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2.岡本にも気づかれてる!?

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「ねぇ紗知、私はトイレに用なんかなかったんだけどー?」
「えっ、そう? なんかユーコがトイレに行きたいんだろうなーって気がしたんだけど気のせいだった?」
「気のせいにもほどがあるっての」

 トイレで並んで鏡を見ながらリップを直す振りだけする。
 新色だけど悪くない、っていうかむしろめっちゃ発色良いし肌の色にも馴染んでるし可愛い。
 岡本じゃないけど私も髪は染めたばっかだし、トリートメントだっていいやつをしてもらったからツヤツヤだ。
 暑いからってシニヨンにまとめちゃったけど、下ろした方が良かったかな。
 でも下ろすと首元暑いし、汗かきたくないしな。

 鏡の中の自分の顔を見る。
 濃い茶色の髪を一つにまとめて、丸い目にはマスカラ、うるうるリップ。
 制服の真っ白のブラウスに赤いリボン、短くしたチェックのスカート。
 うん、可愛いって言っても許される女子高生だと思う。毎日そんだけ頑張ってるし。
 一人で頷いてると、鏡ごしにユーコと目が合った。

「久しぶりに会ってテンション上がってるのは分かるけど、あんな態度続けてたら岡本に愛想尽かされるよ」
「……へ?」

 何言われたのか分かんなくて、隣に立ってるユーコを直接見る。

「だから、岡本に嫌われても知らないからねって話」
「嫌われ……って、え、いや、どうして岡本のことなんて急に」
「紗知が岡本を好きなことなんて、クラス全員みーんな知ってるから」
「え、ええー!?」

 トイレの中で叫んだ。うるさかったみたいで、ユーコが耳を塞いでる。
 いやでもそんなことどうでもいい。
 クラスみんなが、私が岡本のこと好きなのを知ってる!? 嘘!!

「なんで!?」
「いや、誰とでも仲良くなれる人類全員友達みたいな紗知が岡本だけ露骨に避けてりゃ、そりゃ気が付くなって方が無理でしょ」
「うそ! うそー! お、岡本も!? 岡本にも気づかれてる!?」

 悲鳴を上げる私にため息をついて、ユーコがスマホを手にした。ささって操作して見せられたのはアプリのメッセージ画面。
 一番上に表示されてるやり取りの相手の名前は『岡本』だ。

「ユーコ、岡本と連絡先交換してんの? いいなぁー」
「そりゃ紗知と一番仲良いのが私だからね。でも大事なのはそこじゃないでしょ」
「そうなの?」

 目線を落とすと、岡本からのメッセージがある。
 なんか岡本の許可もなく盗み見るのは悪い気がするけど、目が勝手に文字を読み取ってた。

『俺、紗知に嫌われるようなことなんかしたっけか?』
「……うっ」

 好きなのがバレてるんじゃなくて、むしろ嫌ってるって勘違いされてる!
 いや、いっつも全然上手く話せないし、むしろ顔見るとさっきみたいに逃げるのが普通だから仕方ないかもしれないけど!
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