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43. 理由 ④
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翌日からジェラールは以前のように獲物を捕らえるようになった。ただ、乱獲はしていないし、売った時にいい値が付きそうな魔獣を選んでいるとアニエスが教えてくれ、リリアンはほっとした。
思っていたよりも順調に狩りと採集ができたので、予定より一日早く撤収しよう、という話になった。
「水が足りないから、悪いけど汲んできてくれない?」
全く悪びれずにブノワが言う。曰く、保存用の匣は水を媒介に魔力を循環させて冷却と真空状態を保っているが、匣を軽量化したため媒介の水が少なくなってしまい、王都に戻るまで持たない可能性が高い、と。
「それこそ魔術で運べばいいんじゃないか?」
「えー、魔力めちゃくちゃ使うからやだ。水を浄化して、匣専用の魔力も込めないといけないし」
リリアンがアニエスに訊ねると「確かに嘘ではないが、ブノワは魔力量が多いし、面倒くさがっているだけだろう」という回答だった。なるほどブノワらしい、とリリアンは思う。
「湖はすぐそこだし、ジェラール、ぱーっと行ってきてよ! リリアンと一緒に!」
「いや、行くなら一人で大丈夫だが……」
「たいしたことはできないけど手伝うわ」
いきなりの指名に面食らったものの、ジェラールと一緒に行動できるいい機会なので、リリアンは快諾した。二人で甕と料理鉢を持って湖へ行き、黙々と水を汲む。話せるのも嬉しいけれど、ジェラールとは話さなくても沈黙が心地いいな、とリリアンは思う。
水を運び終えると、ジェラールは「リリアン、手伝ってくれてありがとう」と礼を言った。ちょっとしたことでも感謝を忘れないところがやっぱり好きだなと、リリアンは何度でも思う。二人は天幕で寝ているブノワを起こし、浄化と匣の水の入れ替えをしてもらった。
プロシオンは火に強い魔犬なので、リリアンがいない時は代わりに火の番をしてくれる。普通、火があるところに獣は近づいてこないので、リリアンは油断していた。
戻ってくると、プロシオンがサラマンダーに絡まれている。サラマンダーは火を好物にしている魔獣だ。プロシオンは果敢に挑み、相手が小さいのもあり、なんとか勝利を収めそうである。リリアンがほっとしたところで、サラマンダーはプロシオンの首元に噛みつこうとした。サラマンダーは毒を持っている。
「危ない!」
リリアンが思わず叫んだのと、ジェラールが槍でサラマンダーを刺し殺したのは、ほぼ同時だった。プロシオンは地面にへたり込んでいる。
「すまん。自分で倒したいだろうと思って、助けるのが遅れた」
ジェラールが撫でようとすると、プロシオンはぎゅっと瞼を閉じ、ぴくりと身体を小さく震わせた。プロシオンの姿を見て、ジェラールはそっと手を引き、リリアンに言う。
「サラマンダーから既に噛まれているかもしれない。念の為、プロシオンに毒消しを飲ませて、休ませてやってくれ」
「わかったわ」
リリアンは火を消し、プロシオンをそっと抱き上げた。リリアンとアニエスの天幕の中に、香りのよい草を重ねて作った寝床を用意しているので、プロシオンを寝かせる。毒消しの水薬を飲ませ、リリアンはプロシオンの頭を優しく撫でた。
「プロシオン、よくがんばったね。火の番をしてくれてありがとう」
プロシオンは弱々しい声でくぅんと鳴くと、そのまま眠ってしまった。
結局、四人はプロシオンの調子を優先して一日のんびり過ごすことにし、当初の予定通りに王都へ戻ることにした。
プロシオンがおびえている様子だったので、ジェラールはしばらく接触を避けていた。常宿に着いた時、ジェラールはそっと干し肉を差し出す。
「ほら、プロシオン。干し肉だ。旨いぞ」
プロシオンは少しの間ためらっていたが、ジェラールの差し出す干し肉にそっと齧りつく。干し肉を綺麗に食べ終わると、そのままジェラールの手をぺろぺろと舐めた。
「プロシオン……」
ジェラールがそっと頭を撫でると、プロシオンは目を細め、くぅんと鳴いた。
思っていたよりも順調に狩りと採集ができたので、予定より一日早く撤収しよう、という話になった。
「水が足りないから、悪いけど汲んできてくれない?」
全く悪びれずにブノワが言う。曰く、保存用の匣は水を媒介に魔力を循環させて冷却と真空状態を保っているが、匣を軽量化したため媒介の水が少なくなってしまい、王都に戻るまで持たない可能性が高い、と。
「それこそ魔術で運べばいいんじゃないか?」
「えー、魔力めちゃくちゃ使うからやだ。水を浄化して、匣専用の魔力も込めないといけないし」
リリアンがアニエスに訊ねると「確かに嘘ではないが、ブノワは魔力量が多いし、面倒くさがっているだけだろう」という回答だった。なるほどブノワらしい、とリリアンは思う。
「湖はすぐそこだし、ジェラール、ぱーっと行ってきてよ! リリアンと一緒に!」
「いや、行くなら一人で大丈夫だが……」
「たいしたことはできないけど手伝うわ」
いきなりの指名に面食らったものの、ジェラールと一緒に行動できるいい機会なので、リリアンは快諾した。二人で甕と料理鉢を持って湖へ行き、黙々と水を汲む。話せるのも嬉しいけれど、ジェラールとは話さなくても沈黙が心地いいな、とリリアンは思う。
水を運び終えると、ジェラールは「リリアン、手伝ってくれてありがとう」と礼を言った。ちょっとしたことでも感謝を忘れないところがやっぱり好きだなと、リリアンは何度でも思う。二人は天幕で寝ているブノワを起こし、浄化と匣の水の入れ替えをしてもらった。
プロシオンは火に強い魔犬なので、リリアンがいない時は代わりに火の番をしてくれる。普通、火があるところに獣は近づいてこないので、リリアンは油断していた。
戻ってくると、プロシオンがサラマンダーに絡まれている。サラマンダーは火を好物にしている魔獣だ。プロシオンは果敢に挑み、相手が小さいのもあり、なんとか勝利を収めそうである。リリアンがほっとしたところで、サラマンダーはプロシオンの首元に噛みつこうとした。サラマンダーは毒を持っている。
「危ない!」
リリアンが思わず叫んだのと、ジェラールが槍でサラマンダーを刺し殺したのは、ほぼ同時だった。プロシオンは地面にへたり込んでいる。
「すまん。自分で倒したいだろうと思って、助けるのが遅れた」
ジェラールが撫でようとすると、プロシオンはぎゅっと瞼を閉じ、ぴくりと身体を小さく震わせた。プロシオンの姿を見て、ジェラールはそっと手を引き、リリアンに言う。
「サラマンダーから既に噛まれているかもしれない。念の為、プロシオンに毒消しを飲ませて、休ませてやってくれ」
「わかったわ」
リリアンは火を消し、プロシオンをそっと抱き上げた。リリアンとアニエスの天幕の中に、香りのよい草を重ねて作った寝床を用意しているので、プロシオンを寝かせる。毒消しの水薬を飲ませ、リリアンはプロシオンの頭を優しく撫でた。
「プロシオン、よくがんばったね。火の番をしてくれてありがとう」
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「ほら、プロシオン。干し肉だ。旨いぞ」
プロシオンは少しの間ためらっていたが、ジェラールの差し出す干し肉にそっと齧りつく。干し肉を綺麗に食べ終わると、そのままジェラールの手をぺろぺろと舐めた。
「プロシオン……」
ジェラールがそっと頭を撫でると、プロシオンは目を細め、くぅんと鳴いた。
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