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6 悪役令嬢 マリエッタ
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わたくしはマリエッタ・マキナイル。マキナイル侯爵の娘。2つ上に兄ジェイドがいます。優秀な兄は将来はこのマキナイル侯爵家を継ぎます。
そしてわたくしはこの国の第二王子サリントン殿下の婚約者なのです。
7歳の頃に父に連れられて王城に行った時にサリントン殿下に見初められ婚約者となりました。その頃は婚約者の意味も役割もわからないままでした。
ああ、あの頃に戻ってやり直したい。
現実逃避している場合ではありませんね。
目の前の少女。今日入学してきた1年生で関わりのなかったリリアナが話し終わります。到底理解し難い話です。
「そのヒロインの言うとおりになるとわたくしは婚約破棄されてしまうの?それに侯爵家から追放もしくは修道院入り?その方の願望、妄想なのではなくて?」
サリントン殿下に婚約破棄された後の未来を聞かされてそう思わずにいられない。
だって殿下のゴリ押しでの婚約なのに、向こうから婚約破棄だなんて…。
わたくし以外に好きな方ができた。それをわたくしが嫉妬して嫌がらせをするなんて…。ありえない。嫉妬なんてありえなさすぎる。はっきり言って殿下との婚約は義務だけで殿下に好意を寄せていない。わたくしが好意を寄せているのは……。
「ですが…
「お話中失礼。マリエッタ、ちょっといいかな?」
突然、兄が声をかけてきた。いつもの取り巻きといると思っていたようだ。
リリアナは急いで立ち上がり、頭を下げる。
「どうぞ私の事は気になさらず、先にお話しください。」
兄はリリアナに手で座る様に示しわたくしに視線を向ける。
「殿下を見なかったか?」
「殿下は生徒会室に向かうとおっしゃってましたわ。わたくしが先に教室から出てしまったのでその後はわかりません。」
兄に向けて話しをしていたらリリアナは表情を変えた。
「あっ、あの、お話中口を挟む事をお許しください。マリエッタ様、先程のヒロインが出会いイベントで、図書室へ行くと言ってました。そして…マリエッタ様の足止めを指示されました。先にそのことをお話しするべきでした。そのつもりはなかったのですが結果的に私のせいでお手を煩わせてしまい申し訳ありません。」
リリアナはわたくしと兄に頭を下げた。わたくしは呆れ、兄は意味がわからないといった表情で聞き返した。
「ヒロイン?出会いイベント?」
リリアナはわたくしにした話をもう一度兄にしはじめた。そしてわたくしはこれに便乗して婚約解消できないかと考えた。
婚約破棄される前に解消すればいいのではなくて?いじめなどしなければ、というかする気もないが…家からの追放や修道院入りもないのでは?
そのためには兄は勿論、この目の前の少女も巻き込むことになるだろう。だが、この少女はもうすでに巻き込まれているのだから巻き込む相手がヒロインかわたくしかの違いだけだ。
マリエッタはこれからのことを考えた。
話し終わりリリアナを先に帰して兄に向かいあう。
「お兄様。先ほどの話をどう思います?」
兄は少し考えて
「内部の人間しか知らない情報も知っていた。それだけなら諜報の優れた者がいるのかもしれないと言うだけだが、未来の話もしていた。それが本当の未来かどうかはまだわからないが、あの真剣さは本当かもしれない。だからこそ本当ならなんとかしなくてはいけない。」
流石は優秀な兄だ。疑いつつも本当だった時の対処を考え始めている。
わたくしがあの話通りに婚約破棄されてしまうとマキナイル侯爵家にも被害が及ぶもの。
もし、もしわたくしがあの話通りに動かなければ…。違う形で婚約を破棄できるのなら…。
それならわたくしの想いも叶うかしら?
一縷の望みをかけてみよう。
「お兄様。相談があるのですが……」
マリエッタの相談を受けて対処を考える。確かにこのまま彼女の話通りに進んでしまうより全然良い。父であるマキナイル侯爵を巻き込み最善の方法を考え進めよう。
そのためにはサポートキャラだという彼女を巻き込まなくてはいけない。
リリアナ・モントン。ギラギラとした肉食系ではなく、ふわふわと砂糖菓子のような穏やかそうな少女。それでいて潔く聡い。
モントン伯爵家の長女。確か5歳年上の兄がいる。モントン伯爵家はどこの派閥にも入っておらず、目立たないが堅実な仕事をし、散財もなくそこそこ裕福な家庭だ。
巻き込んでも大丈夫だ。
このままマリエッタの思惑通りに進めば…そう思い、知らず顔がほころんでいた。
そしてわたくしはこの国の第二王子サリントン殿下の婚約者なのです。
7歳の頃に父に連れられて王城に行った時にサリントン殿下に見初められ婚約者となりました。その頃は婚約者の意味も役割もわからないままでした。
ああ、あの頃に戻ってやり直したい。
現実逃避している場合ではありませんね。
目の前の少女。今日入学してきた1年生で関わりのなかったリリアナが話し終わります。到底理解し難い話です。
「そのヒロインの言うとおりになるとわたくしは婚約破棄されてしまうの?それに侯爵家から追放もしくは修道院入り?その方の願望、妄想なのではなくて?」
サリントン殿下に婚約破棄された後の未来を聞かされてそう思わずにいられない。
だって殿下のゴリ押しでの婚約なのに、向こうから婚約破棄だなんて…。
わたくし以外に好きな方ができた。それをわたくしが嫉妬して嫌がらせをするなんて…。ありえない。嫉妬なんてありえなさすぎる。はっきり言って殿下との婚約は義務だけで殿下に好意を寄せていない。わたくしが好意を寄せているのは……。
「ですが…
「お話中失礼。マリエッタ、ちょっといいかな?」
突然、兄が声をかけてきた。いつもの取り巻きといると思っていたようだ。
リリアナは急いで立ち上がり、頭を下げる。
「どうぞ私の事は気になさらず、先にお話しください。」
兄はリリアナに手で座る様に示しわたくしに視線を向ける。
「殿下を見なかったか?」
「殿下は生徒会室に向かうとおっしゃってましたわ。わたくしが先に教室から出てしまったのでその後はわかりません。」
兄に向けて話しをしていたらリリアナは表情を変えた。
「あっ、あの、お話中口を挟む事をお許しください。マリエッタ様、先程のヒロインが出会いイベントで、図書室へ行くと言ってました。そして…マリエッタ様の足止めを指示されました。先にそのことをお話しするべきでした。そのつもりはなかったのですが結果的に私のせいでお手を煩わせてしまい申し訳ありません。」
リリアナはわたくしと兄に頭を下げた。わたくしは呆れ、兄は意味がわからないといった表情で聞き返した。
「ヒロイン?出会いイベント?」
リリアナはわたくしにした話をもう一度兄にしはじめた。そしてわたくしはこれに便乗して婚約解消できないかと考えた。
婚約破棄される前に解消すればいいのではなくて?いじめなどしなければ、というかする気もないが…家からの追放や修道院入りもないのでは?
そのためには兄は勿論、この目の前の少女も巻き込むことになるだろう。だが、この少女はもうすでに巻き込まれているのだから巻き込む相手がヒロインかわたくしかの違いだけだ。
マリエッタはこれからのことを考えた。
話し終わりリリアナを先に帰して兄に向かいあう。
「お兄様。先ほどの話をどう思います?」
兄は少し考えて
「内部の人間しか知らない情報も知っていた。それだけなら諜報の優れた者がいるのかもしれないと言うだけだが、未来の話もしていた。それが本当の未来かどうかはまだわからないが、あの真剣さは本当かもしれない。だからこそ本当ならなんとかしなくてはいけない。」
流石は優秀な兄だ。疑いつつも本当だった時の対処を考え始めている。
わたくしがあの話通りに婚約破棄されてしまうとマキナイル侯爵家にも被害が及ぶもの。
もし、もしわたくしがあの話通りに動かなければ…。違う形で婚約を破棄できるのなら…。
それならわたくしの想いも叶うかしら?
一縷の望みをかけてみよう。
「お兄様。相談があるのですが……」
マリエッタの相談を受けて対処を考える。確かにこのまま彼女の話通りに進んでしまうより全然良い。父であるマキナイル侯爵を巻き込み最善の方法を考え進めよう。
そのためにはサポートキャラだという彼女を巻き込まなくてはいけない。
リリアナ・モントン。ギラギラとした肉食系ではなく、ふわふわと砂糖菓子のような穏やかそうな少女。それでいて潔く聡い。
モントン伯爵家の長女。確か5歳年上の兄がいる。モントン伯爵家はどこの派閥にも入っておらず、目立たないが堅実な仕事をし、散財もなくそこそこ裕福な家庭だ。
巻き込んでも大丈夫だ。
このままマリエッタの思惑通りに進めば…そう思い、知らず顔がほころんでいた。
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