。
「こちらは、動物や自然を愛するマナトス様の為にとニケル様が直々に計画されたのです」
再び、想像を超える事実を伝えてくるシメオン神官を驚きの表情でマナトスは見た。更にシメオン神官は話を続ける。
「闘神ニケル様は神殿を建てた後、領地内を隅々まで赴き、命運の神マナトス様がどれだけ素晴らしく、人々の幸せを祈っていたかを伝え回って下さいました。そして、マナトス様は今も民の為に一人闘っているとも。
そんなマナトス様へ祈りを捧げて欲しいと一人一人に訴えかけて下さったのです。
こうしてご無事にマナトス様が帰られたこと、大変嬉しゅうございます」
想像だにしない出来事ばかりが伝えられ、マナトスはただ驚き固まる以外になかった。
「ニケル様はマナトス様の為にそれはもう必死なご様子でした」
神官シメオンは、その時のニケルの様子を思い出しているのか、少しだけ上空を見上げて笑顔になった。
まさかのニケルの行動に、マナトスは戸惑う。そこまでしてニケルがマナトスを助けたいと思ってくれていたことにじわじわと喜びが溢れた。
その時、ニケルが風と共に現れ、マナトスを抱きしめてきた。
「良かった! 良く頑張った、マナトス。
暗闇に飲み込まれずに良く耐えた。
お前を失うと思うと怖かった。お前は私の唯一だ。もう決して私のそばから離れないでくれ」
マナトスは突然のニケルの言葉に更に驚いたが、ずっとニケルのことを考え続けたマナトスにとってこの上ない幸せだった。
「ニケル、貴方の事を考えていた時だけが自分を保っていられたよ。こうしてこの世に帰ってこられたのは貴方のお陰だ。
ありがとう。貴方は死神の私に幸せを与えてくれた私の唯一だ」
マナトスの言葉を聞いたニケルは、愛おしそうにマナトスの瞳を見つめ、頬を撫でる。その撫でるニケルの手をマナトスは握りしめた。
そのマナトスの指にはめられた赤い指輪を見て、ニケルは笑顔になる。
「これからは一緒に過ごそう。お前はこれから私の家族だ」
マナトスはニケルに向けて今まで見せたことのない穏やかな笑顔を見せ、ニ゙神は固く抱き合った。
ニ゙神の様子を神官たちは一部始終見ていたため、二神を愛の神としても信仰し、広めていった。
そしてそれはサンドル領に留まらずカティーナ帝国全土に広がった。その頃にはマナトスを恐れる者はおらず、命運と愛の神マナトスとして人々に愛されていったのだった。
終
神話のような終わりになりました。
神様なので、慈しみとか信頼とか尊敬とかが混ざった愛です。恋というよりはもっと深い愛に落ち着きました。
嫌われてションボリしてる死神が他の神様によしよしされてたら良いなと思って作ったお話です。
最後までお読みいただき、感謝いたします。本当にありがとうございました!
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金浦桃多 さま
とても素敵な感想をありがとうございます😭✨
感想を読んで作者の私以上に作品の解析度が高い!と感じました😂
初めて作った小説でしたので、とてもとても心配だったのですが、こうして肯定的に受け止めてくださり、本当に嬉しいです🥲✨
一応、続編を考えております。二人が家族になってからのお話でございます。次も読んでいただけるような作品にできたらと思いますので、よろしくお願いします💕
めーぷる さま
素敵な感想ありがとうございます😭✨
もう、こんな風に感想貰えると、とても嬉しくて嬉しくて😭😭😭✨
マナトス、ほんとに消えなくて良かったです✨
こちらは元々ツイノベでしたので、ツイノベ書きながらどうなるんだ?と作者もドキドキしておりました🩷
ニケルが何とかしてくれました✨
続編も今構想中ですが、何とか甘い雰囲気になるように頑張りたいと思います✨
こちらに載せましたら、また読んでいただけたら嬉しいです😭💕
よろしくお願いします✨
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