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第四章 文化祭
27.
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僕は虚無感に包まれた。
僕には何もできなかった。笑香を守ると言ったのに、ただここで寝ているだけで僕は何もできなかった。
笑香がかすれた声で続ける。
「あの後、ダメもとで美優に連絡したの。私といて、正直つらかった? って。でももどって来た返事が──」
肩を震わせ、嗚咽を漏らす。
「楽しかったって。一緒にいられて、楽しかったって言ってくれて。もう、それだけで、私──」
「もういい。……もういいから」
腕をのばして背中をなでる。ベッドの上できしんだ体に折れた肋骨が悲鳴を上げたが、そんなことはもうどうでも良かった。
大西と、笑香の和解。僕にはできなかったことだ。
笑香はしばらくうつむいていたが、やがて取り出したハンカチで顔を隠しながら言った。
「ごめん。今日はお礼を言いに来たのに」
鼻をすすって、濡れた瞳を無理やり笑いの形に細める。
「史郎君。あの時は助けてくれてありがとう」
改めて笑香に頭を下げられ、僕はシーツに視線を落とした。
「──ああ」
「そうだ。ダッフィーも史郎君が拾ってくれたんだね。なくしたと思ってたらお母さんが渡してくれた。……あれ、美優にお土産でもらったものなの」
僕は目を上げた。笑香のクマのマスコットか。
「史郎君、前にもケンカしたことあるの?」
笑香に問われ、けだるい気分で僕は病室の天井を見上げた。
「中学の時、試合の後で他の学校のやつらに絡まれたことがあったから。──その時須藤先輩に言われた。サッカー部は本気で蹴るなって。本気で蹴ったら、相手はケガじゃ済まないぞって」
両方の拳を固く握りしめる。
「……あいつら全員、僕が殺してやろうと思った」
「史郎君……」
笑香の言葉につぶやいた。
「何が何だかわからなかった。あの時おじさんが来てくれなかったら、きっと本気で殺してた。それくらい頭に血が上ってた。でも」
僕は唇を震わせた。あの時、僕は気づいてしまった。
「ぼくは、……君に、あいつらと同じことをやったんだ」
笑香が黒い目を見開いた。
僕は自分の手を開き、汗で湿った手のひらを見つめた。
僕には何もできなかった。笑香を守ると言ったのに、ただここで寝ているだけで僕は何もできなかった。
笑香がかすれた声で続ける。
「あの後、ダメもとで美優に連絡したの。私といて、正直つらかった? って。でももどって来た返事が──」
肩を震わせ、嗚咽を漏らす。
「楽しかったって。一緒にいられて、楽しかったって言ってくれて。もう、それだけで、私──」
「もういい。……もういいから」
腕をのばして背中をなでる。ベッドの上できしんだ体に折れた肋骨が悲鳴を上げたが、そんなことはもうどうでも良かった。
大西と、笑香の和解。僕にはできなかったことだ。
笑香はしばらくうつむいていたが、やがて取り出したハンカチで顔を隠しながら言った。
「ごめん。今日はお礼を言いに来たのに」
鼻をすすって、濡れた瞳を無理やり笑いの形に細める。
「史郎君。あの時は助けてくれてありがとう」
改めて笑香に頭を下げられ、僕はシーツに視線を落とした。
「──ああ」
「そうだ。ダッフィーも史郎君が拾ってくれたんだね。なくしたと思ってたらお母さんが渡してくれた。……あれ、美優にお土産でもらったものなの」
僕は目を上げた。笑香のクマのマスコットか。
「史郎君、前にもケンカしたことあるの?」
笑香に問われ、けだるい気分で僕は病室の天井を見上げた。
「中学の時、試合の後で他の学校のやつらに絡まれたことがあったから。──その時須藤先輩に言われた。サッカー部は本気で蹴るなって。本気で蹴ったら、相手はケガじゃ済まないぞって」
両方の拳を固く握りしめる。
「……あいつら全員、僕が殺してやろうと思った」
「史郎君……」
笑香の言葉につぶやいた。
「何が何だかわからなかった。あの時おじさんが来てくれなかったら、きっと本気で殺してた。それくらい頭に血が上ってた。でも」
僕は唇を震わせた。あの時、僕は気づいてしまった。
「ぼくは、……君に、あいつらと同じことをやったんだ」
笑香が黒い目を見開いた。
僕は自分の手を開き、汗で湿った手のひらを見つめた。
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