突然パーティーを追放されてしまったけれど、それは全て僕のためだった

第8話 予想外の光景

　丸一日、ほぼ休憩を取らずに歩き続けることで件の洞窟に到着。
　幸いなことに、ここまで来るのに低級の魔物としか遭遇しなかった。
　正直、辿り着けるかどうかも怪しかったが、ここに来てようやく女神が微笑んでくれたようだ。

　しかし、ブレイジングメアには奇跡が十回起きたとしても叶わない。
　このまま挑めば命を落とすだけだろう。

　それでも、十一回奇跡を起こせば、それでもダメなら十二回・十三回奇跡を起こせば倒せる。
　そんな無茶苦茶な考えに望みを乗せ、ディリスは洞窟へと足を踏み入れた。


　薄暗く、湿った空気の中を歩き続けて数十分。

「ヴルルルルッ！」

　おぞましい鳴き声が洞窟中に響いた。
　恐らくはブレイジングメアのものだろう。

　居場所を探ろうと耳を澄ませると、ふと人の話し声らしきものが微かに聞こえた。

（人……？　あっ、もしかして昨日のＡランクパーティーが来てくれたのかも！）

　ディリスは都合よくそう考え、助太刀するために声がするほうへ走って向かった。


　やがて遠くに大きく開けた広場が見えてきた。

　その先には人の影が三つある。
　ただ負傷しているのか、一人が片膝を付き、残りの二人は横たわっていた。

「――よしっ！」

　ディリスは鞘から剣を抜き、全速力でその人達の元に向かう。

「大丈夫ですか！？　僕も加勢……えっ？」

　そうして広場に出たディリスは言葉を失った。

　視界に映ったのは、横たわっているブレイジングメア。
　それと息も絶え絶えな様子のファインと、気を失っているルーナ、ララの姿だった。

「……でぃ、ディリスか。……ちょうどいい。こっちへ……来い」

　呆然とするディリスに、ファインが途切れ途切れに言う。
　それを聞いたディリスは急いで彼の元へ駆け寄った。

「な、なんでこんなところ――」
「……受け、取れ……」

　ディリスの言葉を遮り、ファインは左手を伸ばしてきた。
　その手には捻れている金色の太い棒が握られていた。

　それを受け取ったディリスは、文献で見たブレイジングメアの絵が脳裏によぎる。

「これ……ブレイジングメアの角。何で僕に……？」
「……エリーゼちゃんに……」

　ファインはそう言ってから、バタっとうつ伏せに倒れてしまった。

　その言葉を聞いたディリスは、何かに気付いたかのようにハッとした表情を浮かべた。
　直後、角の先端を剣で落とし、何度も叩くことで粉末状にする。

　それをファイン、ルーナ、ララに飲ませた。
　その瞬間、三人に刻まれた傷がみるみるうちに塞がっていった。