【R18】君に長寿と繁栄を~淫紋を解呪するたったひとつの冴えたやりかた~

テキイチ

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37. 先に立つもの ③

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※犬が死にます



 水曜の夕方、四人は連れ立って町外れへ向かう。シリウスが人を襲うなら今日である確率が高いので、一件でも防ぎたい。夜まで誰も襲われなければ、そのまま祠の近くに移動すればいい。

 不意に、若い男達の笑い声が届いた気がした。嘲笑のような、少し嫌な感じのする声で、リリアンは思わず眉をひそめる。ここは町外れで何もないのだし、気のせいかも、とリリアンが思いかけたところで、叫び声が響いた。リリアンが三人を見ると、全員真顔だ。

「若い男の人達の叫び声がしたの、気のせいじゃないよね……?」
「あっちから聞こえたな」

 四人は声の方へ走る。三人の若い男が火傷と裂傷を負って倒れていた。三人とも手に血の付いた小刀を握っている。ちゃちな造りで、切れ味も悪そうだとリリアンは思う。こんなものではシリウスに太刀打ちできまい。近くに老犬も一匹うずくまっていて、脚から血を流していたが、幸い軽症のようだ。

 三人に介抱を任せ、リリアンは先日訊ねた民家へ走る。状況を説明し、取り急ぎ一番近い病院の場所を教えてもらって戻ると、ちょうどブノワとアニエスが応急処置を終えたところだった。四人は怪我人と老犬を病院へ搬送し、警邏隊に状況を報告した。

「もっと早く来ていれば、被害者が増えずに済んだかもしれないな」
「仕方ない。できることはしたし、俺達はシリウスを倒すしかないよ」

 ジェラールの言葉に、ブノワは淡々と返す。
 もう一度四人が町外れに戻った頃には、すっかり夜が更けていた。薄曇りの新月なので、かなり暗く、視界が悪い。四人は祠から少し離れた茂みで待機する。

「シリウスは火を噴くから厄介なんだ。俺があいつの火の魔法を封じるから、ジェラールはただ急所を狙えばいい」
「わかった」
「ブノワがシリウスの火の魔法を封じたら、私は神のともしびで照らすわ」
「神術は身体に負担がかかるのに、悪いな。アニエス」
「最近は剣を振っていることの方が多いから、大丈夫」

 暗い中で黙って待っているだけなので、リリアンの意識が遠のき始めた頃、白く大きないきものがゆっくり祠に近づいてきた。シリウスだ。四人は固唾を呑む。

 シリウスが祠に供えられた椀を咥えようと口を開けた瞬間、ブノワは火封じの呪文を詠唱した。己の身体の異変に気づいたシリウスはあたりをうかがう。

 アニエスが神の灯で照らした瞬間、シリウスは四人に襲い掛かろうとした。だが既に準備を整えていたジェラールの攻撃を避けることはできない。槍はシリウスの心臓を正確に突いた。

 ジェラールに急所を突かれれば普通の魔獣は即死する。だが、シリウスは強い精神力で持ちこたえた。
 シリウスはよろめきながら祠へ近づき、山羊の乳の入った椀を咥え、なんとか先へ進もうとする。しばらくして、口から椀を取り落とし、動かなくなった。地面に山羊の乳がこぼれ、染み込んでいく。

「シリウスがあれだけ執着しているということは、この先に何かある」

 ジェラールがシリウスの向かおうとしていた方へ進むので、三人もついていった。しばらく進んだ後、ジェラールは近くの洞窟の前に犬の足跡が残っていることに気づき、中へ入る。おそらくシリウスはここに何かを隠しているのだ。
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