ヘーゼル坊ちゃんの言うとおり!


「くっそー…こんなの給金に見合わん。ぜったい追加で請求してやるからな…」

俺は腹の底から叫んだ。
…心の中で。

王都からはるばる来た俺に与えられた仕事は、
「ヘーゼルくんに取り入り、彼の一挙手一投足を見つめなさい」

---幼い子どもの監視役だった。

「庭のお花を見ていたんです。おかあさんが好きな野薔薇が咲いているから」

窓辺から庭を眺めてヘーゼルが言う。
不自由となった脚を車椅子に乗せて。

「観察? 監視の間違いではありませんか?」

あんな小さな子どもを監視だって?

「彼は唯一の生還者です。有力な情報を得られる可能性があるのは、もはや彼しかいない。貴方には期待していますよ、アレックス・コストナー」

村に蔓延する謎の病。
その唯一の回復者がヘーゼルだという。
病かなんだか知らないが、金を積まれるならやってやるさ。

楽勝の仕事だと拳を握った矢先、

「----魔女、ですか?」

俄に暗雲が立ち込める。

「ヘーゼル様は魔女を退けた英雄の血筋なんですよ」

魔女伝説?
時代錯誤も良いとこだ。
今は科学の時代だぞ。

「…本当にあったことなのです」

たった8歳だ。
生まれて8年しか生きていない子どもだぞ。

「神がいるのなら、悪魔も、魔女もいる。ねえ、先生。そう思いませんか?」

…だったら。
幼い子どもがあんな目をするか…?

「は…、か、隠し通路…?」

蔓延する原因不明の流行り病。
領地に伝わる魔女伝説。
子どもが隠している秘密。
その一端に触れたとき、少女の紅いくちびるが弧を描く。

「----可愛いでしょう? わたしのオモチャ」


俺の一攫千金の仕事はどうなる!?


※ 実際の本編のテンション及びセリフとは少々異なる場合があります。
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