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57.僕の気持ちを想像したことある?*

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「早いことなんてないよ。僕はもう随分我慢したし……何よりいまここでレベッカを僕のものにしておかないと、また君が誰かをこの魅力的すぎる身体で誘惑しようとしだしたら困る」
「そんなことしませんっ」

 そもそもルイス殿下への想いはとっくに跡形もない。
 それにいま胸の中にはエリオット殿下しかいないのに。

「レベッカは突拍子もないことをするから、どうかな? ルイスに迫っている時の僕の気持ちを想像したことある?」
「もしかして……嫉妬、していたんですか?」

 エリオット殿下はいつも笑顔で穏やかだったから、嫉妬なんて感情があることすら信じられないけど。
 そりゃ確かに時々強引だったし、前に押し倒された事も……って、わわ、いま思い出すことじゃなかった。

 エリオット殿下はきょとんと目を瞬かせて、そしてまた緩やかに笑った。
 どういう意味なんだろう?

「エリオッ……んっ」

 大きな両手で頬を包まれて、避けることも出来ずに唇が重なった。
 エリオット殿下の琥珀色の瞳が真っ直ぐに私を見つめていて、その恥ずかしさに慌てて目を閉じる。

 すぐに離れた唇は、でもまたすぐに重ねられた。
 しっとりと触れ合わせられたり、ちゅっと音を立てられたり。何度も何度も繰り返される。
 エリオット殿下の唇は柔らかくて、緊張で力の入っていた身体がゆるゆると解けていくような気がした。

「レベッカ、唇を開いて?」

 どれだけキスされたのかもうよく分かんないでいると、低くて甘い声に言われた。
 ぼんやりと目を開くと、目を細めたエリオット殿下が私を見下ろしている。
 唇を撫でる指先はほんの少しだけ硬い。

 導かれるままに薄く開くと、そのまま指が口内に入れられた。

「レベッカは良い子だね」

 優しい笑顔に褒められて嬉しくなる。

 悪女になろうと思った。
 誰に何を言われても、後悔をするよりも自分の想いを貫こうって。
 そのためには手段を選ばないって。

 でもエリオット殿下の笑顔はそんな思いも優しく溶かされてしまう。

「そのまま僕に任せていればいい」

 またゆっくりと顔が寄せられて、私も目をつむる。
 中に入れられた指によって口を大きく開けさせられて、ぬるりと何かが入ってきた。
 これ、エリオット殿下の舌? もしかしなくてもこれ、ディープキスってやつ?

 気が付くと同時に全身が熱くなる。
 でも顔を包まれてるせいで逃げることは出来なくて、そして指のせいで口を閉じることもできなかった。

「んん……っ」

 軟体動物のようなエリオット殿下の舌が私の舌に絡む。奥で縮こまっているのを引っ張り出される。
 どうしよう、逃げ場がない。必死にシーツを掴んで、エリオット殿下の動きに振り回されないようにする。

 指のせいで上手く唾液を飲むことが出来なくて、口の端からこぼれて落ちた。
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