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(無)自覚
自分で提案した手前、手を抜くなんて出来はしないし、勝負となったら勝ちにいきたい。
シンは普段アーシェ任せにしている情報関連作業に取り組んでいた。
士官とその副官には執務室が与えられている。
辺境基地といえども、逆に辺境基地だからか部屋のには2つの執務用に机とソファ、テーブル、ミーティング用のディスプレイがあっても、狭く感じることはない。
それらすべてが旧式であっても。
(備品の管理も行き届いているし、兵站の不備もない)
多少の改善点はあったものの、横領などの形跡は見つけられなかった。
シンは画面を見つめ過ぎた目をほぐすように、目頭を揉んだ。
遮光サングラスは外している。
宇宙軍の多くを占める地球系であっても多様性があり、サングラスをしている者も珍しくないが、シンが瞳を晒すと毎回面倒な事が起きる。
眼球全体が黒く、虹彩は縦で銀色。
一部の地球系宗教では、強く忌避される組み合わせだ。
もっとも、大半は『なんか見られると落ち着かない』といった感覚的なものだ。
(アーシェの『ムラムラする』は限定的)
そして、自分はいつまでアーシェの『バディ』でいられるのか。
客観的に見て、自分はかなり優秀な方だ。
頭脳でも体術でも、今のアーシェとならほぼ対等にできる。
軍のマッチングで『バディ』として選ばれたといっても、そこにはアーシェの生家であるシリル家の意向が働いているだろう。
これから軍人として進んでいけば、さらにに大きくシリル家の影響が絡んでくる。
シリル家は実力主義だが、アーシェのような『傑作』ができるなら、血統を残すべきだろう。
それに宇宙軍は巨大な組織だ。
自分以外にもアーシェが『気に入る』人材はでてくるだろうし、なんだったら軍に拘らなくとも……
士官学校の卒業まで後1年。
モラトリアム期間の終りが見えて来ている今、一人になるとつい先のことを考えてしまう。
アーシェには微塵も表さないのが、せめてものシンの意地だ。
ああ見えて、アーシェは一度『身内』と認識した相手に対して、情が深い。
今のところ、その対象は標準的地球人類の両手の指の数より少ないけれど。
もちろんシンは、その中でも一番情を寄せられているのを自覚している。
しかしその永続性については、なんの保証もない。
これからさらに世界が広がっていくアーシェが、自分への情で、最適な選択肢を躊躇することのないようにしたい。
そのためには、離別を切り出されても、笑って背中を蹴り出せるような実力を備えておくべきだ。
それがシンの行動の指針であり、数少ない身内からは『それ、絶対シリル特務少佐にはいわないほうがいいと思います』『私を巻き込むなよ』『拉致監禁の犯罪者を作る気か』『ここまで無自覚だと、シリル先輩に同情しちゃいます。1ナノミクロンくらいですけど』などいわれる。
やや意味がつかめない言葉もあるが、なんだかんだいって心配してくれているのは、薄っすらと察せられる。
だから。
その時が来るまで。
アーシェは自分に惚れきっている、という設定を大事に抱えてい過ごしていこう、とシンは思っている。
ーーー大小さまざまな騒動の合間、シンの覚悟を聞いたアーシェが盛大に拗ね、怒り、暴れまわり、泣きわめき、幼児の自我形成の初期段階である『イヤイヤ期』もかくやというほど騒ぎ立て、その収束のためにシンが心身と羞恥心と第三者から得ている優等生的イメージを削り取られるのは、これから少ししてからの話。
シンは普段アーシェ任せにしている情報関連作業に取り組んでいた。
士官とその副官には執務室が与えられている。
辺境基地といえども、逆に辺境基地だからか部屋のには2つの執務用に机とソファ、テーブル、ミーティング用のディスプレイがあっても、狭く感じることはない。
それらすべてが旧式であっても。
(備品の管理も行き届いているし、兵站の不備もない)
多少の改善点はあったものの、横領などの形跡は見つけられなかった。
シンは画面を見つめ過ぎた目をほぐすように、目頭を揉んだ。
遮光サングラスは外している。
宇宙軍の多くを占める地球系であっても多様性があり、サングラスをしている者も珍しくないが、シンが瞳を晒すと毎回面倒な事が起きる。
眼球全体が黒く、虹彩は縦で銀色。
一部の地球系宗教では、強く忌避される組み合わせだ。
もっとも、大半は『なんか見られると落ち着かない』といった感覚的なものだ。
(アーシェの『ムラムラする』は限定的)
そして、自分はいつまでアーシェの『バディ』でいられるのか。
客観的に見て、自分はかなり優秀な方だ。
頭脳でも体術でも、今のアーシェとならほぼ対等にできる。
軍のマッチングで『バディ』として選ばれたといっても、そこにはアーシェの生家であるシリル家の意向が働いているだろう。
これから軍人として進んでいけば、さらにに大きくシリル家の影響が絡んでくる。
シリル家は実力主義だが、アーシェのような『傑作』ができるなら、血統を残すべきだろう。
それに宇宙軍は巨大な組織だ。
自分以外にもアーシェが『気に入る』人材はでてくるだろうし、なんだったら軍に拘らなくとも……
士官学校の卒業まで後1年。
モラトリアム期間の終りが見えて来ている今、一人になるとつい先のことを考えてしまう。
アーシェには微塵も表さないのが、せめてものシンの意地だ。
ああ見えて、アーシェは一度『身内』と認識した相手に対して、情が深い。
今のところ、その対象は標準的地球人類の両手の指の数より少ないけれど。
もちろんシンは、その中でも一番情を寄せられているのを自覚している。
しかしその永続性については、なんの保証もない。
これからさらに世界が広がっていくアーシェが、自分への情で、最適な選択肢を躊躇することのないようにしたい。
そのためには、離別を切り出されても、笑って背中を蹴り出せるような実力を備えておくべきだ。
それがシンの行動の指針であり、数少ない身内からは『それ、絶対シリル特務少佐にはいわないほうがいいと思います』『私を巻き込むなよ』『拉致監禁の犯罪者を作る気か』『ここまで無自覚だと、シリル先輩に同情しちゃいます。1ナノミクロンくらいですけど』などいわれる。
やや意味がつかめない言葉もあるが、なんだかんだいって心配してくれているのは、薄っすらと察せられる。
だから。
その時が来るまで。
アーシェは自分に惚れきっている、という設定を大事に抱えてい過ごしていこう、とシンは思っている。
ーーー大小さまざまな騒動の合間、シンの覚悟を聞いたアーシェが盛大に拗ね、怒り、暴れまわり、泣きわめき、幼児の自我形成の初期段階である『イヤイヤ期』もかくやというほど騒ぎ立て、その収束のためにシンが心身と羞恥心と第三者から得ている優等生的イメージを削り取られるのは、これから少ししてからの話。
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