【R18】君に長寿と繁栄を~淫紋を解呪するたったひとつの冴えたやりかた~

テキイチ

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52. メタルスライム が あらわれた! ①

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「おそらく大丈夫だと思うけど、こいつは再生力が強いから、念には念を入れよう」
「念? どうするの?」
「両目を取り出して、残りは焼き払う」

 ブノワが質問に淡々と答える間に、アニエスは剣で双眸を抉り出した。ブノワは鞄から小さなはこを二つ取り出し、片目ずつ収め、一方をジェラールに渡す。

「密閉してるから、再生は心配しなくていい」
「わかった」
「匣を二つも準備していたのね」
「本当は目と心臓を入れようと思っていたんだけど、プラナリアには心臓がないからね」

 世界の果ての薬草を入れた匣の小型版だ、とリリアンは思う。ブノワはせっかく開発した技術を無駄にはしない。
 ブノワはもう一つの匣を鞄にしまうと、魔獣の死骸へ手をかざし、詠唱する。地獄の業火を思わせる炎が発生し、魔獣は跡形もなく消えた。

「すごい! 一瞬で消えたわ!」
「攻撃と破壊は得意だからね。初手で火炎攻撃しとけば、こんなに手こずらなかったのに、失敗した。ごめんね」
「そんな! 魔獣の弱点はなかなかわからなかったし、無事に倒せたもの!」

 ブノワはにっこり微笑むと、提案する。

「ここで二手に別れよう。俺とアニエス、ジェラールとリリアンで」
「ええ?」
「理由は三つある。一つ目はプロシオンを早く病院へ連れていった方がいいということ。ひどく痛がっていたから、骨が折れているかもしれないし、運が悪ければ内臓が破れているかもしれない」

 リリアンは抱えているプロシオンを見る。眠り薬で消耗は抑えられているものの、確かに心配だ。

「二つ目は魔獣の目を研究してもらった方がいいということ。身体を切断することになっても再生が容易にできそうだ」
「……三つ目はなんだ」
「魔獣と人間、両方とも腕のいい医者を俺は知っているけど、どちらも忙しいからつかまるかわからない。なるべく急いだ方がいいから俺達が先に行くのが手っ取り早い」
「別の敵が出てきたらどうするんだ」
「まあ、『一本槍のジェラール』なら大丈夫だろうし、もしジェラール達がヤラレても魔獣を倒した証拠はこっちにもあるから問題ないでしょ。二人はゆっくり来てくれたらいいから」
「あっさり人を殺すな……」

 ジェラールは納得していないが、ブノワは完全に聞き流している。アニエスがプロシオンを抱き取ったのを確認すると、ブノワは常宿で待ってると言って、さっさと転移してしまった。

「あいつら……自由過ぎだろ……」

 ジェラールはしばらく二人のいた場所を見ていたが、一つ息を吐くとリリアンに向き合い、声を掛ける。

「リリアンのことは精一杯守る。無理せずゆっくり帰ろう」
「わかったわ。よろしく」

 術を使えない二人は、歩いて外へ出るしかない。特に地階は足場が悪いので、リリアンは危うく転びかけた。ジェラールは咄嗟にリリアンの手を取って助け、そのまま並んで歩き始める。隣のジェラールに胸の高鳴りが聞こえないか心配になるほど、リリアンはどきどきしていた。

「少し休むか」
「え、ええ。そうね……」

 地上階まで折り返した頃、ジェラールはリリアンに提案した。無理に急ぐ必要はないし、ジェラールとの距離が物理的に近すぎて、緊張と興奮で持たない。そう思ったリリアンは、素直に同意する。

 ジェラールは冒険者を辞めてしまう。ゆっくり話ができる機会も、もうあまりない。せめていい思い出になるように、楽しい話をできたらいいな。リリアンはそんなことを思いながら比較的広そうな近くの部屋の扉を開ける。二人が部屋に足を踏み入れると、見えない包囲網が張られ、魔物が現れた。獅子の頭、山羊の胴体、蛇の尾を持つ怪物、キメラだ。

「リリアン、後ろに隠れていてくれ」
「……わかったわ」

 ジェラールはかなり苦戦している様子だ。魔獣を倒した時に穂先がひしゃげてしまったので、なかなか打撃を与えられないのだ。何もできなくて悔しいとリリアンが思った時、近くを小さな物体が横切った。リリアンは気のせいかと思い、瞬きをする。しばらくするともう一度、今度は逆方向に横切られた。じっと見つめ続けると、三度みたび物体が現れ、今度は止まる。リリアンの両手に乗りそうな、メタルスライムだ。

 メタルスライムは肉体的なフィジカルの攻撃力こそ弱いが、すばしっこくて、魔力も封じてくる、少し厄介な魔物だ。ただ、リリアンもジェラールも魔力を持たない。二人にとっては、動きの速い弱い魔物でしかないはずだ。
 最初、リリアンは無視しようとした。だが、メタルスライムは必死に戦うジェラールの足元をうろちょろして邪魔をする。なんとか倒したい。
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