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幼獣
「お前って、自分が思ってるほど全然ドライじゃねーし。むしろおせっかい焼きだって自覚ある?」
とアーシェからいわれたことはあるが、シンは自分がおせっかいだと思ったことはない。
周囲になにかいうときは、相手が行動を改めれば自分が快適になると思うからだ。
ギャンギャン大声で喚かれるのは迷惑なので、適量の声で話すようにいう。
失敗で落ち込んでいるのを見れば、うっとおしい姿を視界に入れたくないので、改善点を提示して行動に移し、つまり自分の目の前から去るように促す。
結果とし何故か感謝されることもあるが、基本的には自分の脳力の及ぶ範囲でしか活動しない、というのがシンの行動指針だ。
なので、今ハルシュミット=ハンゼルという惑星クレイア評議会に議員の話を聞いているのも、放置した挙げ句更に面倒なことになるを防ぐための予防的措置であり、決して人がいいからではない。
シンはそう自己分析しているが、アーシェにいわせると、
『偽悪的演出おつ』
になるらしい。
『それで俺との時間減らすとかありえないからな』
『なんで私の時間を使うのに、君の許可がいるの』
シンの反論をアーシェは受け付けなかった。
『いや。いるだろ?』
『どうして? いるわけないだろう』
不思議そうに問いかけてくるアーシェに、シンも自分の常識として問いただした。
『ったく、ワガママだなぁ』
お前にだけはいわれたくないセリフの年間最高ポイントを獲得しそうなセリフを吐いて、アーシェは肩をすくめた。
回し蹴りを食らわさなかったのは、一応次の台詞を待ってあげようというシンの素晴らしい寛容さからだとシンは認識した。
『だったら、お前が納得できる理由をやるよ』
アーシェはおもむろに地面に腰を下ろすと、黄金色の髪が地につくことに頓着せず、そのまま仰向けに寝転がった。
長い手足を大きく広げて大の字になった。
シンは無言で見下ろした。
『お前が俺との時間を削ったら、こうやって拗ねる』
堂々たる宣言だった。
幼児でも最終奥義である全身を使った技だ。
それを十代後半で、長身で、外見は美形の男子が行うのだ。
素晴らしい破壊力だった。
どうだ、とばかりに見上げてくるアーシェに、シンは表情をなくした声で返した。
『……わかったよ。宇宙にこの事態を生じさせないために、鋭意努力する』
シンの努力も虚しく、過去数度、宇宙にはこの事態が起こったが、不幸中の幸いで目撃者はシンのみであったため、宇宙は平和を保っている。
ハルシュミット=ハンゼルの陳情の内容を要約すると、
『宇宙軍でもっと民間人の雇用を増やして欲しい』
に尽きる。
もともとこの惑星クレイアは無人の、それこそ生命が存在しないただの惑星だった。
ただ、調査したところ地表にレアメタルが見つかったため、発掘隊が入植し、コロニーを作った。
その後思ったより鉱床が広がっていることが分かったので、開発会社が賭けに出て、少なくない資金を投入してテラフォーミングを行った。
しかし、広かった鉱床は掘り進めていくうちに浅かったことがわかり、その時点で開発会社は赤字を最小限にすべく惑星開発から撤退した。
その時引き上げずに残った工夫達が、惑星クレイアの祖先たちだ。
と、惑星クレイアでは子供たちに教えている。
ゆえにこの惑星には特別な産業も地政学的な特徴もない。
惑星内に限った産業なら何とか回していけるが、それだけでは機械化が進み省力化された産業と、医療技術の進歩により健康寿命が延びた社会構造による労働人口の増加に対応できない。
労働力の過剰はぜいたくな悩みといえなくもないが、需要と供給のバランスがとれていなければ、社会の経済的な進歩は望めない。
動ける人間が仕事もなく暇を持て余していれば、治安も悪くなる。
ならばこの惑星で雇用のみを生み出す組織、軍隊に雇ってもらえばいい。
安直といえば安直だが、間違いではない。
軍隊というものは、なんの生産にも寄与しないうえに、人も物も金も消費しかしない組織だ。
だからといって、こんな辺境の価値のない惑星に駐留される宇宙軍に、潤沢な予算があるわけもない。
そこで余ってる人口を宇宙軍に押しつけようとする惑星政府と、駐留先である惑星政府との関係を崩したくはないが予算に限りにある宇宙軍とのせめぎ合いがある。
「ってのはわかるけど、なんでそれにお前が関わるわけ?」
若干。若干ではあるが自分より背の高いアーシェが下から拗ねた上目遣いで見上げてくる。
あからさまに不満の表明をされているけれど、猛獣の幼児にじゃれつかれている感じがする。
可愛らしさに抱きしめて柔らかいお腹に顔を埋めたい誘惑と、大きな足と爪に押さえつけられて傷つけられるかもしれない恐怖。
「う~ん。なんでといわれても、あんな子犬みたいな目で見られたら、ねぇ」
シンが他の人間に気を向けようとすると、アーシェの機嫌は急降下する。
それがわかっていても、気にしてしまっている理由は。
「暇すぎるから、かな?」
へらりと笑ったシンの唇に、不満に意を表すためアーシェがカプリと嚙みついた。
とアーシェからいわれたことはあるが、シンは自分がおせっかいだと思ったことはない。
周囲になにかいうときは、相手が行動を改めれば自分が快適になると思うからだ。
ギャンギャン大声で喚かれるのは迷惑なので、適量の声で話すようにいう。
失敗で落ち込んでいるのを見れば、うっとおしい姿を視界に入れたくないので、改善点を提示して行動に移し、つまり自分の目の前から去るように促す。
結果とし何故か感謝されることもあるが、基本的には自分の脳力の及ぶ範囲でしか活動しない、というのがシンの行動指針だ。
なので、今ハルシュミット=ハンゼルという惑星クレイア評議会に議員の話を聞いているのも、放置した挙げ句更に面倒なことになるを防ぐための予防的措置であり、決して人がいいからではない。
シンはそう自己分析しているが、アーシェにいわせると、
『偽悪的演出おつ』
になるらしい。
『それで俺との時間減らすとかありえないからな』
『なんで私の時間を使うのに、君の許可がいるの』
シンの反論をアーシェは受け付けなかった。
『いや。いるだろ?』
『どうして? いるわけないだろう』
不思議そうに問いかけてくるアーシェに、シンも自分の常識として問いただした。
『ったく、ワガママだなぁ』
お前にだけはいわれたくないセリフの年間最高ポイントを獲得しそうなセリフを吐いて、アーシェは肩をすくめた。
回し蹴りを食らわさなかったのは、一応次の台詞を待ってあげようというシンの素晴らしい寛容さからだとシンは認識した。
『だったら、お前が納得できる理由をやるよ』
アーシェはおもむろに地面に腰を下ろすと、黄金色の髪が地につくことに頓着せず、そのまま仰向けに寝転がった。
長い手足を大きく広げて大の字になった。
シンは無言で見下ろした。
『お前が俺との時間を削ったら、こうやって拗ねる』
堂々たる宣言だった。
幼児でも最終奥義である全身を使った技だ。
それを十代後半で、長身で、外見は美形の男子が行うのだ。
素晴らしい破壊力だった。
どうだ、とばかりに見上げてくるアーシェに、シンは表情をなくした声で返した。
『……わかったよ。宇宙にこの事態を生じさせないために、鋭意努力する』
シンの努力も虚しく、過去数度、宇宙にはこの事態が起こったが、不幸中の幸いで目撃者はシンのみであったため、宇宙は平和を保っている。
ハルシュミット=ハンゼルの陳情の内容を要約すると、
『宇宙軍でもっと民間人の雇用を増やして欲しい』
に尽きる。
もともとこの惑星クレイアは無人の、それこそ生命が存在しないただの惑星だった。
ただ、調査したところ地表にレアメタルが見つかったため、発掘隊が入植し、コロニーを作った。
その後思ったより鉱床が広がっていることが分かったので、開発会社が賭けに出て、少なくない資金を投入してテラフォーミングを行った。
しかし、広かった鉱床は掘り進めていくうちに浅かったことがわかり、その時点で開発会社は赤字を最小限にすべく惑星開発から撤退した。
その時引き上げずに残った工夫達が、惑星クレイアの祖先たちだ。
と、惑星クレイアでは子供たちに教えている。
ゆえにこの惑星には特別な産業も地政学的な特徴もない。
惑星内に限った産業なら何とか回していけるが、それだけでは機械化が進み省力化された産業と、医療技術の進歩により健康寿命が延びた社会構造による労働人口の増加に対応できない。
労働力の過剰はぜいたくな悩みといえなくもないが、需要と供給のバランスがとれていなければ、社会の経済的な進歩は望めない。
動ける人間が仕事もなく暇を持て余していれば、治安も悪くなる。
ならばこの惑星で雇用のみを生み出す組織、軍隊に雇ってもらえばいい。
安直といえば安直だが、間違いではない。
軍隊というものは、なんの生産にも寄与しないうえに、人も物も金も消費しかしない組織だ。
だからといって、こんな辺境の価値のない惑星に駐留される宇宙軍に、潤沢な予算があるわけもない。
そこで余ってる人口を宇宙軍に押しつけようとする惑星政府と、駐留先である惑星政府との関係を崩したくはないが予算に限りにある宇宙軍とのせめぎ合いがある。
「ってのはわかるけど、なんでそれにお前が関わるわけ?」
若干。若干ではあるが自分より背の高いアーシェが下から拗ねた上目遣いで見上げてくる。
あからさまに不満の表明をされているけれど、猛獣の幼児にじゃれつかれている感じがする。
可愛らしさに抱きしめて柔らかいお腹に顔を埋めたい誘惑と、大きな足と爪に押さえつけられて傷つけられるかもしれない恐怖。
「う~ん。なんでといわれても、あんな子犬みたいな目で見られたら、ねぇ」
シンが他の人間に気を向けようとすると、アーシェの機嫌は急降下する。
それがわかっていても、気にしてしまっている理由は。
「暇すぎるから、かな?」
へらりと笑ったシンの唇に、不満に意を表すためアーシェがカプリと嚙みついた。
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