【R18】君に長寿と繁栄を~淫紋を解呪するたったひとつの冴えたやりかた~

テキイチ

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50. 一本槍のジェラール ②

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 リリアンの疑問が嫌な意味で解けた。なぜこれまでの冒険者は毒にやられてしまったのだろう。装備が不充分でも、魔術師や僧侶がいれば浄化できるはずなのに。

 術を封じられた二人は剣で戦うことにした。アニエスが竜に斬りかかる。鮮やかな太刀筋で竜の腹の一部が切り取られ、床に落ちた。リリアンはすごいなと思いつつ見ていたが、異変に気づく。床に落ちた肉が動き、小さな竜になった。
 斬っても竜は増えてしまうので、ブノワとアニエスは攻めあぐねていた。途中まで斬っても、斬った部分から頭が増える。下手に斬りつけられない。ジェラールも注意深く槍を使っているが、急所を見つけることはできていない。

 後衛とは名ばかりのリリアンは見守るしかなく、歯がゆく思っていた。試しにエドモンの店で買った投石器スリングショットを使ってみたものの、石がどこに飛んだかすらわからない。せめて邪魔にならないように、後ろで控えているしかない。隣にいるプロシオンは小さく唸っている。

「プロシオン、怖いよね。みんななら、きっと倒してくれるから……」

 リリアンは安心させてあげたいと思い、プロシオンの頭から背を優しく撫でる。震えているのは恐怖ではなく怒りだ、と、リリアンが気づいた時、プロシオンは駆け出した。リリアンの目に、首輪の曹灰長石ラブラドライトの残像が流れ星のように映る。小さな、けれど確かな光。

 プロシオンはグルルルと喉を鳴らし、竜に向かって火を噴いた。予想外だったのか、竜は避けられず、火炎をまともに浴びる。竜の一部が焦げ、煙とともに散った。
 竜はプロシオンを認識するとじっと見つめ、詠唱する。プロシオンはギャンと吠え、火を噴けなくなった。それでも竜に飛び掛かって噛みつく。竜が振り払おうとしてもプロシオンは食いつき続けたので、勢いよく床に叩きつけられた。

「プロシオン!」

 リリアンは前に飛び出して、すばやくプロシオンを抱え、後衛に戻った。効いてとリリアンは祈るような気持ちで痛み止めの水薬を飲ませる。プロシオンはリリアンの手をそっと舐め、無事を知らせた。

「リリアン、プロシオンに眠り薬も飲ませて。起きたままより、体力を温存できるはず」
「わかったわ」

 リリアンはアニエスの言葉に従い、プロシオンに眠り薬も飲ませた。プロシオンは少し苦しそうな表情を浮かべていたが、すぐに寝息を立て、リリアンはほっとする。リリアンは自分の背嚢から掛布を取り出して床に敷き、プロシオンをそっと降ろした。

 何もできないのが悔しく、リリアンはエドモンの店で買った塩を背嚢から取り出し、分裂した竜に投げつける。攻撃というよりも、自棄っぱちな気持ちで。手元にはもうそれくらいしかなかったから。小さな竜はうめき声を上げて消滅した。

 リリアンは考える。プロシオンの攻撃に魔獣は動揺していた。火に弱い。リリアンが投げた塩にも反応した。単なる食用塩で、別に聖なる塩なんかではないのに。
 リリアンは思わずつぶやく。

「あの魔獣……本当に竜なのかな?」
「どうしてそう思うの?」
「自分から攻撃してこないでしょう。竜は賢いし、攻撃力も高い生き物だと思うの……」

 術を封じることはできるけれど、攻撃はしない。というより、できないのではないか。
 瘴気も人間を害する意図で生成しているのではなく、自然に発生しているだけなのではないか。人間が酸素を吸って二酸化炭素を吐き出すように。
 待ち続ければ、人間は毒にやられるか餓死するかする。抵抗しなくなったところで食べればいい。魔獣にとって人間はそんな存在なのではないか。
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