【R18】君に長寿と繁栄を~淫紋を解呪するたったひとつの冴えたやりかた~

テキイチ

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44. 押し付けられた魔獣討伐 ①

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 リリアンはひさしぶりに冒険者ギルド「白い死神」の扉を開く。いらっしゃいませと受付嬢の棒読みの声が聞こえたので、リリアンはゆっくり扉を閉じ、会釈をした。

 リリアンはギルドに案件を紹介してもらうことにした。報酬が多いから、というのはもちろんある。だが、野山で罪のない獣を狩るよりも、害をなす魔獣の駆除や討伐の方が、ジェラールの気持ちも楽なのではないかと思ったことの方が大きかった。冒険者は戦わないと食べていけない。気休めに過ぎないとわかっているが、大義名分があれば、少しは罪悪感も軽減されるかもしれない。

「おすすめできるような案件は、今のところないですね」
「そこをなんとか!」

 塩対応の受付嬢にリリアンは必死に頼み込む。

「……そんなにおっしゃるなら、とびきりの案件をご紹介しますね。国王直々の討伐依頼なので、報酬も破格です」

 美しい受付嬢は艶やかに微笑んだ。



「ギルドからようやく大きい案件を回してもらえました! 竜を倒して緑柱石アクアマリンの鉱脈を取り返してほしいそうです!」

 夕飯時、リリアンが満面の笑みで報告すると、残りの三人は一様に「あー……」と下を向いた。

「え、え、な、何か問題でも……」
「ああ、そうか。リリアンは王都に来てまだ三か月だから、知らないんだね」
「むしろ『白い死神』は、リリアンが何も知らないからこそ、無理矢理押し付けたんでしょ」
「すまん。俺がきちんと引き継ぎをしておけばよかった」

 三人の反応に、リリアンは自分が愚かな判断をしたのだと悟り、青ざめた顔で謝る。

「ごめんなさい……。よくない案件なのね……」
「この討伐、これまでいくつかのパーティーが挑戦したけど、命からがら逃げだしてきたか、戻ってこなかったかのどちらかなんだよねえ」
「最後にこの話を請けたパーティーは、半年前に出発して、帰ってきたという話を聞かないわ」

 リリアンの血の気が失せる。いくら報酬が高いといっても、命あっての物種だ。
 視線を感じて下を見ると、プロシオンがリリアンを心配そうに眺めている。いつもは食事を終えると、のんびり丸まっているだけなのに。リリアンがそっと頭を撫でると、プロシオンはしっぽをぱたりと振り、また丸まった。プロシオンのおかげで、リリアンの気持ちは少し落ち着いたかもしれない。

「ああ、でも、さすがに報酬は上がっているんだな」
「そこまでなんとかしたいなら、国軍を出動させればいいのにね!」
「新興国との小競り合いが続いていて、余力がないから、致し方ないという判断なのだろう」
「国軍と違って、冒険者なら使い捨てできるから、の間違いだろう? 成功しても、数名の報酬なんて、たかが知れてる」

 ジェラールの言葉に対して、ブノワはシビアに返す。一国民にとっては途方もない報酬でも、軍事費と比較すればたいした額ではないのだろう。冒険者の命は軽いのだ。

「そもそも情報が少なすぎる。海洋研究所の建物の地下に緑柱石の鉱脈があることが判明し、研究員が立ち退いたところで竜が占拠した、という話しか流布されていない」
「討伐から戻ってきた人に、状況を聞き取ったらどうかしら」
「……こちらはいいが、過去を聞き出すことで、先方がつらい思いをするのではないか?」

 シリウスの件が少し上手くいったから、調子に乗っていた、とリリアンは思う。ジェラールの指摘は説得力がある。逃げ帰るというのは一般的には不名誉なことだ。誇りを傷つけかねない。

「悪くないんじゃない? 情報はあるに越したことはないし。その人の気持ちを軽くする手は、俺が考えるよ」

 ブノワが飄々と言うので、ジェラールは訊ねる。

「どうするんだ?」
「正解は、相手次第だよ。アニエスに協力してもらうけど、いい?」
「それは構わないけど」

 人によって感じ方は違うので、確かに相手次第としか言いようがないかも、とリリアンも思う。そして、ブノワはそういう咄嗟の判断が上手い。

「それよりも。命を懸けさせようというにはちょっと舐めた金額だし、請けるならもっと条件を付けた方がいい。俺が交渉するよ」
「ブノワが?」

 リリアンはびっくりして彼を見た。あの面倒くさがりなブノワが、みんなのために動こうとしている。ブノワは微笑んで続けた。

「そう、俺が。提示された金額以外に、成功報酬をもらうことにして、他にも条件を付ける。王は困っているから、たぶん乗ってくるよ」

 最後に帰ってきた冒険者と所属ギルドはわかっているので、まず当人に話を訊く。その後、ブノワが交渉に行き、残り三人とプロシオンがエドモンの店で装備を揃える、ということで話がまとまった。
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