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第六章 連れ去らわれて
38.見知らぬ部屋
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目が覚めると見知らぬ部屋の中だった。室内には誰もいない。
ここはどこだろうか……。
部屋は丸太を組んだ壁に囲まれ、階段や手すり、家具も木製のもので統一されていた。
窓の外は暗いけれど目を凝らすと木々が見える。どうやら森の中なのだろう。
壁際に薪ストーブがあって、太いパイプが屋根まで続いている。
その中で薪が燃える音が聞こえるだけで、辺りはとても静かだった。
「……っ!」
手を動かそうとしたけれど、動かない。左右の手を後ろで縛られているみたいだ。
そんな状態で俺は椅子に座らされていた。
森の中でベビーカーを覗いた瞬間、何者かに羽交い締めにされて、薬で意識を失ったらここだった。
連れ去らわれてここへ来たのだろう。一体誰が……? 何の目的で……?
身に覚えはなかった。
屋敷の主人のご子息やご令嬢が誘拐されるならともかく、俺はただの使用人だ。身代金目当てに誘拐されるような身分じゃない。それに誰かの恨みを買うほど目立った存在でもない。
部屋の外で物音がした。誰か来る……!?
両手を拘束している部分をねじったり引っ張ったりしてみるが、やはり外れない。
「くっ……」
自由の効かない状況で、何をされるのだろうかと思うと怖くてたまらない。
目の前のドアがガチャっと開いた。
そこに立っていたのは前に仕えていたウェルズリー伯爵家の一番末のご子息であるフランシス様であった。
「フランシス様……っ!?」
フランシス様は金髪に蒼眼、透き通るような白い肌の人形みたいに整った顔立ちをムッと歪めて俺を睨んでいた。
ああそうか、何度も手紙を送って来ていたのに返事すら出していなかったから、痺れを切らして俺を拉致したというわけか。
俺を連れ去ったのはフランシス様が雇った男だったのだろう。
「ローレンス、僕の手紙を無視するとはどういうつもりだっ! 返事の一つもくれたっていいだろう!」
椅子に座った俺の前に大股で歩み寄って、フランシス様は俺を怒鳴りつけた。
やっぱり怒っている。
「申し訳ございません、いただきましたお手紙は拝見しております。しかし、新しい主人であるドグマ様の手前、フランシス様にお返事を書く訳にもいかず……」
下手な言い訳をして怒らせるとかえって厄介なことになりそうなので、正直に伝えた。
しかしわがままな性格のフランシス様が俺の立場を理解して納得してくれるはずなんてなかった。
「なんだよ、それ! 何年も僕の世話係として仕えておきながら、新しい屋敷へ行ったらもうそっちの主人が大事だって言いたいのか! ローレンス、見損なったよ! 僕とお前の絆なんてそんなもんだったのか!?」
フランシス様は白い顔を真っ赤にして怒っている。
ここはどこだろうか……。
部屋は丸太を組んだ壁に囲まれ、階段や手すり、家具も木製のもので統一されていた。
窓の外は暗いけれど目を凝らすと木々が見える。どうやら森の中なのだろう。
壁際に薪ストーブがあって、太いパイプが屋根まで続いている。
その中で薪が燃える音が聞こえるだけで、辺りはとても静かだった。
「……っ!」
手を動かそうとしたけれど、動かない。左右の手を後ろで縛られているみたいだ。
そんな状態で俺は椅子に座らされていた。
森の中でベビーカーを覗いた瞬間、何者かに羽交い締めにされて、薬で意識を失ったらここだった。
連れ去らわれてここへ来たのだろう。一体誰が……? 何の目的で……?
身に覚えはなかった。
屋敷の主人のご子息やご令嬢が誘拐されるならともかく、俺はただの使用人だ。身代金目当てに誘拐されるような身分じゃない。それに誰かの恨みを買うほど目立った存在でもない。
部屋の外で物音がした。誰か来る……!?
両手を拘束している部分をねじったり引っ張ったりしてみるが、やはり外れない。
「くっ……」
自由の効かない状況で、何をされるのだろうかと思うと怖くてたまらない。
目の前のドアがガチャっと開いた。
そこに立っていたのは前に仕えていたウェルズリー伯爵家の一番末のご子息であるフランシス様であった。
「フランシス様……っ!?」
フランシス様は金髪に蒼眼、透き通るような白い肌の人形みたいに整った顔立ちをムッと歪めて俺を睨んでいた。
ああそうか、何度も手紙を送って来ていたのに返事すら出していなかったから、痺れを切らして俺を拉致したというわけか。
俺を連れ去ったのはフランシス様が雇った男だったのだろう。
「ローレンス、僕の手紙を無視するとはどういうつもりだっ! 返事の一つもくれたっていいだろう!」
椅子に座った俺の前に大股で歩み寄って、フランシス様は俺を怒鳴りつけた。
やっぱり怒っている。
「申し訳ございません、いただきましたお手紙は拝見しております。しかし、新しい主人であるドグマ様の手前、フランシス様にお返事を書く訳にもいかず……」
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「なんだよ、それ! 何年も僕の世話係として仕えておきながら、新しい屋敷へ行ったらもうそっちの主人が大事だって言いたいのか! ローレンス、見損なったよ! 僕とお前の絆なんてそんなもんだったのか!?」
フランシス様は白い顔を真っ赤にして怒っている。
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