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第一章
2-6.
しおりを挟むそんな日が続いたある夜のことだ。
夜が更け、草木も眠った頃、
誰にも気取られないよう、こっそりと自室から抜け出しヘーゼルの部屋の前に陣取る。
今夜も長丁場の孤独な戦いが始まるな…と思い、ふと窓の外を見る。
やけに明るいと思えば、今宵は満月なのか。この方向からは月は見えないが、ちょうどヘーゼルの部屋の窓だと月を望めるはずだ。
そういえば。
ヘーゼルらしき人影を目撃した夜も、まるい満月が浮かぶ晴れた夜だった。
「……………」
なんとなく胸騒ぎがした。
扉に近付き、中の様子を伺う。動く気配はない。部屋の主人たるヘーゼルは眠っているはずだ。
扉を開けて、子どもが眠っている姿を確認出来ればそれで良い。
もしヘーゼルが目覚めてしまった時に言うそれらしい言い訳を考えながら、扉の軋みに気を配りそうっと開けた。
細く開いた部屋の中を見てすぐ、アレックスはばっと扉を全開にした。
「いない…」
踏み込んだ室内にヘーゼルの姿はなかった。駆け寄った大きな寝台はもぬけの殻で、主人のいない車椅子だけがぽつねんと佇んでいる。あの黒い犬もいない。
急いで踵を返しかけて、ぐ、と思いとどまる。
領主の息子の姿がないなど一大事だ。それもあんなに小さな子どもがいなくなるなど。もし、誘拐なんてされていたらきっと怖い思いをしているだろう。
でも、アレックスの勘の通り、あの晩、庭を歩いていたのがヘーゼルだったとしたら。本当は歩くことが出来るのだとしたら…。
少なくともこの部屋の前に来てから中から悲鳴や物音はしなかった。今、ぐるりと部屋を見渡しても争ったような痕跡はない。誰かが侵入したような形跡もない。
(でも、もし本当に何かあったんだとしたらどうする…! 俺の勝手な想像で空回っている間にもし手遅れになったら…!)
アレックスはぐるぐると巡る思考に雁字搦めになり堪らず目を強く閉じる。
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