現代の奴隷は我が家の天使で神様は全力で幸せにする

猫カレーฅ^•ω•^ฅ

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奴隷の楽園の崩壊

040_かみさまの地獄

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何が何だか分からない。
パトカーに乗せられて、あれよあれよという間に檻の中に閉じ込められてしまった。
とても現実とは思えないようなことが目の前に起きていた。

テレビで見る様な鉄格子の他に、金網も取り付けてあり、鉄格子を掴むことすらできないようになっている。
しかも、朝となく昼となく呼び出されて『取調室』と書かれた部屋でずっと怒鳴られている。

あまりにも現実味がなさ過ぎて心が付いていかない。

『お前がやったんだろう!?』
『少女の人生を壊した』
『人の道を外れている』
『異常者』

など色々と言われているが、とても自分のこととは思えず、どうしてこうなったのか考えていた。
誰にも連絡ができないし、取り調べの時間もかなり長い。

いつ終わるか分からないこの状況に、俺の心はどんどんすり減っていった。

気になるのはシロのことばかり。
体長は良くなっただろうか。
ひどい目にあわされていないだろうか。

何度も男からペンを渡され、言う通りに書けと言われた。

『金銭目的で少女を誘拐、監禁しました』
『思い通りに行かなかったので頭にきて少女に虐待をくわえ続けました』
『間違いありません』

断片的に言っている言葉を覚えているが、誘拐?
誰が?
誰を?

来る日も来る日も同じことの繰り返し、早くこの状態から解放されたいと考え始めていた。
早くシロを迎えに行かないと。
早く安心させてやらないと。

俺が解放されたのは23日も後のことだった。
永遠にも思えたけれど、数字にしたら23日・・・

警察署を出ると、たくさんの人がいてカメラを構えていた。
何かの撮影だろうかと思っていたが、俺の顔を見ると一斉にフラッシュを焚き始めた。

レポーターたちが一斉に騒がしくなった。

何か起きたのだろうか?
俺はとにかく疲れていた。

いきなり家から連れ出されたので、サイフも持っていない。
そして、ここがどこかも知らない。
歩いて家まで帰るのか・・・

シロは・・・

その後のことは記憶がない。
やっと、うちに着いたらひどいありさまだった。

俺の部屋の玄関にはたくさんの張り紙がしてあった。

『鬼畜』
『出ていけ!!』
『人でなし』
『犯罪者』
『ゴミ』
『クズ』

などなど・・・

何がなんだか・・・
そして、家の鍵が締まっている。

俺は鍵を持っていない。
大家さんに開けてもらわないと・・・

やっと上がってきた階段を再び降りて、1階の大家さんの家のドアをたたく。

(トントン)「すいません」

(ガチャ)「はーい」

見慣れた大家さんの顔を見た瞬間、俺はその後の記憶がない。

***

目が覚めたら俺は畳の上で寝ていた。
何だっけ?

昨日は何を・・・ここは・・・

『はっ』として起き上がった。

ここは大家さんの部屋。
お腹にはタオルがかけられていた。

「あ、起きられました?びっくりしたんですよ?突然倒れるから・・・」

「・・・」

「その・・・大変でしたね・・・でも・・・」

「今日は何日ですか?」

「2月8日ですよ」

「あの・・・シロは・・・部屋の中ですか?」

「シロちゃんは・・・ご両親のところに戻られました」

「両親!?両親が見つかったんですか!?」

「ご両親はずっと・・・5年間、娘のまひろさんを探し続けていました」

「どういうことですか?すいません。全然分からないです。もう少し分かるように教えてください」

「きゃっ」

大家さんがおびえた様子で飛び退いた。

「あ、すいません。驚かせるつもりじゃ・・・」

「・・・絶対暴れないって約束してもらえますか?」

「暴れる・・・?俺が?俺は暴れません」

「落ち着いて聞いてもらえますか?」

「もちろんです」

できるだけ大家さんを刺激しないように、ゆっくり深呼吸してから言った。

大家さんがお茶を出してくれた。
お茶を飲むと内蔵に浸みていくのが分かった。

そう言えば、いつぶりだろう。
ちゃんと飲んだ感覚があるのは・・・

「DVD・・・」

「え?」

「渡したDVD・・・見ていただけましたか?」

DVD・・・ああ、大家さんが間違えて渡したやつ・・・

「あれは、実は間違っていて、テレビ番組が入ったやつでしたよ?公開捜査の」

「そう、それです。あれの3番目くらいのご夫婦ご覧になりましたか?」

「どんな話だったか・・・山で行方不明だったか?誘拐だったか?」

「そう、5年前に誘拐された娘さんの話です」

「ああ、それが・・・」

「あれが、まひろさん・・・シロちゃんの本当の名前です」

「え?シロの両親って夜逃げした隣の家の・・・」

「まひろさんのご両親はずっと同じ場所に住まれていますよ、いつでもまひろさんが戻ってこられるように・・・」

あれ?別の世界線に来たのか?
大家さんが言っていることがまるで分らない。

「私の家は昔ちょっと羽振りが良かった時があって・・・こっちでもある程度顔が聞いたそうです」

また話が飛んだのか?

「私が一人で、こちらで大家をするということで、色々助けてくれる方を祖母に紹介されました。それが一ノ瀬(いちのせ)夫妻です」

「はあ・・・」

「その一ノ瀬夫妻が、たまたまテレビに出ることになって・・・5年前に誘拐され、その後ずっと行方不明だった娘さん、まひろさんの情報を求めて」

「え?それって・・・」

「まひろさんは現在15歳。あなたがシロちゃんと呼んでいた女性です」

「ええ!?シロが15歳!?ちょっと待ってください!」

俺は頭の中で整理した。

「俺の隣に住んでいた夫婦がシロの両親じゃ・・・」

「神谷さんの家のお隣は私が来る前に夜逃げしたと聞きましたが・・・」

「そう!それです!ベランダにシロを置いたまま逃げて・・・それで俺が・・・保護して・・・」

「え!?それってすいません、本当ですか!?」

「だって、俺ここに来てまだ1年たってないですよ。4月からだし」

「書類上は確かにそうなってました・・・」

「前の大家さん・・・おばあさんに聞かれてもいいです。俺がシロを保護したのは夏休みの頃だから・・・確か7月です。」

「ちょ、ちょっと待ってください」

大家さんはどこかに電話をしていた。

「お待たせしました。確かに祖母も神谷さんは去年の4月に入居されたって・・・」

「書類見たら分かりますよね?」

「みんな警察が持って行ってしまって・・・」

「じゃあ、隣に住んでいたのって・・・」

「それも祖母に聞いてみたのですが、元々は若いサラリーマンの方に貸したそうです」

「サラリーマン・・・」

「それでも、中年の女性を見たという話もあって、家賃は振り込まれていたので突き詰めなかったそうです」

大家さんのおおらかさが仇になったのか・・・

「つまり、俺のお隣が誘拐した犯人かもしれなくて、シロはずっと隣に監禁されていたのかもってことですか?」

「それで、シロは・・・どこに行ったら・・・」

「すいません・・・」

「え?」

「お教えできないんです」

「え!?でも、何か誤解があったんですよね!?シロは俺に会いたがっているはずで・・・」

「ご両親との約束で、住所などを教えないことにしていて・・・」

「でも、名前!そう!名前で調べたら!もう一度教えてください!」

「それは・・・私のうっかりで・・・すいません、教えられません」

しまった、興奮して名前を聞き忘れた。
確か・・・せ・・・せ・・・イノセとか、そんな名前だったような・・・

「私がテレビとご両親に・・・連絡しました」

「大家さんが・・・どうして!?」

「まひ・・・シロちゃんの肌を見たら・・・裏で酷いことをしているのかも・・・って思ってしまって・・・」

それで・・・大家さんは大家さんなりにシロを助けようと思ってくれたのか。

「あれは・・・俺が出会った時には既に古い傷になっていました。俺も気になってはいたけど、俺しか見ないならどうでもいいかって最近ではあんまり・・・」

大家さんに向き合って聞いた。

「その・・・ご両親を紹介してもらう訳にはいかないでしょうか?」

「・・・警察にも取り次がないように言われていて・・・本当は私が神谷さんとお話しするのも・・・」

「え!?そうなんですか!?・・・ああ、俺って誘拐犯で、監禁していて、虐待している犯人って思われてたから・・・」

「すっ、すいません!私ったら、シロちゃんの顔を・・・表情をずっと見ていたのに・・・警察の方らか洗脳されているかもって聞いてて・・・」

「なるほど・・・」

「連日テレビでも神谷さんのことが・・・」

「え!?」

「ワイドショーなんかで・・・」

「俺のことテレビに出てるんですか!?」

「・・・元々公開捜査の番組で見つかったかもしれませんが、神谷さんが警察に連れていかれてから連日・・・シロちゃんは未成年ですし顔も名前も出ていませんが、神谷さんは・・・」

「犯人扱い・・・ですか・・・」

そこからは地獄だった。
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