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3.嫌われたらもう生きていけない

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「ユーコ、なんで返信が『さぁね?』なんてそっけないのー!? 私の気持ち知ってたんなら、フォローしてよぉ!」
「自分の恋愛なのに他人を頼んないでよ。誤解されるのが嫌ならさっさと告白でもなんでもすればいいじゃん」
「それが出来たら苦労しないってー!」

 私が岡本のことを好きになったのは去年の冬のことだ。
 朝の満員電車で私はお尻を触られてた。気持ち悪くて、でも怖くて声も出せなかった。
 次の駅で降りるって決めて、それまでの我慢だからって耐えてた時。

「何やってんだよおっさん!」

 離れた場所にいたのに私に気がついて大きな声を上げてくれたのが、岡本だった。
 その瞬間にさっと手は離れて、次の駅で人波をかき分けて来てくれた岡本に手を引かれて電車から降りた。
 私の後ろに立ってたおじさんも周りの人の協力もあって電車を降ろされたけど、「知らない、私じゃない」って結局逃げられてしまった。

 岡本はそのことに私よりもずっと怒ってくれて、それまで反対端のクラスの目立つ男子、くらいにしか知らなかった岡本は私のヒーローになった。

 それから別に用もないのに岡本と同じクラスの子のところに遊びに行ったりしたんだけど、岡本の顔を見ると頭が真っ白になって全然喋れなくて。
 四月になって同じクラスになってからそれはもっと酷くなって、仲良くなりたいのに全然上手くいかない。
 他の人となら何も考えずに仲良くなれるし、話す内容なんて考えなくても喋れるのに。
 岡本だけ、話そうって決めてた話題も忘れちゃう。

 毎日無駄に過ぎてって、いつの間にか岡本に会えない夏休みに突入しちゃって、久しぶりに顔を見れた登校日の今日。
 岡本は金髪になっててますますキラキラしてて、今日こそはって決意も全部吹っ飛んだ。

 今日こそ仲良くなって、夏休みの後半少しでも会える予定を作ろうと思ってたのに。

「……一言『好き』って、それだけ言えば何もかも丸くおさまるのに」
「だからそれが言えたら苦労しないし、それに嫌われてるって誤解されてんの知っちゃったら尚更無理だってー! 絶対に『はぁ? 何言ってんだコイツ、バカにしてんのか?』って思われるに決まってるじゃん! 岡本に嫌われたらもう生きていけない!」
「いやだから、絶対に大丈夫なんだけど……まぁいいや、他人の恋愛ごとに首つっこんでもあんまいいことないし。とにかく私はちゃんとアドバイスしたからね?」

 ユーコがため息をつきながら、さっさとトイレを出て行った。
 絶対ってそんなことなんで言いきれんの? 大丈夫なんて分かるはずないじゃん。
 それともユーコは岡本の気持ちを読み取れる超能力でもあんの?

「私もその能力欲しい! あ、でもそれで嫌われてること知ったら生きてけないからやっぱ要らない!」

 私の叫びに返事をしてくれる人は誰もいなかった。
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