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番外編・取り違えと運命の人 小話集
159 結婚しました ③
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郵便局は混んでいて、順番が来るまで少し待たされてしまった。ちょうどお昼時だから、休憩時間を利用してやってくる人が多いんだろうな。
「いらっしゃいませ」
「官製ハガキを一枚ください」
「かしこまりました。袋にお入れしますか?」
「いいえ、すぐに書いて出すので大丈夫です。あちらの机、お借りできますか?」
「ありがとうございます。机はご自由にお使いください」
お金を払い、ハガキを書いていると、外から人が入ってきた。
「ジュリエッタ!」
懐かしい声に顔を上げる。
「ビアンカ! ひさしぶり! 元気?」
「元気元気。もう、忙しくてたまんないのに、バイトの子が急に病欠で。他の子も手が回んなかったから、店長自ら郵送手続。でも、おかげで会えてよかった!」
「うん! みんなそれぞれ忙しくて、なかなか連絡取らないもんねえ」
「ジュリエッタは?」
「ああ、昨日神託の相手が来てね」
「結婚したんだ! おめでとう!」
「ありがとう。だから、実家に結婚報告のハガキを」
「……実家への結婚報告を、ハガキ?」
ビアンカがものすごく怪訝な面持ちになった。そりゃそうか。
「実家、洋品店してるって言ったじゃない? 自慢みたいであれだけど、結構繁盛してて、母と兄、めちゃくちゃ忙しいのよね」
「あー……」
「私生活全部後回しで、手紙だと、封を切るのがいつになるかわかんないから。速達で出せば、郵便事故も、まあ、ないだろうし」
「電報や書留は受け取りの手間も必要だもんね」
「そう。ハガキなら郵便受けに入れてもらえるし、封を切らなくても内容わかるから。もちろん、よそ様には封書や電報にするけど、たぶん、私の家族にはこれが一番喜ばれるな、と思って」
「それ、わかる。意味がわかっちゃうのがすごく嫌」
「ビアンカももう少し休まなきゃだめだよ」
これを機にもう少しまめに遊ぼう、という話に落ち着いて、ビアンカと別れた。
速達の手続きも少し待たされたのと、ビアンカと思ったより長く話してしまったらしい。あわてて待ち合わせ場所に向かうと、リカルドは既に来てくれていた。頭上の時計を見ると、四十分くらい経っている。
「リカルド!」
「あ! ジュリエッタ、そんな急がなくていいよ!」
「遅くなってごめんね。郵便局に行ってきたんだけど、偶然友達と会って、つい、話しこんじゃった」
「ううん。俺の都合で付き合わせて申し訳ないなって思ってたから、楽しかったならよかった!」
リカルド、おおらかな人なんだな。フラヴィオだったらこんな時「人の時間を奪うな」ってめちゃくちゃ冷たい目で見るのに、と新たな家族をしげしげと眺める。
時計の下は待ち合わせによく使われるので、だんだん人が多くなってきた。とりあえず、移動しながら話すことにする。
「職安、どうだった?」
「すごくラッキーで、明日面接してもらえることになった!」
「よかったねえ」
「うん!」
「お昼、どうする? 外で食べる? 家に帰る?」
「ええと……」
ジュリエッタのごはんすごくおいしい、でも外で食べるのもおでかけっぽくて捨てがたい、なんて、リカルドがぶつぶつ言いながら右往左往してる。
さっきもそうだったけど、リカルド、結構ちょろちょろしてて、人が多いところだとはぐれそうになるんだよね。最初は足並みそろえてくれるんだけど、なにか考え始めたらそっちに気を取られて、つい先に行っちゃうみたいだし。
「リカルド」
はぐれたら困るので、思わずリカルドの手をつかむ。
「そんなにちょろちょろしてると、はぐれ」
リカルドはものすごくびっくりした様子で目を見開いて、次の瞬間、とっても嬉しそうにおひさまみたいな笑顔を浮かべた。
そんなに嬉しそうな顔されるなんて思ってもみなかったから、なんだかものすごく照れてしまい、思わず手を放す。と、リカルドはすかさず私の手を取った。
「うん! そうだよね! はぐれたらいけないよね!!」
そう言ってリカルドが指を絡めて恋人つなぎにしてきたので、屋外で恥ずか死にそうな気分を味わわされることになった。
私から手を握ったのは、その一度きり。なぜなら、それからはリカルドが嬉々として自分から手を握ってくるようになったからだ。
「いらっしゃいませ」
「官製ハガキを一枚ください」
「かしこまりました。袋にお入れしますか?」
「いいえ、すぐに書いて出すので大丈夫です。あちらの机、お借りできますか?」
「ありがとうございます。机はご自由にお使いください」
お金を払い、ハガキを書いていると、外から人が入ってきた。
「ジュリエッタ!」
懐かしい声に顔を上げる。
「ビアンカ! ひさしぶり! 元気?」
「元気元気。もう、忙しくてたまんないのに、バイトの子が急に病欠で。他の子も手が回んなかったから、店長自ら郵送手続。でも、おかげで会えてよかった!」
「うん! みんなそれぞれ忙しくて、なかなか連絡取らないもんねえ」
「ジュリエッタは?」
「ああ、昨日神託の相手が来てね」
「結婚したんだ! おめでとう!」
「ありがとう。だから、実家に結婚報告のハガキを」
「……実家への結婚報告を、ハガキ?」
ビアンカがものすごく怪訝な面持ちになった。そりゃそうか。
「実家、洋品店してるって言ったじゃない? 自慢みたいであれだけど、結構繁盛してて、母と兄、めちゃくちゃ忙しいのよね」
「あー……」
「私生活全部後回しで、手紙だと、封を切るのがいつになるかわかんないから。速達で出せば、郵便事故も、まあ、ないだろうし」
「電報や書留は受け取りの手間も必要だもんね」
「そう。ハガキなら郵便受けに入れてもらえるし、封を切らなくても内容わかるから。もちろん、よそ様には封書や電報にするけど、たぶん、私の家族にはこれが一番喜ばれるな、と思って」
「それ、わかる。意味がわかっちゃうのがすごく嫌」
「ビアンカももう少し休まなきゃだめだよ」
これを機にもう少しまめに遊ぼう、という話に落ち着いて、ビアンカと別れた。
速達の手続きも少し待たされたのと、ビアンカと思ったより長く話してしまったらしい。あわてて待ち合わせ場所に向かうと、リカルドは既に来てくれていた。頭上の時計を見ると、四十分くらい経っている。
「リカルド!」
「あ! ジュリエッタ、そんな急がなくていいよ!」
「遅くなってごめんね。郵便局に行ってきたんだけど、偶然友達と会って、つい、話しこんじゃった」
「ううん。俺の都合で付き合わせて申し訳ないなって思ってたから、楽しかったならよかった!」
リカルド、おおらかな人なんだな。フラヴィオだったらこんな時「人の時間を奪うな」ってめちゃくちゃ冷たい目で見るのに、と新たな家族をしげしげと眺める。
時計の下は待ち合わせによく使われるので、だんだん人が多くなってきた。とりあえず、移動しながら話すことにする。
「職安、どうだった?」
「すごくラッキーで、明日面接してもらえることになった!」
「よかったねえ」
「うん!」
「お昼、どうする? 外で食べる? 家に帰る?」
「ええと……」
ジュリエッタのごはんすごくおいしい、でも外で食べるのもおでかけっぽくて捨てがたい、なんて、リカルドがぶつぶつ言いながら右往左往してる。
さっきもそうだったけど、リカルド、結構ちょろちょろしてて、人が多いところだとはぐれそうになるんだよね。最初は足並みそろえてくれるんだけど、なにか考え始めたらそっちに気を取られて、つい先に行っちゃうみたいだし。
「リカルド」
はぐれたら困るので、思わずリカルドの手をつかむ。
「そんなにちょろちょろしてると、はぐれ」
リカルドはものすごくびっくりした様子で目を見開いて、次の瞬間、とっても嬉しそうにおひさまみたいな笑顔を浮かべた。
そんなに嬉しそうな顔されるなんて思ってもみなかったから、なんだかものすごく照れてしまい、思わず手を放す。と、リカルドはすかさず私の手を取った。
「うん! そうだよね! はぐれたらいけないよね!!」
そう言ってリカルドが指を絡めて恋人つなぎにしてきたので、屋外で恥ずか死にそうな気分を味わわされることになった。
私から手を握ったのは、その一度きり。なぜなら、それからはリカルドが嬉々として自分から手を握ってくるようになったからだ。
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