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53. メタルスライム が あらわれた! ②
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リリアンは背嚢から投石器を取り出し、落ちている小石でメタルスライムを狙った。
闇雲に石を飛ばしても、なかなか届かない。ようやくすぐそばまで飛ばせた時に、メタルスライムは攻撃されていると気づき、リリアンの方へ戻ってきた。ジェラールに石が当たったらどうしようと思っていたリリアンにとって、絶好の機会である。リリアンは必死に小石を飛ばし続け、ようやく一石メタルスライムに命中した。
メタルスライムの動きがぴたりと止まったので、リリアンは喜ぶ。倒せた、と思ったのもつかのま、メタルスライムはピンッと小石を弾いて、リリアンをからかうように飛び跳ねる。メタルスライムはその後も、ゆっくりと近づいてきては石をすばやく避け、リリアンの近くで飛び跳ねては後ろに退く、そんなことを繰り返した。
リリアンはひそかに怒りを募らせていた。完全に舐められている。メタルスライムはリリアンにたいした攻撃力はないとわかっているからこそ、おちょくるためにわざと近づいてくるのだ。悔しい。なんとかしてこいつを倒したい。でも、戦う訓練を積んでいないリリアンは、投石器をこれ以上効果的に使うことはできないだろう。
ふと、リリアンは気づく。投石器にこだわらなくてもいいのでは? だって、私には、もっと素晴らしい武器があるじゃない。
ガーターベルトに仕込んだ小刀だ。マルセルの技術は確かだから、力がなくても斬ることができる。
リリアンは諦めたかのように見せかけて、地面にへたり込む。立ったままよりも近くから狙えるだろうと計算したのだ。メタルスライムはリリアンが小刀を持っていることを知らない。もっと近くに来い。相手が油断しきったところで刺せば、勝機もあるかもしれない。
お誂え向きに、メタルスライムは身体を海月のように平らにし、ゆっくり近づいてくる。リリアンはそっとスカートの中に手を入れ、ガーターベルトに仕込んだ小刀を握る。もう少しで肌に接触するくらい近づいたところで、リリアンはメタルスライムに斬りつけた。思った通り、父の作った小刀は切れ味がよく、メタルスライムの肌が裂ける。急な反撃が想定外だったのか、切れ味がよすぎて痛くなかったのか、メタルスライムは呆然としている。
このままとどめを刺すんだ! とリリアンは自分を鼓舞し、力一杯メタルスライムを小刀で切り裂く。メタルスライムは、断末魔の最後の叫びよろしく、超音波のような金切り声を上げた。
声の波動がリリアンの腹を襲う。衝撃はあったものの、痛みは感じなかった。リリアンが腹をまさぐると、腰巻がポロリと落ちる。煙水晶は無残に砕け散り、ピンクの絹布も灰になって崩れ去った。
「リリアン、怪我はないか?」
心配そうな表情のジェラールに話し掛けられ、リリアンはあわてて答える。
「煙水晶が守ってくれたから、大丈夫!」
「その腰巻、気に入っていたんだろう。残念だったな」
「命には代えられないもの。仕方がないし、腰巻はきっと、このためにあったのよ」
ジェラールが安心したような笑みを浮かべた。リリアンはジェラールも戦っていたはずだと今更気づき、訊ねる。
「キメラは倒せたの?」
「ああ。キメラはメタルスライムが操っていたはりぼてだったようだ」
リリアンがメタルスライムを倒したと同時に、キメラは三つの肉の塊になってボトリと落ちてきたという。おそらくメタルスライムは、魔獣の死骸を組み合わせて操る死霊術師だったのだろう。
ジェラールはメタルスライムの死骸をまさぐると、何かを取り出した。
「……あった」
「なあに?」
「メタルスライムから採れる金属は鋼よりも強いんだ。結構大きいから、いい値段になると思う」
ジェラールは取り出した金属をリリアンに渡す。金属は金とも銀ともつかない不思議に美しい輝きを放っていて、思わずリリアンは見とれた。
「リリアンは俺の命の恩人だ」
「そんな! いつも助けてくれているのはジェラールの方で、今日はたまたま上手くいっただけ……」
「俺はリリアンに助けられてばかりだ。本当にありがとう」
ジェラールはいつもリリアンに丁寧な感謝の言葉をくれる。役に立てて嬉しいな、と思った時、リリアンの腹にチクリと熱が走った。
「……どうした?」
「な、なんか、お腹が熱くて……」
「ほら。一応、毒消し飲んどけ」
「そんな、もったいないし、蝉の羽の楔帷子も着てるから、たぶん大丈夫……」
「お前は今、つらいんだろう。リリアン」
リリアンの胸がとくんと鳴った。リリアンはジェラールのこういうところが好きなのだ。淡々としているが、困っている人を決して見捨てない。
リリアンは礼を言って毒消しを飲み、症状はいったん鎮まったかのように見えた。
闇雲に石を飛ばしても、なかなか届かない。ようやくすぐそばまで飛ばせた時に、メタルスライムは攻撃されていると気づき、リリアンの方へ戻ってきた。ジェラールに石が当たったらどうしようと思っていたリリアンにとって、絶好の機会である。リリアンは必死に小石を飛ばし続け、ようやく一石メタルスライムに命中した。
メタルスライムの動きがぴたりと止まったので、リリアンは喜ぶ。倒せた、と思ったのもつかのま、メタルスライムはピンッと小石を弾いて、リリアンをからかうように飛び跳ねる。メタルスライムはその後も、ゆっくりと近づいてきては石をすばやく避け、リリアンの近くで飛び跳ねては後ろに退く、そんなことを繰り返した。
リリアンはひそかに怒りを募らせていた。完全に舐められている。メタルスライムはリリアンにたいした攻撃力はないとわかっているからこそ、おちょくるためにわざと近づいてくるのだ。悔しい。なんとかしてこいつを倒したい。でも、戦う訓練を積んでいないリリアンは、投石器をこれ以上効果的に使うことはできないだろう。
ふと、リリアンは気づく。投石器にこだわらなくてもいいのでは? だって、私には、もっと素晴らしい武器があるじゃない。
ガーターベルトに仕込んだ小刀だ。マルセルの技術は確かだから、力がなくても斬ることができる。
リリアンは諦めたかのように見せかけて、地面にへたり込む。立ったままよりも近くから狙えるだろうと計算したのだ。メタルスライムはリリアンが小刀を持っていることを知らない。もっと近くに来い。相手が油断しきったところで刺せば、勝機もあるかもしれない。
お誂え向きに、メタルスライムは身体を海月のように平らにし、ゆっくり近づいてくる。リリアンはそっとスカートの中に手を入れ、ガーターベルトに仕込んだ小刀を握る。もう少しで肌に接触するくらい近づいたところで、リリアンはメタルスライムに斬りつけた。思った通り、父の作った小刀は切れ味がよく、メタルスライムの肌が裂ける。急な反撃が想定外だったのか、切れ味がよすぎて痛くなかったのか、メタルスライムは呆然としている。
このままとどめを刺すんだ! とリリアンは自分を鼓舞し、力一杯メタルスライムを小刀で切り裂く。メタルスライムは、断末魔の最後の叫びよろしく、超音波のような金切り声を上げた。
声の波動がリリアンの腹を襲う。衝撃はあったものの、痛みは感じなかった。リリアンが腹をまさぐると、腰巻がポロリと落ちる。煙水晶は無残に砕け散り、ピンクの絹布も灰になって崩れ去った。
「リリアン、怪我はないか?」
心配そうな表情のジェラールに話し掛けられ、リリアンはあわてて答える。
「煙水晶が守ってくれたから、大丈夫!」
「その腰巻、気に入っていたんだろう。残念だったな」
「命には代えられないもの。仕方がないし、腰巻はきっと、このためにあったのよ」
ジェラールが安心したような笑みを浮かべた。リリアンはジェラールも戦っていたはずだと今更気づき、訊ねる。
「キメラは倒せたの?」
「ああ。キメラはメタルスライムが操っていたはりぼてだったようだ」
リリアンがメタルスライムを倒したと同時に、キメラは三つの肉の塊になってボトリと落ちてきたという。おそらくメタルスライムは、魔獣の死骸を組み合わせて操る死霊術師だったのだろう。
ジェラールはメタルスライムの死骸をまさぐると、何かを取り出した。
「……あった」
「なあに?」
「メタルスライムから採れる金属は鋼よりも強いんだ。結構大きいから、いい値段になると思う」
ジェラールは取り出した金属をリリアンに渡す。金属は金とも銀ともつかない不思議に美しい輝きを放っていて、思わずリリアンは見とれた。
「リリアンは俺の命の恩人だ」
「そんな! いつも助けてくれているのはジェラールの方で、今日はたまたま上手くいっただけ……」
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「ほら。一応、毒消し飲んどけ」
「そんな、もったいないし、蝉の羽の楔帷子も着てるから、たぶん大丈夫……」
「お前は今、つらいんだろう。リリアン」
リリアンの胸がとくんと鳴った。リリアンはジェラールのこういうところが好きなのだ。淡々としているが、困っている人を決して見捨てない。
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