【R18】君に長寿と繁栄を~淫紋を解呪するたったひとつの冴えたやりかた~

テキイチ

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45. 押し付けられた魔獣討伐 ②

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 生き残った冒険者は若い男性で、問い合わせに応じてくれた。だが、ひどく暗い表情をしている。

「俺が助かったのは、仲間を見捨てたからだ。俺は、自分の命と仲間の命を天秤にかけ、自分の命を取った、卑怯者なんだ」

 ジェラールの言った通りだ、とリリアンは気が重くなる。誇りを傷つけられたと怒る方がまだましだ。彼は話をすることで、己の行動と罪を見つめ直さなければならず、心の傷を深めてしまうのだ。問い合わせに応じてくれたのは、おそらく贖罪の気持ちからなのだろう。

「まず自分が生き延びることを優先するのは決して卑怯ではないですよ。余力がないと他者は助けられない」

 ブノワがそう言うと、ジェラールが続ける。

「竜を倒すための情報が全く足りず、困っているのです。本当に申し訳ないが、覚えていることをお教えいただけないだろうか」

 男性はぼそりぼそりと話す。建物に入ってしばらくすると気分が悪くなった。自分は目がいいので、遠くに死体が転がっていることにうっかり気づいてしまった。逃げようといったが取り合ってもらえなかった。パーティーでも大した働きはしていなかったし、今回の報酬はいらないからと言って、一人外へ出た。歩くうちに気分の悪さがひどくなり、気が付くと病院に収容されていた。倒れていたところを親切な人が助けてくれたらしい。毒に侵されていて、もうしばらく中にいたら助からなかっただろうという話で、男性は仲間がもう戻ってこないと悟ったという。

「俺は、仲間に一緒に逃げようと、もっと強く言うべきだったんだろう……」
「聞いてもらえなかったのだから、仕方がないですよ」

 ブノワはうつむく男性に優しく返すと、アニエスにそっと囁く。

「ありがとうございました。貴重な情報を提供してくださったあなたに、神の祝福を授けます」

 アニエスがゆっくり詠唱すると、男性は薄い緑の光に包まれる。光が消えると、男性は憑き物が落ちたかのように、表情が明るくなっていた。

 四人は男性に礼を言って外に出た。リリアンはアニエスに言う。

「アニエスの力はすごいのね。あの人、別人みたいに表情が明るくなっていたわ」
「本当は祝福ではなく『忘却』の神術を掛けたの。つらかった気持ちを忘れられるように。記憶そのものは残っているから、生活に障りはないはず」

 アニエスは淡々と言う。相手が誇りを傷つけられたと怒りをあらわにするタイプだったなら、「鎮静」の神術を掛ける手筈だったそうだ。なるほど、相手による。

「これまでの冒険者は攻撃のことしか考えていなかったけれど、必要なのは毒に対する防御だったということなんだろうね」
「毒に対する装備を整えよう」

 表通りに出たところで交渉に行くというブノワと別れ、リリアンはジェラールとアニエスとプロシオンを伴い、エドモンの店を訪ねることにした。
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