【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音

文字の大きさ
4 / 12

4 「最悪だ」

しおりを挟む
ルーリラは幸せだった。

騎士団の公開試合をアイリスに連れられて何度か見に行っていた。
その時フェルマン様は容姿だけでなく実力もあり素敵な騎士として目を奪われた1人だった。
騎士としての真剣さに目を奪われ、その後彼の彼女への一途な恋心を聞き憧れに変わった。

それが恋に変わったのはあの事件だった。
目の前で自分を守ってくれたのだ。正確には守るべき対象は王子だったのだが、そこは年頃の乙女で自分に都合よく解釈したのだ。
だけど、彼の元恋人への想いも聞いて知っていたからこそ婚約は断った。まあ、傷も残らないと言われたのだし、それが当たり前だ。
それと1番の理由は彼の言うと言う言葉だ。責任感だけで彼を縛りたくなかった。
政略結婚は貴族令嬢では避けて通れないだろう。だが、憧れの人と責任感だけで結婚するのは嫌だった。
責任感から結婚生活は気遣いばかりしてくるだろう。これも一種の政略結婚だが、お互いを思い合うことなどできないかもしれない。

なのに……あの日プロポーズされて責任感だけではないのでは?と自分に都合よく取ってしまい頷いてしまった。
彼はとても優しくて誠実で理想の婚約者だった。
だからつい浮かれすぎて婚約の経緯を忘れてしまっていたのだ。




婚約が成立して6ヶ月。
彼と別行動していたパーティでアイリスを見つけた。アイリスが婚約パーティではきちんと話ができなかったから彼と話がしたいと言い一緒に探していた。
彼は会場の外で警備していた騎士団の仲間達と話をしていた。今日の彼はパーティの出席者としてここにいる。

「フェルマン、お前うまくやったよな。侯爵家令嬢と婚約とか。おかげでドレン伯爵だっけ?爵位も手に入ったんだろ。そりゃあ、恋愛感情なくても愛を囁けるよな。」

近くに寄ればそんな声が聞こえてきた。
騎士団にいるのはほぼ平民か貴族の次男以降で爵位を継げないものばかりだ。
爵位を持つ者にやっかみがあるのは知っている。だから色々と誇張して言うのもわかるから、そんな事に傷つく事はない。だってそれは真実だから…。
彼は否定してくれているが、今出ていけば彼にも彼の仲間にも気まずい思いをさせるだけだと木の影になりこちらに気が付いていないのでそのままアイリスと去ろうとしたその時

「ああ、そうだ。お前の恋人だったノイマン伯爵に嫁いだ幼なじみのミラだっけ。旦那と愛人との間に子供ができて追い出された。って聞いたぞ。」
「俺も聞いた。離縁されて実家に戻ってきてるそうだ。お前に会いたい。やり直したいって言ってるらしいぞ。お前も彼女の事を忘れられないんだろう?
婚約を解消して幼なじみとの愛を貫いたらどうだ。お前達の純愛は有名だからきっと相手も周りも理解してくれるさ。」

彼の幼なじみが離婚して彼の元に帰ってくる。その言葉に、今までの幸せ婚約は責任感という名の薄氷の上に成り立っていて、彼の彼女への愛でそんな氷はすぐに溶けて冷たい水の中に落ちて凍りついてしまう。そんな気がした。

気遣うようにこちらを見るアイリスにぎこちなく微笑み返して、なんとか気合を入れて足を一歩踏み出したその時

「最悪だ」

今まで聞いた事もない彼の怒りが滲んだ声が聞こえてきた。そして彼は立ち去ったのだろう。怒っている彼を宥める彼らの声も段々遠くなっていった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛してしまって、ごめんなさい

oro
恋愛
「貴様とは白い結婚を貫く。必要が無い限り、私の前に姿を現すな。」 初夜に言われたその言葉を、私は忠実に守っていました。 けれど私は赦されない人間です。 最期に貴方の視界に写ってしまうなんて。 ※全9話。 毎朝7時に更新致します。

【完結】婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

大好きな恋人が、いつも幼馴染を優先します

山科ひさき
恋愛
騎士のロバートに一目惚れをしたオリビアは、積極的なアプローチを繰り返して恋人の座を勝ち取ることに成功した。しかし、彼はいつもオリビアよりも幼馴染を優先し、二人きりのデートもままならない。そんなある日、彼からの提案でオリビアの誕生日にデートをすることになり、心を浮き立たせるが……。

私ってわがまま傲慢令嬢なんですか?

山科ひさき
恋愛
政略的に結ばれた婚約とはいえ、婚約者のアランとはそれなりにうまくやれていると思っていた。けれどある日、メアリはアランが自分のことを「わがままで傲慢」だと友人に話している場面に居合わせてしまう。話を聞いていると、なぜかアランはこの婚約がメアリのわがままで結ばれたものだと誤解しているようで……。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

【完結】貴方の傍に幸せがないのなら

なか
恋愛
「みすぼらしいな……」  戦地に向かった騎士でもある夫––ルーベル。  彼の帰りを待ち続けた私––ナディアだが、帰還した彼が発した言葉はその一言だった。  彼を支えるために、寝る間も惜しんで働き続けた三年。  望むままに支援金を送って、自らの生活さえ切り崩してでも支えてきたのは……また彼に会うためだったのに。  なのに、なのに貴方は……私を遠ざけるだけではなく。  妻帯者でありながら、この王国の姫と逢瀬を交わし、彼女を愛していた。  そこにはもう、私の居場所はない。  なら、それならば。  貴方の傍に幸せがないのなら、私の選択はただ一つだ。        ◇◇◇◇◇◇  設定ゆるめです。  よろしければ、読んでくださると嬉しいです。

もう演じなくて結構です

梨丸
恋愛
侯爵令嬢セリーヌは最愛の婚約者が自分のことを愛していないことに気づく。 愛しの婚約者様、もう婚約者を演じなくて結構です。 11/5HOTランキング入りしました。ありがとうございます。   感想などいただけると、嬉しいです。 11/14 完結いたしました。 11/16 完結小説ランキング総合8位、恋愛部門4位ありがとうございます。

処理中です...