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提案と説得と遠吠え
いくらなんでも何もしない、というわけにもいかないので、仕事をしてみた。
赴任一日目なのに、午前中で終わってしまった。
確かに、基地からしたらいきなり来た『特務』少佐に与える仕事を割り振るのも面倒、といったところだろう。
「いんじゃね? 仕事がないってなら遊ぼーぜ」
嬉々として堂々とサボタージュを決め込もうとしたアーシェをシンが諌めた。
「仮にも士官がサボるなんて、許されるわけないだろう」
シンが、優等生に見えて、優等生っぽく振る舞うけれど、実は自分と同じノーティ・ボーイであることを、アーシェは知っている。
「んで? 実は?」
「『ただ飯喰らいの坊っちゃんたち』なんていわれたらムカつくだろ」
実はかなりプライドが高いことも。
二人で話し合いーーー提案:シン 大反論:アーシェ 説得&諭し:シンーーーの結果、せっかくなのでお互い得手でない仕事を割り振ってみた。
どちらかといえば体を動かしたいシンは、基地のロジステックの効率化。
理系脳の効率重視なアーシェには、兵士たちの訓練指導。
お互いの得手が真逆であること。今まで学生なのに任務を受けさせられていたこと。とにかく働かずにシンとイチャイチャ(教育的指導のこめかみぐりぐりを受け、親睦を深めるに修正)したいことを、怒鳴ったり泣きとしたり、あざと可愛くお願いしてみたが、シンは折れなかった。
「いいかい、アーシェ。お互い得手不得手がわかってるんだから、この機会に少しでも克服しておこうじゃないか。実戦でやるのはリスクが高いけど、お試しならいいだろ?」
アーシェがかなり好きな端正な笑顔でいわれてしまうと、それ以上ごねられなくなる。
なんだよ、おまえだったてこの基地のこと舐め腐ってるじゃねーか、と思ってもゴニョゴニョと口の中で終わってしまう。
シリル家の筆頭後継者。
『黄金』の二つ名を持つこのアナスタシオス=アレクシエル=シリルの意思を捻じ曲げるなんて、宇宙広しといえども目の前にいるシン=テクラダしかいやしない。
コイツには一度、そのことを思い知らせなくちゃならない。
アヒル隊長と入るバスでするか。
それども、改装した官舎に入れた、長身の二人がゆったり寝られる特注ベッドの上にするか。
アーシェが不穏な計画を綿密に練ろうとしていると、シンがいった。
「どっちがうまくやれるか、競争しようよ。私がうまくやれたら、君になにかおねだりするし」
アーシェが思考を切り替える。
アーシェからしたら信じられないくらい慎ましいシンは、アーシェからのプレゼントをなかなか受け取ってくれない。
服も宝石も有価証券も現金も。
惑星(流石に有人惑星ではないけど、テラフォーミング中)も断られた。
アーシェのすべての財産を共有する権利に署名してもらおうとしたのに、ディスプレイごと叩き割られたこともある。
(『こうゆうことは、もっと手順を踏むべきだろうっ』って真っ赤になって怒鳴られたけど、法律的には整えてたのに)
そんなシンから『ねだってもらえる』のはアーシェにとってご褒美だ。
「万が一だけど。君が勝ったら、私からご褒美をあげるよ」
シンは蠱惑的に微笑むと、その笑みに見惚れているアーシェに身を寄せた。
「これはちょっとだけ。ね?」
シンは自分の唇に人差し指の先を当てると、それをアーシェの唇の端に当てた。
その指先を、ゆっくりとアーシェの唇にすべらせる。
「上手にできたら、こっちにあげるよ?」
シンの硬い指先が、コーラルピンクのアーシェの唇をぷにっと押した。
アーシェの白い頬が、赤くなる。
首筋まで赤くしたアーシェが応えた。
「イエス・サー」
教本の手本のような回れ右をすると、アーシェは訓練場に小走りで走っていった。
内心では、叫んでいた。
(こうゆうとこーっ。俺の純情弄びやがってーっ。後でおぼえてろぉーっ)
完全に負け犬のセリフを(心の中で)叫びながら、アーシェは走り去った。
「グッド・ボーイ」
歌うようなシンの声が、アーシェにとどめを刺した。
赴任一日目なのに、午前中で終わってしまった。
確かに、基地からしたらいきなり来た『特務』少佐に与える仕事を割り振るのも面倒、といったところだろう。
「いんじゃね? 仕事がないってなら遊ぼーぜ」
嬉々として堂々とサボタージュを決め込もうとしたアーシェをシンが諌めた。
「仮にも士官がサボるなんて、許されるわけないだろう」
シンが、優等生に見えて、優等生っぽく振る舞うけれど、実は自分と同じノーティ・ボーイであることを、アーシェは知っている。
「んで? 実は?」
「『ただ飯喰らいの坊っちゃんたち』なんていわれたらムカつくだろ」
実はかなりプライドが高いことも。
二人で話し合いーーー提案:シン 大反論:アーシェ 説得&諭し:シンーーーの結果、せっかくなのでお互い得手でない仕事を割り振ってみた。
どちらかといえば体を動かしたいシンは、基地のロジステックの効率化。
理系脳の効率重視なアーシェには、兵士たちの訓練指導。
お互いの得手が真逆であること。今まで学生なのに任務を受けさせられていたこと。とにかく働かずにシンとイチャイチャ(教育的指導のこめかみぐりぐりを受け、親睦を深めるに修正)したいことを、怒鳴ったり泣きとしたり、あざと可愛くお願いしてみたが、シンは折れなかった。
「いいかい、アーシェ。お互い得手不得手がわかってるんだから、この機会に少しでも克服しておこうじゃないか。実戦でやるのはリスクが高いけど、お試しならいいだろ?」
アーシェがかなり好きな端正な笑顔でいわれてしまうと、それ以上ごねられなくなる。
なんだよ、おまえだったてこの基地のこと舐め腐ってるじゃねーか、と思ってもゴニョゴニョと口の中で終わってしまう。
シリル家の筆頭後継者。
『黄金』の二つ名を持つこのアナスタシオス=アレクシエル=シリルの意思を捻じ曲げるなんて、宇宙広しといえども目の前にいるシン=テクラダしかいやしない。
コイツには一度、そのことを思い知らせなくちゃならない。
アヒル隊長と入るバスでするか。
それども、改装した官舎に入れた、長身の二人がゆったり寝られる特注ベッドの上にするか。
アーシェが不穏な計画を綿密に練ろうとしていると、シンがいった。
「どっちがうまくやれるか、競争しようよ。私がうまくやれたら、君になにかおねだりするし」
アーシェが思考を切り替える。
アーシェからしたら信じられないくらい慎ましいシンは、アーシェからのプレゼントをなかなか受け取ってくれない。
服も宝石も有価証券も現金も。
惑星(流石に有人惑星ではないけど、テラフォーミング中)も断られた。
アーシェのすべての財産を共有する権利に署名してもらおうとしたのに、ディスプレイごと叩き割られたこともある。
(『こうゆうことは、もっと手順を踏むべきだろうっ』って真っ赤になって怒鳴られたけど、法律的には整えてたのに)
そんなシンから『ねだってもらえる』のはアーシェにとってご褒美だ。
「万が一だけど。君が勝ったら、私からご褒美をあげるよ」
シンは蠱惑的に微笑むと、その笑みに見惚れているアーシェに身を寄せた。
「これはちょっとだけ。ね?」
シンは自分の唇に人差し指の先を当てると、それをアーシェの唇の端に当てた。
その指先を、ゆっくりとアーシェの唇にすべらせる。
「上手にできたら、こっちにあげるよ?」
シンの硬い指先が、コーラルピンクのアーシェの唇をぷにっと押した。
アーシェの白い頬が、赤くなる。
首筋まで赤くしたアーシェが応えた。
「イエス・サー」
教本の手本のような回れ右をすると、アーシェは訓練場に小走りで走っていった。
内心では、叫んでいた。
(こうゆうとこーっ。俺の純情弄びやがってーっ。後でおぼえてろぉーっ)
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「グッド・ボーイ」
歌うようなシンの声が、アーシェにとどめを刺した。
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