修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮

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3章 ルダマン帝国編

第308話 王都内の情報

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 周りに人の気配がないことを確認してから、琉海は懐に仕舞った紙切れを取り出した。

 その紙に書かれているのは場所だった。

「王都の平民地区内の場所か……?」

 よく見ると酒場の近くだ。

「ここに行けってことか?」

 ルイは紙切れに書かれた地図を頼りに歩いて行く。

「ここか……」

 たどり着いたのはなんの変哲もない一軒家だった。

 琉海が建物の前まで行くと、勝手に扉が開いた。

「なんのご用でしょうか」

 扉を開けたのはローブを被った女性だ。

「えっと、隣の通りの酒場でこの紙を渡されたので来たんですけど……」

 女性はその紙切れを受け取って、裏表を見た後にルイに視線を戻す。

「それで、依頼は何?」

「依頼?」

「何かを教えて欲しくてあの酒場に行ったんでしょ」

「ああ、知りたいことがあって」

「そう。なら、入って」

 女性はそう言って建物の中に入ってしまった。

 琉海もその女性の後を追う。

 屋内は一般家庭のような装飾だ。

 4人で囲めるテーブルと4脚の椅子。

 その奥にはキッチンがある。

 普通の生活スペースだ。

 ここで話を聞くのかと思ったが、女性はそこを通り過ぎて、下へ降りる階段に向かう。

 そして、すぐに見えた扉を開いて中に入る。

 部屋の中には机を挟むように椅子が2脚置かれているだけ。

 女性は奥の椅子に腰を下ろした。

「では、聞きましょうか。どんなことを知りたいのか」

「その前に、ここは何でしょうか」

「何の説明もなかったのですか?」

「ええ、まあそうですね」

「はあ、あそこの酒場の亭主は……」

 女性はため息を吐いて小声で愚痴る。

 それも一瞬で、すぐに琉海に向き直り――

「ここは情報屋です。対価を払えば、知りたいことを教えてあげます」

「対価とかお金ですか」

「大体はそうですね。ですが、それも知りたい情報次第です。機密性の高い情報であれば金銭以外のもので支払ってもらうこともあります」

「そうですか。では、王都の状況とスタント公爵家の状況について教えてください」

 琉海は酒場でも説明したことに加えてスタント公爵家がどんな状況なのかも教えて欲しいと依頼した。

「王都の状況とスタント公爵家についてですか……」

 女性は何かを考えているのか少しの間、黙り込む。

 その間が、琉海には何かまずいことでも聞いてしまったのかと思わせる。

 少しして女性の口が開いた。

「王都の状況についてなら銀貨50枚ほどになります。だけど、スタント公爵家の状況については金貨100枚を払ってもらわないと教えることはできませんね」

 騎士武闘大会の優勝報酬で金貨は100万枚貰っているから金貨100枚程度は簡単に出せる。

「その値段でしたら、払いますので教えてください」

「報酬は先出しになります」

「わかりました」

 琉海は金貨100枚と銀貨50枚を支払った。

 女性は金貨を数え終えると――

「では、どちらから先に知りたいですか?」

「まずはこの王都の状況を教えてください」

「わかりました。では、現在の王都の状況を教えましょう。1か月前に来たときよりも活気がなくなった気がするとのことでしたが、それも仕方がありません」

 情報屋の女性が教えてくれた。

 1か月前までは騎士武闘大会が開催されてお祭り騒ぎだった。

 それは琉海も知っている。

 一部、問題も起きたが、被害が少なかったおかげで、雰囲気が暗くなることはなかったようだ。

 だが、数日して国王が倒れたらしい。

 誰の仕業なのかもわからないが、王宮内は混乱したようだ。

 そんな渦中で臨時だが全権力を継いだのが、第一継承権を持つエリック・スティルドだったようだ。

「ただ、彼に国王としての素質がないことは、情報屋じゃなくても王都に住んでいれば誰でも知っている事実です。彼が国王代理となったことで、王都では徐々に彼の意向が伝わり始めました」

 エリック・スティルドの意向は一言で言えば男尊女卑。

 女性が少しでも権力を使っていることがエリックの耳に入ればすぐに圧力がかかるようになったようだ。

 そこからは「ある女性の上司が偉そうにしていて――」等の気に食わない有能な女性に対しての密告が始まったようだ。

 そんな話を聞いた国王代理のエリックは、すぐにその女性が在籍する店や経営者に圧力をかけたそうだ。

 代理とはいえ、国王からの圧力に耐えられる者はおらず、女性たちの役職剥奪や解雇が激増したとのことだった。

 そこからは負の連鎖だったようだ。

 女性たちは誰が密告したのか探る者や復讐を考える者もいる状況とのことだ。

 男性側もいつ復讐されるかわからない状況に恐怖を覚えているらしい。

 お互いがお互いをけん制し合っている今の状況は、王都自体が火薬庫のようだと情報屋は教えてくれた。

「なるほど、そう言った状況なんですね」

「そして、さらに知りたがっていましたスタント公爵家についても状況は似たようなものです」

 その言葉ですぐに琉海の中で繋がった。

「スタント公爵家の当主が女性だからですか」

「ええ、その通りです。ただ、スタント公爵家は被害が出る前に速やかに王都を出立したという情報がありますので、無事でしょうけど」

「そうですか」

 王都を出たということはスタント公爵領に行ったのだろうか。

 幸い、スタント公爵領は通り道だ。

(休憩がてらに寄ってみよう)

「情報ありがとうございました」

 琉海はそう言って立ち上がる。

「最後に一つだけ、サービスで教えておきます。現在の王都では監視の目は、平民の目からも伸びております。王都内での行動には気を付けてください。下手に動くとホルス騎士団が出てくることもあるので」

(ホルス騎士団か……)

 ホルス騎士団所属の騎士とは騎士武闘大会で手合わせしている。

 今の自分なら彼らが相手でも問題はないだろう。

「そうですか。情報ありがとうございます」

 琉海は礼を言って部屋を後にした。
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