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17.私のこと、好き、なの?

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 二人でプールから上がって、足だけを水につけながらプールサイドに座る。

「あ、あの、岡本……っ」
「何?」
「もうちょっと離れてくれると……っ!」

 岡本は隣に並ぶんじゃなくて、私を抱きしめながら後ろに座ってる。
 ぴったりくっついてる状況はさっきと何も変わんなくて、こんなんじゃ全然落ち着けない。

「やだ。紗知が異常なほど恥ずかしがってるだけだって分かったから、こうやって捕まえて閉じ込めとかないとまた逃げられそうだし」
「……うっ」

 それは否定できない。
 だって今も逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。早く家に帰ってベッドで枕抱えて転がりたい。
 言葉に詰まった私に、岡本が「やっぱり」ってため息をついた。

「とりあえずはまず、ごめん」
「……っ、そ、それって……あ、あの、返事って、やつ?」

「好き」って告白の返事? ごめんってことは、私のことはそうは見れないってこと? 振られるのは分かってたから、あえて返事は要らないって言ったのに。
 泣き顔を見られなくて済むから、岡本が後ろにいて良かったかも。

「返事って……ああ、紗知が言ってくれた『好き』の返事ってこと? 違う違う」
「……え?」
「そっか、俺も余計なことばっか言って、肝心なこと伝えてなかったな」

 抱き締めてる岡本の腕の力が強くなった。
 耳元に岡本の息遣いを感じる。

「俺も紗知のこと、好きだよ」

 ほんのちょっと緊張した低い声が頭の中に直接響いた。

「ごめんって謝ったのは、紗知のことを誤解して何もかも間違ったこと。無理やり襲ってごめん。謝って済む問題じゃないけど、俺も紗知のことが好きすぎて暴走しすぎた」

 これ、やっぱり現実じゃないかも。
 私は実は熱中症かなんかでぶっ倒れてて、夢でも見てるのかも。
 だってヤバいぐらいにくらくらしてる。

 岡本の腕の中でもぞもぞ動いて、ちょっとだけ後ろを向いた。見上げた岡本の顔にくらくらが酷くなる。

「わ……私のこと、好き、なの?」
「好きだよ。俺はずっと紗知のことが好きで、でも紗知は誰とでも楽しそうに話せんのに、俺だけを露骨に避けてて……嫌われてると思ってたからずっとしんどかった。諦められればいいのに、紗知の笑ってる顔見るとやっぱり好きだって感じて、自分の気持ちなのに全然上手くいかなくて苦しかった」
「……っ」

 私の態度のせいで岡本を苦しめてたなんて、全然知らなかった。

「夏休み入って紗知の顔すら見れなくなって、学校がなきゃ紗知に会うことすら出来ないんだなって痛感させられたんだ。ずっとどうにか紗知と普通に話したいなって思ってたし、嫌われてんなら俺のどこが悪いのか直そうと思ってユーコに聞こうともしたんだけど、なんかもういっかなって思い始めてさ」

 岡本の話には割り込んじゃいけない気がして、私は小さく頷いた。
 プールと岡本と私と、世界がそれだけになっちゃった気分だ。
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