【R18】君に長寿と繁栄を~淫紋を解呪するたったひとつの冴えたやりかた~

テキイチ

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13. 新たな取り引き先 ④

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「ぜひ、買いたいです!」
「他に何か欲しいものはあるか?」
「……あ…………お料理の本はありますか?」

 剣の値段があまりにも安かったので、リリアンはもう一点何か購入した方がいいと判断した。だが、特に欲しいものがあった訳ではない。店主から単刀直入に問われ、困ったリリアンは棚に並ぶ本を眺めるうちに、ブノワの嫌いな食べ物の表を思い出したのだ。

「いい本がある」

 店主は一度店の奥に戻り、分厚い本を丁寧に抱えて戻ってきた。

「これだ」
「ありがとうございます」

 ずいぶん立派な本だ。手持ちのお金で足りるだろうか、とリリアンは内心焦る。とにかく丁寧に扱わなければと思いつつ、リリアンはそっとページをめくる。件の本は食材の図解と説明が非常に細やかでわかりやすく、思わずリリアンは見入ってしまった。

「魔物の急所と捌き方がどんな図鑑よりもよくわかる。冒険者なら知っておいた方がいい。なにより、この本の味付けは旨い」
「どうして私が冒険者だってわかったんですか?」
「武器を見ていたし、獣の臭いがしたからな。他にも用があるんだろう? わざわざこんな裏通りの店に来るなんて」

 見透かされている。リリアンは苦笑して、これまでの経緯と獲物を買い取ってほしいという希望を正直に話した。店主はきっぱり言う。

「あの店はやめておけ。業界の評判もよくない」

 店主は獲物を丹念に検分し、代金を袋に詰め、リリアンに渡す。袋を開くとずいぶん多い。やはりリリアンの見立ては外れていなかったのだ。

「ありがとうございます! 本はおいくらですか?」
「代金は、もう差し引いている」

 驚いたリリアンは、香草を数種追加で購入した。どう考えてもかなりおまけをしてくれていて店主に一方的に損をさせてはいけないと思ったのと、ブノワの嫌いな食べ物リストは食材の臭みが強いものが多かったからだ。店主は「阿呆だな。素直に受け取っておけばいいのに」と言いながら、目が少し笑っていた。

 宿に戻ったリリアンはどきどきしながらアニエスに剣を渡した。いい剣だと断言できるが、相性はある。気に入ってもらえるかもわからない。
 アニエスは剣を手に取ると軽快に素振りをし、やわらかく笑み、「神術を使う回数を少なくできる」と、とても喜んでくれた。父の力作を気に入ってもらえ、そしてなによりアニエスの負担が軽くなったことを、リリアンはとても嬉しく思った。



 数日後、リリアン達は魔物を狩りに森へ入った。今回は野営なので、三人が狩りに出ている間に、リリアンが天幕の中を過ごしやすいように整え、夕飯を作っておくことになった。リリアンの料理の腕は悪くないが、盛り付けが大雑把である。弟のオーレルの方がよほど盛り付けは上手い。

 スープがおいしく煮えてきた頃、三人が戻ってきた。獲物を選り分け、売りに出せないものをリリアンが捌いて焼く。

「みんな! 夕飯できたよ!」

 リリアンが呼びかけると、ジェラールがすぐに駆けつけ、配膳を手伝ってくれる。あらかた整ったところで、ブノワとアニエスもやってきた。リリアンは意を決して告げる。

「ブノワ。今日の夕飯はあなたの苦手なものもたくさん入っているけど、たぶん大丈夫だと思うの」

 一瞬、ジェラールとアニエスの動きが止まる。当のブノワが沈黙を破って汁物を匙ですくって飲み、焼いた肉も食べる。どきどきしながら見守るリリアンに、ブノワが言った。

「うん。おいしいよ。これならたぶん大丈夫」

 にっこり笑ってくれたので、リリアンはほっとし、安心したら途端にお腹が空いてきてがつがつ食べた。ジェラールはいつも以上におかわりをし、アニエスもいつもより食べてくれたので、リリアンはとても幸せな気持ちになった。
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