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始まりは…
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カクテスト伯爵には双子の美人姉妹がいる。
姉のマリアティナと妹のセレスティナだ。
顔は一卵性の双子だけあってそっくりだが、姉のマリアティナは溌剌としておとなしいセレスティナと比べて垢抜けている印象だ。
それは瞳の色にも現れている。マリアティナの瞳は明るいマリンブルーに対しセレスティナは涼しげな湖のように澄んだコバルトブルー。
2人が並んでいなければ同じ金髪で体型もほぼ同じで瞳の色が違うのは微かに分かる程度でしかない。
年頃の2人は夜会や舞踏会によく招待されるが、セレスティナは余り乗り気になれない。いつだって2人でいても姉だけ誘われる。1人でいるとセレスティナはマリアティナと間違われて誘われる。相手は間違いに気づくと、セレスティナでも良いよという雰囲気になる。それが嫌でなるべく誘われないように壁の花になってしまうのだ。そして毎度落ち込む。
そんなセレスティナには憧れの男性がいた。
彼は騎士団に所属しているグランベリー伯爵の次男でゲイル・グランベリー。
以前街に買い物に出掛けた時に怪しげな輩に絡まれ連れ去られそうになったところを助けられ家まで送ってもらったのだ。
その時セレスティナは恋に落ちた。引っ込み思案なセレスティナはお礼を伝えるだけで何も行動にうつす事はなく、伯爵子息だが騎士であるゲイルが出席する夜会は数少ない。引っ込み思案のセレスティナは見かけても声さえかけられず遠くから見ているだけだった。
ゲイルは整った顔に細身だが均整の取れた身体で若い女性に人気がある。貴族ではあるが騎士団にいる彼は夜会には必要最小限しか出席しない。それでも出席した夜会などで女性が彼を囲むのはいつものことだ。そして優しい彼はそんな女性達を無碍にできずにいるのだ。
そんないつもの光景が今回は違った。
今回呼ばれたのは趣向を変えた仮面舞踏会だ。
仮面舞踏会なのでみんなが思い思いの仮面をつける。殆どが目の周りだけの仮面に対して彼は顔の半分以上を隠すような大きな仮面をつけていた。そのため彼だとわからないのだろう。いつも彼の周りに侍っている女性達がいないのだ。
いつも彼を見つめてばかりのセレスティナはすぐに彼だとわかった。
今日もまた彼を見つめていると、その彼と目があった。すると彼はまっすぐこちらへ向かってくる。
「一曲踊っていただけませんか?」
セレスティナにとって夢のような時間だ。ずっと見つめるだけのゲイルとダンスをする。その後エスコートされてソファーで飲み物を片手にお喋りをする。
こういう仮面舞踏会では本名を名乗らない場合がほとんどだ。彼はグレンと名乗りセレスティナはひと時の夢ならと愛称であるティナと名乗った。
夢なら覚めないで。そう祈らずにいられない。
仮面のおかげでそれほど緊張せずに話せた。
セレスティナは興奮して強くもないのにお酒を飲み過ぎて酔ったようだ。
それに気づいたグレンが用意されていた客室に連れて行ってくれた。
「ここまでで大丈夫です。ありがとうございます。
今日は貴方とダンスと楽しい会話ができ、夢のような時間を過ごすことができて嬉しかったです。
私は休めば大丈夫ですからお気になさらずどうぞ会場へお戻りください。」
ふらふらするセレスティナをそのままに出来ず、部屋に入ってソファーに座らせる。
潤んだ瞳、チェリーのような唇。白い肌がほんのりピンクになり、足元がおぼつかないのでよろけてしなだれかかる身体からのぼる甘い香り。腕に当たる柔らかな胸。全てが男を無自覚に誘っている。
グレンは欲望を抑えきれなくなり、セレスティアに覆いかぶさるようにして唇を奪った。
「う、うぅん…」
角度を変えて何度も口付けを交わす。最初は硬く結ばれていた唇が綻んだ瞬間グレンの舌が口内に入り口腔を蹂躙する。
セレスティナはとろんと惚けてきた。
そんなセレスティナを抱き抱え隣の寝室に連れて行く。
セレスティナはゲイルのことが好きだが恋人でもないゲイルと肌を合わせるのに戸惑いはなかったわけではない。
酒に酔っていたことと彼から熱のこもった瞳で見つめられ正常な判断ができていなかったのもあるが、一番は好きな人に求められているという事が大きかったのだ。
夜会などでは一夜の恋が往々にしてあると言われるが、色事に疎いセレスティナはそんな事は知らずにいた。
彼に熱く甘く『ティナ』と何度も呼ばれ甘く溶かされて純潔を散らしたが、セレスティナは後悔していなかった。
そう、朝までは……。
窓からカーテン越しに朝日が入り室内は明るくなった。
お腹に回された腕も背中に当たる暖かい温もりもセレスティナの身体のあちこちについた赤い花も全てが幸せを感じさせる。
気だるい身体を気力で起こして彼を見るといつもはキチッとしている髪が乱れて幼い雰囲気になっている。
こんな彼の姿が見られるなんて…そう幸せを感じていた。
セレスティナが身体を動かしたので彼も目を覚ました。
「おはようティナ。身体は大丈夫?」
軽いキスと共に優しく問いかけられた。お互いがまだ裸でいる事に気づき、セレスティナは真っ赤になってコクコクと頷く。
「私はグランベリー伯爵家のゲイル。君はカクテスト伯爵令嬢だよね。順番は逆になってしまったが、結婚してほしい……」
セレスティナは天にも登る気持ちで「はい」と応えようとした。がその後の言葉で地獄へ突き落とされた。
「マリアティナ。」
息が止まるかと思った。実際に数秒から十数秒は止まっていただろう。
ここで人違いだと言い出せなかった。
姉のマリアティナと妹のセレスティナだ。
顔は一卵性の双子だけあってそっくりだが、姉のマリアティナは溌剌としておとなしいセレスティナと比べて垢抜けている印象だ。
それは瞳の色にも現れている。マリアティナの瞳は明るいマリンブルーに対しセレスティナは涼しげな湖のように澄んだコバルトブルー。
2人が並んでいなければ同じ金髪で体型もほぼ同じで瞳の色が違うのは微かに分かる程度でしかない。
年頃の2人は夜会や舞踏会によく招待されるが、セレスティナは余り乗り気になれない。いつだって2人でいても姉だけ誘われる。1人でいるとセレスティナはマリアティナと間違われて誘われる。相手は間違いに気づくと、セレスティナでも良いよという雰囲気になる。それが嫌でなるべく誘われないように壁の花になってしまうのだ。そして毎度落ち込む。
そんなセレスティナには憧れの男性がいた。
彼は騎士団に所属しているグランベリー伯爵の次男でゲイル・グランベリー。
以前街に買い物に出掛けた時に怪しげな輩に絡まれ連れ去られそうになったところを助けられ家まで送ってもらったのだ。
その時セレスティナは恋に落ちた。引っ込み思案なセレスティナはお礼を伝えるだけで何も行動にうつす事はなく、伯爵子息だが騎士であるゲイルが出席する夜会は数少ない。引っ込み思案のセレスティナは見かけても声さえかけられず遠くから見ているだけだった。
ゲイルは整った顔に細身だが均整の取れた身体で若い女性に人気がある。貴族ではあるが騎士団にいる彼は夜会には必要最小限しか出席しない。それでも出席した夜会などで女性が彼を囲むのはいつものことだ。そして優しい彼はそんな女性達を無碍にできずにいるのだ。
そんないつもの光景が今回は違った。
今回呼ばれたのは趣向を変えた仮面舞踏会だ。
仮面舞踏会なのでみんなが思い思いの仮面をつける。殆どが目の周りだけの仮面に対して彼は顔の半分以上を隠すような大きな仮面をつけていた。そのため彼だとわからないのだろう。いつも彼の周りに侍っている女性達がいないのだ。
いつも彼を見つめてばかりのセレスティナはすぐに彼だとわかった。
今日もまた彼を見つめていると、その彼と目があった。すると彼はまっすぐこちらへ向かってくる。
「一曲踊っていただけませんか?」
セレスティナにとって夢のような時間だ。ずっと見つめるだけのゲイルとダンスをする。その後エスコートされてソファーで飲み物を片手にお喋りをする。
こういう仮面舞踏会では本名を名乗らない場合がほとんどだ。彼はグレンと名乗りセレスティナはひと時の夢ならと愛称であるティナと名乗った。
夢なら覚めないで。そう祈らずにいられない。
仮面のおかげでそれほど緊張せずに話せた。
セレスティナは興奮して強くもないのにお酒を飲み過ぎて酔ったようだ。
それに気づいたグレンが用意されていた客室に連れて行ってくれた。
「ここまでで大丈夫です。ありがとうございます。
今日は貴方とダンスと楽しい会話ができ、夢のような時間を過ごすことができて嬉しかったです。
私は休めば大丈夫ですからお気になさらずどうぞ会場へお戻りください。」
ふらふらするセレスティナをそのままに出来ず、部屋に入ってソファーに座らせる。
潤んだ瞳、チェリーのような唇。白い肌がほんのりピンクになり、足元がおぼつかないのでよろけてしなだれかかる身体からのぼる甘い香り。腕に当たる柔らかな胸。全てが男を無自覚に誘っている。
グレンは欲望を抑えきれなくなり、セレスティアに覆いかぶさるようにして唇を奪った。
「う、うぅん…」
角度を変えて何度も口付けを交わす。最初は硬く結ばれていた唇が綻んだ瞬間グレンの舌が口内に入り口腔を蹂躙する。
セレスティナはとろんと惚けてきた。
そんなセレスティナを抱き抱え隣の寝室に連れて行く。
セレスティナはゲイルのことが好きだが恋人でもないゲイルと肌を合わせるのに戸惑いはなかったわけではない。
酒に酔っていたことと彼から熱のこもった瞳で見つめられ正常な判断ができていなかったのもあるが、一番は好きな人に求められているという事が大きかったのだ。
夜会などでは一夜の恋が往々にしてあると言われるが、色事に疎いセレスティナはそんな事は知らずにいた。
彼に熱く甘く『ティナ』と何度も呼ばれ甘く溶かされて純潔を散らしたが、セレスティナは後悔していなかった。
そう、朝までは……。
窓からカーテン越しに朝日が入り室内は明るくなった。
お腹に回された腕も背中に当たる暖かい温もりもセレスティナの身体のあちこちについた赤い花も全てが幸せを感じさせる。
気だるい身体を気力で起こして彼を見るといつもはキチッとしている髪が乱れて幼い雰囲気になっている。
こんな彼の姿が見られるなんて…そう幸せを感じていた。
セレスティナが身体を動かしたので彼も目を覚ました。
「おはようティナ。身体は大丈夫?」
軽いキスと共に優しく問いかけられた。お互いがまだ裸でいる事に気づき、セレスティナは真っ赤になってコクコクと頷く。
「私はグランベリー伯爵家のゲイル。君はカクテスト伯爵令嬢だよね。順番は逆になってしまったが、結婚してほしい……」
セレスティナは天にも登る気持ちで「はい」と応えようとした。がその後の言葉で地獄へ突き落とされた。
「マリアティナ。」
息が止まるかと思った。実際に数秒から十数秒は止まっていただろう。
ここで人違いだと言い出せなかった。
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