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31. 焼き焦がすもの ③
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珍しくジェラールがいろいろ話してくれている。もう少しいろいろ聞きたいなとリリアンが思った時に、ジェラールの目線がリリアンの後ろへ動き、言葉も止まった。リリアンが振り向くと、アニエスがいる。
「ジェラール。頼まれていたパンを買ってきたんだけど……」
「ごめんね! 私の用事はもう終わったから!」
リリアンは妙にはきはきと言うと、ばたばたと部屋へ戻る。しばらくするとアニエスが帰ってきた。
「おかえりなさい」
「リリアン、ごめんね。邪魔するつもりじゃなかったんだけど」
「邪魔なんて……」
「最近、ジェラールとあんまり話してなかったから」
「それは……」
リリアンがジェラールへの想いを隠そうとして言葉を濁すと、アニエスは淡々と返す。
「リリアンなら応援するわ。ジェラールとのこと」
「ええっ?!」
恋愛に興味などないだろうと思っていたアニエスに気持ちを悟られていて、リリアンは動揺する。
「え、え、そんな、そんなにわかりやすかった……?」
「それは……まあ、わかるわ」
「お願い、内緒にして! 仲間なのに、変な雰囲気になりたくないの!」
「大丈夫。それは、既に何度か、なったことあるから」
「え?」
リリアンがぽかんとした表情を浮かべると、アニエスは言う。「これまで女子が加入したら、みんなジェラールかブノワのどちらかを落とそうとしてきたけれど、二人とも意外と目線がシビアだから勝手に幻滅して、過酷で不衛生な環境にも耐えられなくなって、みんなすぐに辞めていった」と。
すぐに辞めるとはそういう意味もあったのか、とリリアンは妙に納得していた。
確かに二人とも本質的には女子を楽しませるタイプではないかもしれない。ブノワはチャラそうな外見の割に意外と辛辣だし、ジェラールは口数がそう多くない。
ただ、二人の目線がシビアなのは冒険者として当然だろうとリリアンは思う。命懸けなのだから。
「リリアンなら恋愛にかまけて仕事をおろそかにしないと信頼できるし、ジェラールとも相性がいいと思うわ」
「アニエスに信頼されているのは嬉しいけど……」
「あと、ジェラールにはこれまでそういう浮いた話はないはず。以前、ブノワに訊ねられた時に、『生きるのに精一杯で、それどころではなかった』と言っていたから」
アニエスから思いがけずたくさんの情報を得てしまい、リリアンは困惑しながら返す。
「私はジェラールのことを好きだけど、どうにかなりたいというのとはちょっと違って……。ジェラールが誰を選ぼうと、幸せであればそれでいいと思っているの」
「そう?」
「だって、嬉しそうな笑顔でいてほしいじゃない。好きな人には……」
「美しい考え方だけど、自分の気持ちを全部捨てて割り切ることは、実際には難しいんじゃないかしら」
「僧侶が言うと説得力があるわね」
「私も、家族のためになりたいと思って生きてきたけれど、私自身を認めてもらえないのは苦しかったから」
恋愛と家族愛で違う部分はあれど、そう単純に美しい理想のままではいられないというのも確かにそうだろう。それでも、リリアンはジェラールの幸せを心から願える自分でありたいし、醜い気持ちに焼き焦がされずにいたいなと思った。
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「邪魔なんて……」
「最近、ジェラールとあんまり話してなかったから」
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「それは……まあ、わかるわ」
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確かに二人とも本質的には女子を楽しませるタイプではないかもしれない。ブノワはチャラそうな外見の割に意外と辛辣だし、ジェラールは口数がそう多くない。
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「アニエスに信頼されているのは嬉しいけど……」
「あと、ジェラールにはこれまでそういう浮いた話はないはず。以前、ブノワに訊ねられた時に、『生きるのに精一杯で、それどころではなかった』と言っていたから」
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