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彼に出会ってから1年。
私はあの時には想像も出来なかった幸福のなかにいる。


「………ア、ミリア」

「……え、あ、はい」

昔を思い出してぼっーとしていた。
今日は大切な日なのに、こんなんじゃだめだ。

「ミリア、大丈夫かい? どこか体調でも悪い? 無理しないでね」

優しい笑顔で私を気遣ってくれるセフィロス様。
今日私は彼と結婚する。
この国の王である彼と。

「やっぱりまだ緊張してる? ミリアは綺麗だよ、心配しないで」

「はい、ありがとうございます。だけどやっぱり夢みたいで。私がセフィロス様と結婚できるなんて」

「それは私のほうさ。私と結婚してくれてありがとう」

きっと真っ赤になっている私の頬を優しくなぞる手にさらに赤くなってしまう。


セフィロス様とは親同士が仲が良く、昔は一緒に遊んでいた。
彼が8歳になるころには、本格的に王家の勉強が始まり、それから会うこともなかったのだけれど。

あの日、馬車であった彼は私の記憶のなかの彼とは別人だったけれど、どこか懐かしさも感じていた。
彼は私に、今回の事件を止められなかったことを謝った。
意味がわからず困惑する私をみて彼は悲し気な表情をしていた。

「今回のことは、君と君の婚約者侯爵家のリンダとの婚姻をなかったことにするための嘘なんだ。君のご両親は何も悪いことはしていないんだ」

「え、どうしてそんなこと」

驚く私にセフィロス様は続けていった。

「犯人に目星はついている。間に合わなくてすまなかった。これからのことは私にまかせて。君があの頃と同じ笑顔で笑ってくれるなら、他にはなにもいらないよ」

そう言い、私の手を握ってくれたセフィロス様に、私は胸が熱くなった。


その後、セフィロス様は今回のことを企てた子爵家アンリ嬢とその一家の嘘を暴き、私たちを救ってくれた。
婚約者だったリンダ様とはあれ以来あっていなかった。


「さぁ、準備はできたかい? お披露目だ」

あの時は想像もできなかった幸福を前に、私は胸がいっぱいだ。

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