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本編・取り違えと運命の人
063 冬はつとめて ①
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三日前、ビアンカとマッテオさんは初めてのデートをした。
「ビアンカさん、すっごく可愛い服着てきてくれて、最初に見た時よりずっとずっと夢中になってしまいました」
「ビアンカ、やっぱり戦闘服着て行ったんだ」
「戦闘服?」
「ビアンカがデザインする服、男子受けがものすごくいいんです。流行をさりげなく取り入れつつ、清楚な女子アピールがうまいから。あの服、男子殺しの異名も持ってる」
「「なるほど、戦闘服……」」
リカルドとマッテオさんがぼそりと同時につぶやく。
「ビアンカ、自分の服に自信持ってるから、たぶん本気でデートに臨んでくれたんだとは思うんだけど……」
気を取り直したマッテオさんが続ける。
「あとは、先輩達やリカルドさんのアドバイスに従って、たぶんオーソドックスなデートをしたと思います。芝居見て、カフェでお茶して、ちょっといい店で夕飯、みたいな。どれもおすすめのヤツを選んだから、たぶん大ハズレではないはず」
「なんかものすごいがんばりを感じる」
「中身小学生で振られ続けてるから、アドバイスに従うという鉄則を守らせた」
「ビアンカさん、喜んでくれてるように見えたんですけど……。別れ際の言葉が全然わからなくて」
別れ際の言葉?
『マッテオさん、ありがとう。今日は楽しかったわ』
『ビアンカさん。俺、あなたとお付き合いしたいです。今日、デートして、あなたのこと、ますますいいなって思いました』
直球の告白に、しばらく考えている風だったビアンカは、こう続けたそう。
『マッテオさん、とてもいい人だと思うわ。でも、たぶん、私、あなたの期待にそえない』
意味がわからなくて思わず訊ねる。
「き、期待?」
「最初は無理してなんとかできても、長期的にいろいろ合わせられないだろうって」
料理がそんなに得意じゃないこと。一生仕事を続けたいこと。そして今は仕事がめちゃくちゃ忙しくて、デートの時間が平日の深夜か早朝くらいしか取れないこと。相手の都合に合わせるどころか、会う時間そのものがあまりないこと。
「初めてのデートだからさすがに平日の深夜とか早朝の時間指定なんかできなくて、休日一日なんとか用意したけど、仕事の前倒しと睡眠時間削ってそれだから、これからは無理だろうって。これ、体のいい断りですよね、たぶん」
「俺、ちょっとわかんないんだよね。普通だったら断り文句なんだろうけど。ジュリエッタはどう思う?」
なるほど、ご相談。
「ビアンカは、確かに普段、そんな風な言い方をする子じゃないです」
ただ、ひっかかる。私達と会う時は必ず平日のお昼三時間程度で、ビアンカは終わったらソッコーで帰る。そして、仕事の話は全くしない。これはみんなだけど。
「私達、集まった時、仕事の話全くしないから、実情がわからないんです。そして、こないだマッテオさんとのデートのつなぎつけた時、『素の私でどれくらい勝負できるのか試せるいいチャンス』って言ってたのが、すごく気になってて……。その……ビアンカの台詞、断り文句じゃなく、事実なんじゃないかって気がして」
私達は会っている時全く仕事の話をしないから、内情はよくわからない。でも、ビアンカのお店は若い女子に大人気で、すごく繁盛してるように見える。いくら気配り上手のビアンカでも、そこまで時間を割くのは物理的に無理じゃないか、というのと、もしかしてそこをがんばりすぎて今までうまくいかなかったんじゃ、という思いが交錯した。
「ビアンカさん、すっごく可愛い服着てきてくれて、最初に見た時よりずっとずっと夢中になってしまいました」
「ビアンカ、やっぱり戦闘服着て行ったんだ」
「戦闘服?」
「ビアンカがデザインする服、男子受けがものすごくいいんです。流行をさりげなく取り入れつつ、清楚な女子アピールがうまいから。あの服、男子殺しの異名も持ってる」
「「なるほど、戦闘服……」」
リカルドとマッテオさんがぼそりと同時につぶやく。
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気を取り直したマッテオさんが続ける。
「あとは、先輩達やリカルドさんのアドバイスに従って、たぶんオーソドックスなデートをしたと思います。芝居見て、カフェでお茶して、ちょっといい店で夕飯、みたいな。どれもおすすめのヤツを選んだから、たぶん大ハズレではないはず」
「なんかものすごいがんばりを感じる」
「中身小学生で振られ続けてるから、アドバイスに従うという鉄則を守らせた」
「ビアンカさん、喜んでくれてるように見えたんですけど……。別れ際の言葉が全然わからなくて」
別れ際の言葉?
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『ビアンカさん。俺、あなたとお付き合いしたいです。今日、デートして、あなたのこと、ますますいいなって思いました』
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『マッテオさん、とてもいい人だと思うわ。でも、たぶん、私、あなたの期待にそえない』
意味がわからなくて思わず訊ねる。
「き、期待?」
「最初は無理してなんとかできても、長期的にいろいろ合わせられないだろうって」
料理がそんなに得意じゃないこと。一生仕事を続けたいこと。そして今は仕事がめちゃくちゃ忙しくて、デートの時間が平日の深夜か早朝くらいしか取れないこと。相手の都合に合わせるどころか、会う時間そのものがあまりないこと。
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「俺、ちょっとわかんないんだよね。普通だったら断り文句なんだろうけど。ジュリエッタはどう思う?」
なるほど、ご相談。
「ビアンカは、確かに普段、そんな風な言い方をする子じゃないです」
ただ、ひっかかる。私達と会う時は必ず平日のお昼三時間程度で、ビアンカは終わったらソッコーで帰る。そして、仕事の話は全くしない。これはみんなだけど。
「私達、集まった時、仕事の話全くしないから、実情がわからないんです。そして、こないだマッテオさんとのデートのつなぎつけた時、『素の私でどれくらい勝負できるのか試せるいいチャンス』って言ってたのが、すごく気になってて……。その……ビアンカの台詞、断り文句じゃなく、事実なんじゃないかって気がして」
私達は会っている時全く仕事の話をしないから、内情はよくわからない。でも、ビアンカのお店は若い女子に大人気で、すごく繁盛してるように見える。いくら気配り上手のビアンカでも、そこまで時間を割くのは物理的に無理じゃないか、というのと、もしかしてそこをがんばりすぎて今までうまくいかなかったんじゃ、という思いが交錯した。
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