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09. パーティー×パーティー ③
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「リリアンは……どうして冒険者になったんだ?」
下を向いたままのジェラールから話を振られ、リリアンは少し困る。取り立てて冒険者になりたかった訳ではないから。
「父が営んでいる鍛冶屋を潰したくなくて、出稼ぎに来たの。王都ならいい仕事があるだろうと思っていたんだけど、なかなか見つからなくて。何も考えずに出てきたことを反省したわ。だから、ジェラールから仲間に入れてもらえて、本当に助かったの」
「いや、俺の方こそ、とても助かる。戦いに集中できるから」
「雑用と武器を砥ぐことなら私にもできるので、任せてください!」
ブノワとアニエスの顔を見てリリアンが言うと、二人は頷いてくれた。ブノワは笑顔で、アニエスは無表情ではあったが。
「リリアンが王都にいる間、父上は寂しくなるな」
「弟がいるから大丈夫よ。なかよくやってくれているといいけど」
「……失礼だが、母上は?」
「弟を産んだ時に亡くなったの」
「それは……悲しかったな」
「三つだったからあまりわかっていなかったし、父と弟がいるから寂しくはなかったわ。それに、亡くなっているけれど、母のことはずっと大切よ」
「そうだな」
和やかに食事を終えたので食堂を出て、四人は宿へ戻る。ブノワがいろいろ話をしてくれ、リリアンは都度相槌を打っていた。残りの二人は無言だ。ジェラールは事務連絡担当、ブノワは雑談や感想担当、アニエスは無言、という棲み分けかな、とリリアンはひそかに思う。
「リリアンはアニエスと一緒の部屋で寝泊まりしてくれるか?」
「ええ、わかったわ」
宿代を節約するためかな、とリリアンは思う。どうも、このパーティーの台所事情は、あまり余裕がないようなので。
リリアンとアニエスは無言で連れ立って部屋へ向かう。部屋がわからないので、リリアンはついていくしかない。
リリアンはひそかに緊張していた。上手くやっていけるだろうか、と。アニエスが貴族だからというのはもちろんだが、リリアンは同年代の女子と上手くやれた経験が乏しかったからである。
母がいないリリアンは家事と店の手伝いに忙しく、同世代の女子達と親睦を深める機会も時間もあまり取れなかった。たまに女子達の輪に加わることができた時も、彼女達が楽しそうにおしゃれや恋の話で盛り上がる中、つい現実的すぎる発言をしてしまうので、気まずい空気が流れてしまう。そういう服はレースが多すぎて洗濯が大変そうだし家事をこなす邪魔にならない? 相手の想いはここで話していてもわからないのだから直接話した方がいいのでは? 等々。
おしゃれに関しては純粋な疑問で、参考にしたくてリリアンは訊ねていた。だが、その場にいた女子達は流行に盛り上がる自分達をけなされたと判断した。
リリアンに想いを寄せる男子も実はちらほらいたのだが、彼女は鈍く、恋愛にも興味がないため、全く気づかない。そんなところが、リリアンを狙う男子に恋する女子を、ひそかにイラつかせたりもしていた。
リリアンは女友達が欲しいと思っていたものの、流行に疎く、恋愛話に興味がなく、繊細な空気を読めない人間となかよくしてくれる女子は、残念ながらいなかったのである。
「部屋を分けられなくてごめんなさい。でも、この宿に女子が一人で泊まるのは、危険なの。私なら、あなたを守ってあげられるから」
扉を開く前にアニエスが言う。そういう理由だったのかとリリアンは合点した。
「いいえ。こちらこそありがとう」
「まあ、宿代に余裕がないというのも、あるとは思うけれど」
見透かされたように言われてしまい、リリアンは思わず苦笑した。
生活能力に欠けているのがブノワで、やる気がないのがアニエス。そんなリリアンの予想は完全に外れていたと、扉を開いた瞬間にわかった。
「アニエス。よければ掃除と洗濯、私が担当するわ。守ってもらうお礼に」
「いいの? それはとても助かるけど」
これまで同世代の女子となかよくなれなかった自分が、貴族の女性と上手くやっていけるだろうか。そんな心配は杞憂であった。アニエスは見た目の優雅さとは程遠い、大変ざっくりした人間だったので、リリアンは非常に過ごしやすかったのである。
初めてできた女友達。村にいたままなら絶対に出会うことなんてなかった。運命は不思議だなとリリアンは思った。
下を向いたままのジェラールから話を振られ、リリアンは少し困る。取り立てて冒険者になりたかった訳ではないから。
「父が営んでいる鍛冶屋を潰したくなくて、出稼ぎに来たの。王都ならいい仕事があるだろうと思っていたんだけど、なかなか見つからなくて。何も考えずに出てきたことを反省したわ。だから、ジェラールから仲間に入れてもらえて、本当に助かったの」
「いや、俺の方こそ、とても助かる。戦いに集中できるから」
「雑用と武器を砥ぐことなら私にもできるので、任せてください!」
ブノワとアニエスの顔を見てリリアンが言うと、二人は頷いてくれた。ブノワは笑顔で、アニエスは無表情ではあったが。
「リリアンが王都にいる間、父上は寂しくなるな」
「弟がいるから大丈夫よ。なかよくやってくれているといいけど」
「……失礼だが、母上は?」
「弟を産んだ時に亡くなったの」
「それは……悲しかったな」
「三つだったからあまりわかっていなかったし、父と弟がいるから寂しくはなかったわ。それに、亡くなっているけれど、母のことはずっと大切よ」
「そうだな」
和やかに食事を終えたので食堂を出て、四人は宿へ戻る。ブノワがいろいろ話をしてくれ、リリアンは都度相槌を打っていた。残りの二人は無言だ。ジェラールは事務連絡担当、ブノワは雑談や感想担当、アニエスは無言、という棲み分けかな、とリリアンはひそかに思う。
「リリアンはアニエスと一緒の部屋で寝泊まりしてくれるか?」
「ええ、わかったわ」
宿代を節約するためかな、とリリアンは思う。どうも、このパーティーの台所事情は、あまり余裕がないようなので。
リリアンとアニエスは無言で連れ立って部屋へ向かう。部屋がわからないので、リリアンはついていくしかない。
リリアンはひそかに緊張していた。上手くやっていけるだろうか、と。アニエスが貴族だからというのはもちろんだが、リリアンは同年代の女子と上手くやれた経験が乏しかったからである。
母がいないリリアンは家事と店の手伝いに忙しく、同世代の女子達と親睦を深める機会も時間もあまり取れなかった。たまに女子達の輪に加わることができた時も、彼女達が楽しそうにおしゃれや恋の話で盛り上がる中、つい現実的すぎる発言をしてしまうので、気まずい空気が流れてしまう。そういう服はレースが多すぎて洗濯が大変そうだし家事をこなす邪魔にならない? 相手の想いはここで話していてもわからないのだから直接話した方がいいのでは? 等々。
おしゃれに関しては純粋な疑問で、参考にしたくてリリアンは訊ねていた。だが、その場にいた女子達は流行に盛り上がる自分達をけなされたと判断した。
リリアンに想いを寄せる男子も実はちらほらいたのだが、彼女は鈍く、恋愛にも興味がないため、全く気づかない。そんなところが、リリアンを狙う男子に恋する女子を、ひそかにイラつかせたりもしていた。
リリアンは女友達が欲しいと思っていたものの、流行に疎く、恋愛話に興味がなく、繊細な空気を読めない人間となかよくしてくれる女子は、残念ながらいなかったのである。
「部屋を分けられなくてごめんなさい。でも、この宿に女子が一人で泊まるのは、危険なの。私なら、あなたを守ってあげられるから」
扉を開く前にアニエスが言う。そういう理由だったのかとリリアンは合点した。
「いいえ。こちらこそありがとう」
「まあ、宿代に余裕がないというのも、あるとは思うけれど」
見透かされたように言われてしまい、リリアンは思わず苦笑した。
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「アニエス。よければ掃除と洗濯、私が担当するわ。守ってもらうお礼に」
「いいの? それはとても助かるけど」
これまで同世代の女子となかよくなれなかった自分が、貴族の女性と上手くやっていけるだろうか。そんな心配は杞憂であった。アニエスは見た目の優雅さとは程遠い、大変ざっくりした人間だったので、リリアンは非常に過ごしやすかったのである。
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